Renn様
70代後半
同居家族:
妻、子供
治療歴
肝切除 / 焼灼
その他治療
同居家族:
妻、子供
発症時年齢:
70代
現在の状態:
経過観察中
既往歴 :
尿毒症、うつ病、腹部大動脈瘤、心筋梗塞
※患者さんの名前は仮名です。
※本サイトに掲載している体験談は個々の患者さんのご経験をインタビューした
内容に基づき作成しています。病状や経過、治療への向き合い方などはお一人おひとり異なります。
内容に基づき作成しています。病状や経過、治療への向き合い方などはお一人おひとり異なります。
Renn様の体験談
発症 / 診断
C型肝炎の治療後の定期受診で肝細胞がんが見つかった
40代後半に、会社の検査でC型肝炎ウイルスに感染していることがわかりました。当時症状はなく、数年後に治験に参加したことはありましたが、その後も定年になるまでは、医療機関に通うこともありませんでした。定年を機にインターフェロン治療に取り組み、ウイルスを封じ込めたと思っていたのですが、フォローアップのための年4回の定期受診の際、エコー検査で肝細胞がんが見つかったのです。
肝炎の患者会を通してC型肝炎ウイルスが消えてもがんになることは聞いてはいたものの、自分としては青天の霹靂でした。あと何年生きられるのだろう?と不安になり、すぐに生存率や余命について調べ数字をみて頭に残り落ち込みました。時間が経過して冷静になってみると、生存率や余命は診断時のステージによって差があることがわかり、私の場合は定期的な受診のおかげで、ごく早期に発見できたのは幸いだったと思い直すことができました。
肝炎の患者会を通してC型肝炎ウイルスが消えてもがんになることは聞いてはいたものの、自分としては青天の霹靂でした。あと何年生きられるのだろう?と不安になり、すぐに生存率や余命について調べ数字をみて頭に残り落ち込みました。時間が経過して冷静になってみると、生存率や余命は診断時のステージによって差があることがわかり、私の場合は定期的な受診のおかげで、ごく早期に発見できたのは幸いだったと思い直すことができました。
肝切除 / 焼灼
主治医の勧めで腹腔鏡手術を受ける決心をした
早期のため、手術で切除するのが最良の方法とのことでした。主治医は「私の肌が弱いから」と、開腹手術ではなく自院ではできない腹腔鏡の手術を勧めてくれました。十数年私を診察し続けてくださる中で、私の肌が弱いということを把握されており、このご提案はとても有り難く、妻も感心していました。主治医には、私の病気だけでなく全体を診てもらっている安心感があります。普段通い慣れていない病院で治療を受けることに多少不安はありましたが、腹腔鏡手術ができる病院をすぐに紹介していただき、「何かあればすぐ連携しますから」と言っていただき、安心してお任せできました。先生との信頼関係が何よりの薬でした。
入院は1週間程度で、多少身体的負担はありましたが、大きく切らねばならない開腹手術よりは負担は少なく済んだと思います。退院1週間後に新幹線で九州に出かける予定があったので、それを楽しみに多少の痛みは乗り切りました。さらに1ヶ月半後には、イギリス旅行にも出かけましたが、これには先生も驚いていました(笑)。
入院は1週間程度で、多少身体的負担はありましたが、大きく切らねばならない開腹手術よりは負担は少なく済んだと思います。退院1週間後に新幹線で九州に出かける予定があったので、それを楽しみに多少の痛みは乗り切りました。さらに1ヶ月半後には、イギリス旅行にも出かけましたが、これには先生も驚いていました(笑)。
手術後の旅行の準備物の写真
術後の経過は順調で、病気のことを忘れてしまうほど
腹腔鏡手術の退院後の日常生活への復帰は順調でした。いま思うと家族は、私にあまり心配をかけないように、と普段通りに接して気遣ってくれていたように感じます。入院治療によって、定期的に実施していた、うつの患者会の開催ができなかったことや、月2回やっていた仕事を代わってもらったりしましたが、復帰後は病気のことを忘れてしまうほどの日々が戻ってきて、生活への大きな影響は殆どなかったと思います。
それでも、常に生存率のことは頭から離れず、あとどのくらい生きられるのだろうというのは気になりつつ、今も3ヶ月ごと、年に4回の定期検査を受けています。
それでも、常に生存率のことは頭から離れず、あとどのくらい生きられるのだろうというのは気になりつつ、今も3ヶ月ごと、年に4回の定期検査を受けています。
情報過多の現代では、情報の見極めが重要
私は、病気や治療について、自分でもインターネット等でいろいろと調べる方だと思います。肝細胞がんに関する情報は、キーワードでアラートをかけて新着情報をチェックしたり、患者会やFacebook等のSNSなども参考にしています。一方で情報の見極めはとても重要で、個別の事例なのか普遍的なものなのか、参考にはなるが全部が当てはまるかどうか、という視点を必ず持つようにしています。情報過多のなか、自分でしっかり考えて選別することが必要だと思います。
