がん患者さんの「食のお悩み」
座談会レポート(後編)

がん患者さんに聞きました!
食の悩みと私の対処法

工夫や対処の
しかたを教えて!

「食事が少ししか食べられない」「口の中が痛くて食べづらい」「食べていても味がしない」…。がんの治療中に多くの患者さんが抱える食事の悩み。その悩みに向き合いながら、自分なりの対処方法を見つけた、4人の患者さんにお話を伺いました。
後編では、治療中の食事の工夫や支えになったことをお話いただきます。

本記事の内容は座談会にご参加いただいた患者さん個々のご経験・見解に基づき作成しています。がん治療中の食事のお悩み、対処方法はお一人おひとり異なりますので、ご了承ください。

自宅療養中、
買い物や料理で
頼りに
なったものはありますか?

食材の宅配や
コンビニを
うまく利用しました

食材の宅配やコンビニをうまく利用しました
てるこさん
てるこさん

私はよく食材の宅配を利用しますね。体調がいい時は子どもの食事をつくりますが、出前をとることもあります。

めいこさん
めいこさん

治療中はずっと具合が悪いわけではないので、体調がいい時に食材の買いだめをしていました。宅配も利用して重いものを家まで持ってきてもらう、野菜炒め用などのミールキット(※レシピと必要な食材がセットになったもの)を注文することもありました。ちょっと割高ですが、“こんな時期がずっと続くわけじゃないから”と割り切ることにしました。
それでも足りない時には我が家は宅配ピザです。おかげでうちの家族は、ピザを一生分食べたかもしれません(笑)。

ゆかさん
ゆかさん

私は動ける時は、自分で買い物に行っていました。でも宅配は確かに便利そうですね。今度利用してみようかな。

ひさかずさん
ひさかずさん

私は退院してからもあまり食欲がなくて、妻が作ってくれる料理も食べられそうになかったんです。そこで「出してくれる食事は食べられない」と、前もって妻には謝りました。味覚ってなかなかわかってもらいにくいけれど、申し訳ない気持ちを伝えたくて。その時期はコンビニなどであんパンやデザートなど、自分が食べられそうなものを買って食べていましたね。

家族や友人からの
差し入れやアドバイスに
勇気づけられたことも

家族や友人からの差し入れやアドバイスに勇気づけられたことも
てるこさん
てるこさん

自宅療養をしている時は、母や友人が食べ物をよく送ってくれました。その友人はお子さんがアトピー性皮膚炎で、日ごろから食事の大切さを知っていたんですね。私の体のことを考えて、いろいろ作って送ってくれました。その気持ちがうれしくて!
食欲がない時期でも、他の人が作ってくれた食事なら不思議とよく食べられました。まさに私のパワーフードです!

ゆかさん
ゆかさん

私は一人暮らしなのですが、てるこさんと同じく友人にずいぶん助けてもらいました。栄養バランスのよい料理やお菓子、本当にありがたかったです。中には食べられないものもあって、人にあげたものもあったんですけどね。水分があまりとれない時に炭酸水をすすめてくれたのも、その友人でした。

家族や医療従事者に
してもらえるとうれしいこと
はありますか?

「食べなきゃいけない」
というプレッシャーを、
少しでも軽くしてくれたら
うれしい

「食べなきゃいけない」というプレッシャーを、少しでも軽くしてくれたらうれしい
めいこさん
めいこさん

食欲がない時や、ひとつのものしか食べていない時、ときどき周りの人に「そんなものばかりじゃ、栄養が偏るよ」なんて言われることがあるんです。
でも、食べられるものがないか、自分でいろいろ試した中で、やっと食べられるものを見つけて食事ができている幸せな時にそんなことを言われると、とても悲しいんですね。“食べなきゃいけない”という気持ちのスパイラルに陥らないためにも、周りの人たちには食べられるものを食べていればいい時期もある、ということを私は理解して欲しいですね。

