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私からのメッセージ

Vol.2 よりよいがん医療を受けつための鍵は
「信頼を築くコミュニケーション」

自身の病気について調べるときの注意点

――上野さんは著書の中で、患者さんがよりよい医療を受けるための提言をしておられますが、ご自身ががんになって新たに気づいたことはありますか?

 本の中で「あわてずに自分の病気を知ろう」と書いたのですが、大変な部分もあるな、と感じました。私もインターネットで文献を検索したのですが、エビデンス=科学的根拠のしっかりしている論文は2つしか見つかりませんでした。少ないうえに、それが自分に該当するかどうか専門家の私さえわかりにくかった。一般の方だったらなおさらではないか、かえって混乱をきたすケースが多いのではないかと思いました。ではどうするか?問題や悩み、不安は誰かと共有することが一番です。

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問題や悩みを共有する相手を持つ

――たとえば誰と共有すればよいのですか?

上野直人さん

 まずは、主治医です。さっき自分の病気について調べるときインターネットを使うという話をしましたが、患者には、わからないことがいっぱいあると思うんですね。情報はいっぱい見つかっても、それが自分自身の病気にあてはまるかどうかがわからない。そんなときは、得た情報を主治医に見せて、話をしてください。「こんなネット情報を見つけたのですが、先生はどう思われますか」と主治医に聞く。そうすることで問題を共有することができます。
 あるいは告知、インフォームド・コンセント、治療法の選択、あるいは再発の疑いがあって医師と面談する場面など、重要なポイントでは、家族や友人に立ち会ってもらうのです。
 私も不安や悩みが生じたとき、たびたび家内に電話をして意見を聞きました。話すだけでもよいのです。すると一人のときより冷静になります。そうやって不安や悩みを共有すれば事実を確認でき、自分の病気について正確に理解することもできます。一人で悩んで、悩んだ末に迷走するようなことはなくなるはずです。

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家族の役割は伴走者

――不安や悩みを共有する家族の側で、気をつけることはありますか?

 いたわりのつもりなのでしょうけど、なんの根拠もなく励ましたりしますよね。たとえば乳房切除をした患者に、「切ったんだから安心」とか「もう大丈夫、大丈夫」とか。でも患者自身は再発の心配が絶えず頭のなかにあるのですから、無責任だと受け止めかねない。さらにそういった発言が何度か続くと、「あぁ、どうせ私の悩みはわかってもらえないんだ」と患者は追い込まれて孤立してしまいます。
 乳がんはたとえ早い段階で見つかったとしても全身病の側面があって油断できない。無責任な発言をしないためにも、患者といっしょに病気について勉強をする必要がありますね。

――よく「告知をしないでほしい」と、家族が医師に依頼することがあります。そのことと不安や悩みを共有しあうこととは違うのですか?

上野直人さん

 違います。告知のこともそうですが、家族が治療法についても口出しをすることが多いように思います。苦しませたくない、治ってほしいという一心であることはわかりますが、抗がん剤療法はしないでほしいとか、もっと効く抗がん剤はないのか、と聞かれることがあります。得体の知れない代替療法を勧めるケースも多いですよね。患者はがんになって家族に迷惑をかけているという心理的な負い目があって、家族を喜ばせたいがために、つい望んでいない手術をしたり、抗がん剤療法をしたりすることがあります。
 お年寄りが患者の場合はとくにありがちなのですが、何でも家族が決めてしまうのではなく、まず患者の希望を聞いて、本心はどこにあるのか、望んでいることは何なのかを理解して伴走をして欲しいですね。
 がんの闘病はマラソンに似ていて、速く走っても遅く走ってもダメなんですよ。あせって速く走れば息切れしてしまうし、悠長にかまえて遅く走れば治るものも治らないかもしれない。家族は伴奏しながら、ちょうどよいペース配分になるようにしてあげることが大切です。

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医療スタッフと信頼を築くためのキャッチボール

――闘病をしていくうえで主治医や医療スタッフとどうやってつきあっていくのがよいのでしょうか?

 自分自身ががんになって再認識したのが、患者と医療スタッフが信頼しあうことの重要性です。そのためには患者として積極的に質問することが大事で、その根幹を成すのが医師や看護師、薬剤師などの医療スタッフとよい関係を築いていくためのコミュニケーション力だと思います。
 私も今回、主治医に対して、全部を話してくれていない、隠していることがあるのでは、と一時的に疑心暗鬼になりました。いくつも検査をして、情報のタイムラグから生じた誤解だったのですが、疑問に思ったときに率直に確認していればそんな誤解も生まれなかったはずです。疑心暗鬼のまま治療を受けたのではよいことはありませんよね。
 そういう疑問点を質問する力、コミュニケーションをとっていく力は、もちろん医療スタッフも持たなければなりませんが、患者にも同じことがいえるのではないでしょうか。医療スタッフからの働きかけを待つだけでなく、患者の方も積極的に歩み寄って、質問を投げたり受け取ったりする。そんなふうにキャッチボールをすれば、互いに信頼感が湧いてきて強固になっていくのです。

――医師に質問するのは気がひけるので「おまかせ医療」にすることが多いように思います。それではダメなのですか?

勤務中の上野さん

 変なたとえかもしれませんが、寿司屋と医療は似ているところがあって、信頼関係が構築されていないのに、すべておまかせでは不安でしようがない。寿司屋は店の客のようすや好みがわからなければやりにくい部分がある。お客のほうも寿司職人のことがわからなければ、安心して「おまかせ」とは言えないですよね。信頼関係を築くには、お互いやりとりをして、納得してコミュニケーションをとっていく一連のプロセスが必要なのです。

次回は、「患者も家族もチームの一員として医療に参加する」についてご紹介します。

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