がんになっても -がんの治療を、その人「らしい」生活のなかで。-

アストラゼネカ

文字サイズ

乳がん・前立腺がん・肺がんを中心に患者さん・ご家族の体験談、高額療養費制度などの情報を紹介

私からのメッセージ

関原健夫さん
「六回のがん手術を乗り越えて−サラリーマン人生」

Vol.2 日本のがん治療環境について

日米の治療環境の違いく

 今回は、アメリカでの手術や、アメリカの友人との情報交換などの経験から、関原さんが感じられた「日米のがん治療環境」について伺いました。

―― 関原さんは手術、治療を日本とアメリカという違う場所で経験されましたが、治療環境の違いとして挙げられることはどんなことですか。

関原健夫さん

 アメリカの医療は、日本より 遥かに システマティックです。 シスステマティックっていうのは、 病気に対する標準的治療と内科・外科の連携等チーム医療が定着しているということです。 しかるべき病院では、どこの病院へ行っても、この標準の基準に従った治療が行われています。

 一方日本は、アメリカに比べて、病院や先生による個別色が非常に強いと思います。アメリカはシステム的な分、 標準治療の基準が非常に徹底されており、そういう意味ではどこの病院でもある程度安心して治療を受けられるのではと思いました。

 勿論、アメリカは訴訟社会であり、医療や保険者のリスク管理の点からも医療の標準化が必要です。

 日本のいい医師とアメリカのいい医師のレベルが違うかと言うと、差異はないと思います。日本にも手術の上手な医師は沢山います。ただやはり、全体的な治療システムはアメリカのほうが優れていると思います。

―― 日米の治療環境の違いはどのような背景からきていると思われますか?

 それは、システムをよくするために、アメリカでは教育を含めた医師のトレーニングがよく考えられているからだと思います。ご存知の通り教育課程は長いです。日本では高校生の時、医学部を選び 2年間の教養課程の後、4年間の医学教育を受けます。アメリカでは4年間の教養課程の後、医師になる明確な目的意識を持って4年のメディカルスクールで医学教育を受けます。これは医学に限ったことではなく、4年間の教養課程を経てビジネススクールやロースクールで専門教育を受けるのと同じです。

 それが終わったら、最初はゼネラルのトレーニングをするわけです。つまり、総合的な内科医としての訓練を受け、 3〜4年なりのある程度の経験を積んで、今度はいわゆる癌だとか専門の訓練をするので、ひとり一人の医師の平均レベルは高いのではないかと思っています。

―― 日米のそのような違いは治療に対するどのような背景からきているのでしょうか?

 基本的に、アメリカの医療は臨床医学、実際に患者を診察・治療する事が主になっていると思います。逆に、日本はどうしても医学部、医学、つまり研究も含めた基礎医学に重きが置かれていると思います。その違いは何かと言ったら、やはり医療の主体は患者で、患者の権利が尊重されるかどうかということです。アメリカでは、どの産業であっても、主体は消費者であることが徹底しています。医療も患者に対して医療サービスを提供する産業になっていると思います。日本と異なり自由診療が原則で医師にもインセンティブが働くため、医療の質の向上にも繋がっています。 私はアメリカの病院で入院し治療を受けているとき、実際にそう感じました。 がん治療に関して大きな違いは化学治療を専門に行う腫瘍内科医と、緩和医療の充実です。私はマンハッタンの腫瘍内科の専門医のところへ行って治療をしていました。当時、日本では内科医で腫瘍専門医というのは僅少で、開業医は今でもないのではと思います。日本は外科医中心で、化学治療体制の充実は急務でしょう 。

 一様にアメリカの医療は優れている面が多いと思われますが、これを支えているのは極端に高い医療費です。アメリカの病院は快適でした。病室も広いし、食事やシーツの交換にいたるまでとても満足できました。スタッフの数も多いし、ケアという意味では随分いいです。しかしながら、退院時の請求書を見て医療費が非常に高いのに驚きました。国民皆保険のないアメリカで良い医療を受けるためには高額な民間医療保険に入る必要があります。現在4000万人以上の国民が無保険者として医療から見放されています。

―― 日米それぞれに優れている点はあるかと思いますが、それでは日本の優れている点はどういうところですか?

関原健夫さん

  日本の一番優れているところは、すべての国民が、平等に、とにかくアメリカに比べれば非常に安い値段で治療を受けられることです。国立がんセンターでも京大病院でも、医師の紹介状があれば電話予約して誰でも治療を受けられます。

 アメリカでは 診察のアポイントを取るのに時間がかかりますから、日本程早く、簡単に診察を受けられる訳ではないのです。

だから、日本の医療について色々問題はありますが、高いレベルの医療を誰でも平等に受けられる、これはもう、最大の日本医療のよさだと思います。

 それと最近の日本の病院はすごく変わってきたので、昔のイメージで悪く言われているのはよくないと思います。例えば、「3時間待ちの3分診療」とよく言いますけど、大病院では予約制が採用され、そんなに長時間待つことはないと思います。 東京のある大学の先生が、アメリカの病院と比較をして「日本は相変わらず」とおっしゃられておられました。確かに、飛び入りで、風邪を引いた子どもを連れていったら待つというのはそれはもちろんありますが、 アメリカの病院は完全予約制であり、そもそも受け入れてもらうことすら出来ないわけです。

 もちろん日本には問題はたくさんあると思いますが、日本の医療現場も非常によくなっており、世界のレベルで見たら、悪いどころか相当高いと僕は思っているんです。現にOECDの調査では日本の医療制度が世界一との評価が定着しています。

 でも、どうしたらもう少しよくなるかというと、やっぱりお金をかけないとなかなか僕はよくならないと思います。合理化するとか、効率化の余地は大きいですが、基本的には医療は質の高い医療従事者の人手によるケアが必要です。この良いケアをするためには良質の人材が必要だと思います。つまり、ケアの人手にお金をかけるという事がこれからの日本医療にとって大切だと思います。

次回は、「がんと向き合い、乗り越える上で大切なこと、力になったこと」についてお話いただいた内容をご紹介いたします。

皆さまの体験が誰かの生きる力になります

「自分らしくがんと向き合う皆さんの姿、想い」
「患者さんからご家族への想い」「ご家族から患者さんへの想い」

このようなテーマで皆さまからの
体験談を募集しています詳しくはこちら