ひさかずさん
ひさかずさん

入院中、食事の後に看護師さんや管理栄養士さんから「完食しましたか?」とよく聞かれるんですね。完食なんてとてもできないんですけど、「食べられません」と言うと大ごとになり、「何なら食べられますか?」と具体的に聞かれて困ってしまうこともあって…。
そうなると申し訳なくて、どんどん心の負担になることがありました。だから看護師さんや管理栄養士さんには“食べられない”ことがさらにプレッシャーになってしまわないようさらりと受け流してくれるとうれしいですね。

ゆかさん
ゆかさん

私の場合は、お医者さん、看護師さん、薬剤師さんなどに「無理せずに口にできるものを食べればいい」と言われていたので、プレッシャーを感じることはありませんでした。

てるこさん
てるこさん

治療を一人で闘うのはつらいものです。そのことを家族にわかって欲しいですね。私の体調が悪い間は、他の家族が食事づくりを代わってくれたり、少し気遣ってくれたりするだけで、こちらの負担が軽くなるかなと思います。そうすれば、もっと前向きな気持ちになれる気がするんですよね。

今、がんと向き合っている
患者さんに
伝えたいこと
はありますか?

つらければ
周りに頼ることも大切。
無理をせず、
今食べられるものを
おいしく食べよう

つらければ周りに頼ることも大切。無理をせず、今食べられるものをおいしく食べよう
めいこさん
めいこさん

あれもダメ、これもダメとなると気持ちが暗くなるので、私は何なら食べられそうか、飲めそうか、いろいろ実験して楽しんでいました。身体の調子がよくて買い物に行ける時は、同じジャンルの商品をスーパーの棚の端から端まで買って、1つずつ試すとか…。その中においしく食べられるものが見つかればラッキーって!そんなことが私の小さな楽しみになりましたし、買い物に行くのもいい気分転換になりました。
そしてもうひとつ、お医者さんから「食べられないことを気にしすぎないこと」とアドバイスをいただいたのも心に響きました。ストレスを溜めこまないことも重要ですよね。

ゆかさん
ゆかさん

私は治療でつらい時、遠慮なく友人たちに“SOS”を出しました。周りに「助けて」と言えることは大切だと思います。自分のつらさを理解して、力を貸してくれる人がいると思うと、たとえ体はしんどくても気持ちは楽になりますから。つらい時は一人で抱え込まずに、ぜひ周りに助けを求めてください。

てるこさん
てるこさん

身体がしんどい時は、まずは食べられるものを食べて、副作用が落ち着いてきたら栄養があるものを意識して食べていけばいいと思います。
私は抗がん剤投与の直前には、“これから頑張る自分へのごほうび”として、好きなものを食べてエネルギーチャージしていましたよ。そんな気持ちのメリハリも大切だと思います。

ひさかずさん
ひさかずさん

私は最初SNSで情報を集めていましたが、人によって治療による味覚の変化も、食べられるものも違うので、あまり参考になりませんでした。やはり、自分で食べられるものを探すのが一番。
“食べないといけない”と強く思うほど食べられない時に焦ってしまい、ますます食べられなくなる気がします。副作用が落ち着いて、いずれまたおいしく食べられる時が来ます。食べることを好きでいるためにも、今食べられるものをおいしく食べましょう!

まとめ

患者さんからお話を伺った、今回の「食のお悩み」オンライン座談会。後編では、食事や買い物の工夫のほかにも、心の支えになったことについて伺いました。
参加いただいた患者さんは、治療中の食事や買い物のしかたを自分なりに工夫したり、気持ちを切り替えたりすることに加え、医療従事者や家族、友人のサポートを得ながら日々の食事と向き合っていらっしゃいました。やり方は各自で違っても、「一人で抱え込みすぎない」「つらい時は周りのサポートや便利なサービスも上手く利用する」ことで無理せず食事を楽しむ、それが治療を続ける活力につながっていくことが強く感じられた座談会でした。
がん治療中の食事のお悩み、対処方法は人それぞれですが、本記事が食事で悩まれている他のみなさまのお役に少しでも立てますと幸いです。

最後に、座談会に協力いただきました4名のみなさまに改めてお礼申し上げます。

座談会に参加いただいた方々
(五十音順)

  • てるこさん
  • ひさかずさん
  • めいこさん
  • ゆかさん