がんになっても -がんの治療を、その人「らしい」生活のなかで。-

アストラゼネカ

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乳がん・前立腺がん・肺がんを中心に患者さん・ご家族の体験談、高額療養費制度などの情報を紹介

私からのメッセージ

上野創さん
「二度の再発、二度の無菌室を乗り越えて 」

家族の支えは大事、だが笑顔の定期便でいい

――すでに一部お話いただいていますけれども、いま、がんと向き合っておられる患者さんやご家族に、改めて伝えたいメッセージがありましたらどうぞ。

 一つは、家族はすごく大事な存在だということです。それを支えてくれる友人も、です。がん患者を抱えるのは家族にとっての苦しみでもあり、戸惑いでもあるのでしょう。とりわけ本人とは別の苦しみが家族にはあるはずです。私の妻は相当きつかったと思いますが、前にも触れたように妻の元気と、笑顔の定期便は何ものに代えがたい安らぎを与えてくれました。そういう意味で思うのですが、患者を元気づけねば、支えねばと自分を追い込まないことが肝心です。家族自身がこうしなきゃとか、ああしなきゃと自分をせき立て、落ち込んだり悲しんだりしても、事態はよくならないのではないでしょうか。言葉が正しいかどうかわかりませんが、時にはどこか棚上げして、どこか預けちゃって気楽になることも必要。そのような時に、家族の外側を取り巻く輪のような存在、親戚とか友人、同僚が支えてくれるはずです。家族はとりあえずいま元気でいるとか、いま生きていることに目を向けるとか、もう一つは自分自身の人生も大事にして、その延長線上で患者を支えるというぐらいのほうが、つぶれなくていいのではないかなと、体験を通して確信しました。

 患者さん本人へのメッセージとしては、私の一つの例でしかありませんが、がんの治療は本当につらいし、精神的に追い込まれていきます。半年後、一年後に自分はどうなっているかということだけを考えていると、どんどん予期不安に取り込まれてしまうと思うのです。難しいかもしれませんが、過剰に思い詰めることを避け、ときに視点を変えたり、少し俯瞰してみてみたりして気分を変えることが大切ですね。がんに自分の人生のすべてを取り込まれてしまうのは残念ですし、がんになった自分を卑下したり、まわりの目を気にしすぎたりする必要もまったくないはずです。むしろ全部引き受けて、自分の人生の一部にしていければいいのではないですか。ちょっとブラックですが、お見舞いに来てくれる人も、百年後はみんな死んでいますから。この人、がんになって可哀想にと、もし思っている人がいたとしても、行く先はみんな同じです。がんに支配されない方がいいに決まってますから。

鈍感な強者の自分に気づく

―― ドイツの宗教改革者のマルティン・ルターは、「たとえ世界が明日終わりでも、私は樹を植える」との言葉を残しています。こんな完璧な生き方はなかなか普通の人間にはできないのですが、しかしあなたは非常な苦しみに耐え、乗り越えて、仕事にも復帰されています。大病した方に変な言い方になりますが、得るものは大きかったのではないでしょうか。

上野創さん

 そうですね、べつに克服したとか生還したというおこがましい気持ちはないのです。それから何か偉いことをしたということでもなくて、ただ病気になって、副作用に耐え抜いて、とりあえずいま元気になったというだけのことなのです。しかし、元気なときには見えなかったものや、順調なときにはわからないものが、いざ、けつまずいて、うずくまってみて、見え、分かってくる。とても印象的です。世の中というのはバラエティー番組を見ていれば、おもしろおかしくて楽しいことばかりに見えますけれども、表皮を一枚、二枚めくって実相を見れば、人生というのは辛いことや苦しいことで溢れていると言えるでしょう。そのなかで、さはさりながら、どうやって生きようかというのは、各人次第ですし、結局、一人で死ななきゃいけない孤独感というものは絶えずあるわけです。他方やっぱり一人では生きられないという部分もあって、結局は自分というのは人とのつながりのなかでしか存在しえません。そういうこともがんの経験で学んだ、とても大きなことだったと思います。

 もう少し理屈をつければ、二度と味わいたくない試練ではありましたが、自分の弱さと向き合わされ、人生を真剣に考える機会でありましたし、あらゆることに鈍感な強者になっていた自分に気づかせてくれた、と私なりに感じています。

―― 言葉では言い表せないほどの辛苦をなめ、死線をさ迷ったあなたが、元気溌剌で話をされる姿には感動します。

 ありがとうございます。最後にもう一つだけ話したいことがあります。私の親しい同僚の奥様が肺がんで亡くなられました。しかし、彼女は、抗がん剤の投与により一時期、ずいぶん元気になられました。私はいくつかの抗がん剤のおかげで、ここまで元気になったわけで、医師、看護師、薬剤師、放射線照射、病理検査も含めた医療を支える人々、製薬会社の方々、輸血に応じてくださっている幾多の人々に対し深く感謝しております。彼女と話したときも、薬の大切さが話題となり、ここまで元気になったのは薬のおかげと喜んでおられました。亡くなったあと夫君も、あのおかげで一年は寿命が伸びて、大変意義ある大事な時間を持てたと、感謝の気持ちを話しておられました。一方で、今日も副作用の話もいっぱいしましたが、それは非常に重く、悩ましい問題です。有害事象を伴うのが薬だし、リスクがあるのが医療行為なわけですから、そこの見極めも繊細に、細心の注意をもってやっていかないと、薬害のようなことが繰り返し起きて患者家族を苦しめたり、説明がなかったじゃないかというトラブルや訴訟になるのではないかと思うのです。これはお互いに不幸なことで、製薬会社や医療従事者は、繊細過ぎるほどの注意、念押し、責任感があってほしいという気持ちです。また、抗がん剤のメリット、デメリットをよく理解し、ご自身が納得できる治療に取り組むことが大切なことだと思います。

――上野さん、ありがとうございました。

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