さまざまな医療者の方の「人薬」としての支援に感謝
一部の肝細胞がんは再発を繰り返し、長く向き合う場合もあるため、伴走してくださる医療者との関係はとても大事だと思います。私は先生との巡り合わせが良く、恵まれていました。医療には「人薬(ひとぐすり)」というものがあると思っています。治療や薬による直接的な効果とは別に、人が治療にもたらす効果のことです。肝炎の治療をしていた頃から、医師だけでなくほかの医療スタッフの方々にも、とてもお世話になりました。入院の際に不安や副作用に対してとても親身に対応してくださった看護師さんには、本当に感謝していますし、お薬のことをいろいろ教えてくださった薬剤師さん、日々の食事のことを指導してくださった栄養士さん。さまざまな職種の方に「人薬」として支援していただきました。
薬剤師からの一言
薬剤師 阿部様
がんの治療は、医師だけでなく看護師や薬剤師、多職種が連携して患者さんとご一緒にチームで取り組むようになってきています。主治医には言いにくいことがあれば、薬剤師や看護師など身近な医療者にぜひお話ください。患者さんからの情報が、治療のうえでとても大切な情報であることもあります。身近に気軽にお話ができる薬剤師がいない場合は、ぜひ一度「薬剤師とお薬について話をしたい」、と主治医や看護師にお申し出いただき、関係を作っておかれると良いと思います。
「がん」と言われてすぐに、緩和ケアを活用
私は「がん」と言われてすぐに、緩和ケアを活用しました。緩和ケアは末期の方のためのものではなく、さまざまな苦痛を緩和するためにがんの早期から活用できるということを自分で調べて知っていたのです。主治医に申し出たところ、「良いですね」と、すぐに院内の緩和ケア医を紹介してくださいました。身体的な苦痛は殆どありませんが、緩和ケア医に再発や転移に対する不安などを心おきなくお話し、受け止めていただいたことで、とても気が楽になりました。医師だからこそ相談できることもありますし、家族にも、患者会にもできないサポートかもしれません。これも「人薬」ですね。緩和ケア医にも支えていただいていることに感謝しています。
先生からの一言
医師 奥坂先生
ご自分でいろいろとお調べになったうえで、医療者を味方につけるのがとてもお上手ですね。緩和ケアは、がんになった早期から導入することが推奨されており、最近の研究では、緩和ケアをうまく活用することで、生存期間にも良い影響を与えることがわかっています。ご関心を持たれたらぜひ、主治医や相談支援センターなどにご相談されてみて、緩和ケア医と繋がっておかれると良いと思います。
がんとの向き合い
患者会に励まされた経験を活かし肝炎医療コーディネーターに志願
肝細胞がんは長くお付き合いする病気ですから、仲間がいることや情報発信がとても大事だと思っており、患者会の皆さんとの交流を続けています。不思議と、同じ「患者」というだけで、他愛ない話をするだけでも癒されるんですよね。患者会に励まされ、助けられてきたこともあり、肝炎や肝細胞がんと向き合ってきた経験を他の方のために役立てたい、と、行政が主導して取り組んでいる「肝炎医療コーディネーター」に志願しました。まだ活動できていませんが、私が受けてきた恩を次につなげていきたいと思っています。
再発については常に不安がありますが、先のことは敢えて調べないようにしています。先のことを考えすぎてしまうとしんどくなりますし、考えてもどうしようもないこともありますから。「ケ・セラ・セラ」、「なるようになるさ」、と気楽に考えるようにしています。食事や生活も厳しくしすぎるとかえってストレスを溜めてしまうと思うので、例えばアルコールは月に1回、週に1回くらいは0.5%のビールを楽しんだりと、用心しながらもうまく工夫しています。
再発については常に不安がありますが、先のことは敢えて調べないようにしています。先のことを考えすぎてしまうとしんどくなりますし、考えてもどうしようもないこともありますから。「ケ・セラ・セラ」、「なるようになるさ」、と気楽に考えるようにしています。食事や生活も厳しくしすぎるとかえってストレスを溜めてしまうと思うので、例えばアルコールは月に1回、週に1回くらいは0.5%のビールを楽しんだりと、用心しながらもうまく工夫しています。
肝臓がんの治療を含め、医療は刻々と進歩しています。余命などの情報は、過去の患者さんの経過からのデータに基づくもので、いまはより多くの治療・対応方法がありますから、ともにより良い未来をつくっていきましょう。