がんの治療をはじめるときや、その治療法を変えるとき、さまざまなことが気になることでしょう。どのような治療をおこなうのかということだけでなく、どれくらいの期間を治療に費やすのかということまで知りたいと思われるかもしれません。
医師から説明する治療期間の定義は、ひとつの治療をおこなう期間を指すこともあれば、いくつかの治療を組み合わせる場合には全期間を指すこともあります。そのことをあらかじめ知っておくとよいでしょう。
最近では、多くのお薬が使えるようになってきています。たとえば、いくつかのお薬を組み合わせて同時に投与する治療がある一方、さまざまなお薬を段階的に使用する治療もあります。また、お薬をあらかじめ決められた回数使う場合もあれば、そのお薬の治療が効いている間はずっと続ける場合もあります。そのため、いつまで治療が続くのか、患者さんにとってわかりづらいこともあるでしょう。
今後のあなたの日常の予定を立てていくためにも、このあとの治療の予定や期間について聞いてみることが重要です。たとえば、仕事や学校を休む必要があるのか、休むとしたらどの程度の期間になるのかなどの情報は、就業・就学と治療の両立の面で大切です。また、事前に治療スケジュールを確認しておくことで、大切な予定や行事への影響を最小限にすることもできるでしょう。
冒頭にご紹介した会話は、白血病などの血液がんの患者さんを想定したケースです。
急性白血病を例にあげると、治療は主に薬物療法となります。その第1段階として、血液中の白血病細胞を大きく減らすことをめざし、複数のお薬を使う「寛解導入療法」をおこなうことになります。この寛解導入療法によって検査では見つからない状態にまで白血病細胞が減ることを、医師は「寛解」と呼ぶのです。ただ、たとえ寛解の状態であっても、検査では見つからない小さな白血病細胞がからだに残っていることも考えられます。そして、残ってしまった白血病細胞が再び増えはじめる場合があります。
そこで、からだに残っている白血病細胞をゼロに近づけるために、第2段階の治療となる「寛解後療法」がおこなわれることになります。この寛解後療法と呼ばれるもののなかに「地固め療法」と「維持療法」があるのです。
「地固め療法」とは、白血病細胞をさらに減少させるために、数か月間入院しておこなう治療のことです。そして、「維持療法」とはそのあとで白血病細胞を完全にゼロにするために、約1〜2年間にわたって外来でおこなわれる治療のことです※。
この維持療法が終わった段階で寛解が維持されていれば、白血病細胞がなくなったとみなされて治療が終了します。
ここで取りあげたのは白血病治療の流れを示した一例ですが、このようにがん治療は必ずしもひとつの治療で終わるわけではなく、段階的におこなわれる場合が多いのです。
地固め療法は、寛解導入療法で寛解の状態になったからこそ、おこなわれる治療法と言えます。つまり、地固め療法をおこなえるということは、実はとてもよいニュースなのです。次へのステップとなる地固め療法を医師から告げられたとしたら、それは今の治療が順調に進んでいるメッセージとして前向きに受け止めましょう。
もちろん、がんの種類によって、治療の種類は異なります。「寛解導入療法」や「地固め療法」は、白血病のみで用いられることばです。その一方で、「維持療法」ということばは、ほかの種類のがんでも使われることがあります。ただ、がんの種類によって「維持療法」の目的や内容が少しずつ異なる場合があるため、「維持療法」ということばを聞いたときには疑問を残さず医師からよく説明を受けるとよいでしょう。もちろん「維持療法」以外のことばでも同様です。
監修:国立がん研究センター がん対策情報センター
2019年9月掲載