納得して治療を
受けるために
患者さんが語る“治療決定までの経緯と治療の実際”
※本サイトに掲載している体験談は、個々の患者さんへのインタビューの内容に基づき作成しています。病状や経過、治療への向き合い方などはお一人おひとり異なります。また、本サイトに記載されている症状などがあっても、膀胱がんとは限りません。ご自身の症状で気になることがあれば、医療機関を受診し、医師にご相談ください。
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性別女性
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診断時の年齢30代後半
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現在の年齢50代前半
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診断筋層非浸潤性膀胱がん
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治療歴膀胱全摘除術
症状発現~診断
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最初に異変を感じたのは、トイレに行く回数が急に増えたことです。特に、夜中に何度も目が覚めてトイレに行くため、ぐっすり眠ることができなくなりました。血尿や排尿時の痛みはなく、これまでにも膀胱炎を繰り返していたので、そのときも膀胱炎だと思っていました。
1ヵ月ほど経過した後、近所の総合病院を受診し、膀胱炎とは少し様子が異なったため膀胱鏡検査を勧められ受けた結果、がんの可能性があることがわかりました。その後、すぐにがんセンターを紹介され、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)など詳しい検査を受け、筋層非浸潤性膀胱がんの確定診断がつきました。
膀胱炎だと思っていたので、まさか膀胱がんだとは考えてもいませんでした。その瞬間、真っ先に思い浮かんだのは二人の子どものことです。もし最悪の事態になった場合、まだ幼い子どもたちを残していかなければならないかと思うと、途方もない不安と胸が張り裂けるような切なさを感じました。
治療法の提案~決定
がんは筋層には達していませんでしたが、私は当時30代後半でまだ若かったため、がんの進行が速く、筋層に浸潤して広がる前に手術をしなければ、余命が1年を切る可能性もあるという説明がありました。そのため先生から「膀胱全摘除術をできるだけ早めに行う方がよいので、手術の日程を早急に調整しましょう」と言われました。
まだ心の準備ができていなかったため、そのときはどうすべきかまったくわからず、不安でいっぱいでした。手術では膀胱だけでなく、子宮など周囲の臓器も摘出する可能性があると言われたことが気がかりでした。
また、それ以上に私が悩んだのは、新たに尿をためておく場所となるストーマ装具(パウチ)を付けた生活のことです。常に体に異物を取り付けて生活することに対して、どうしても抵抗がありました。特に装具を付けてからの子どもとの日常生活がまったくイメージできず、子どもを抱っこできるのか、一緒に走ったり、遊んだりできるのかといったことも心配でした。インターネットで調べても、小さな子どもがいる同じような境遇の方の情報は少なくさらに不安になりました。
膀胱を残せるのであれば、どんな治療法でも試したいという気持ちがあったので、他の治療法についても何度も尋ねましたが、がんが膀胱内に多発しているため、薬物療法など他の治療法では十分な効果は見込めないという説明を受けました。
それでもわずかな希望を持ちたくて、セカンドオピニオンを受けたいと伝えたところ、「納得できない気持ちはよくわかります。セカンドオピニオンを受けることをお勧めします」と快くサポートしてくださいました。別のがん専門病院でセカンドオピニオンを受けた結果、主治医の先生と同じ診断で、治療法としても同じく膀胱全摘除術を提案されました。
先生は「不安に思うところがあれば何でも聞いてくださいね」と言ってくださり、本当にありがたかったです。最初は「がん」、「余命」、「膀胱全摘徐術」という言葉に抵抗があり、説明がなかなか頭に入ってこなかったのですが、イラストや写真などを使って、丁寧に何度も説明していただきました。
また、膀胱全摘除術を受けたとしても、その後再発や転移がみつかるかもしれないという不安を話すと、先生は「もしこの方法がうまくいかなくても、次はこのような治療法があるからあきらめないでください」と言ってくださいました。再発や転移がみつかった場合の対応策を知ることで、不安が和らぎました。
もっとも大きな理由はまだ幼かった子どもたちの存在です。「ストーマを造設することで生活上の不便はありますが、あなたの場合は、膀胱全摘除術を受ければ再発のリスクが少なくなると考えられます。再発の不安に悩まされることなく、お子さんの成長を見守ることができると思います」という先生の言葉に背中を押され、膀胱全摘除術を選ぶことにしました。
治療実施
私が手術で入院している間は、夫の実家で子どもたちの面倒をみてもらっていました。子どもたちには病気のことは触れずに「数ヵ月お出かけするから、その間はおばあちゃんの家で暮らしていてね」と説明したところ、素直に聞き入れてくれました。夫と義父母は幼い子どもたちの世話で大変だったと思いますが、その支えがあったおかげで、私は治療に専念することができました。家族には本当に感謝しています。
膀胱全摘除術を受けて15年が経ちますが、現在は再発に対する不安もなく、家族との時間を大切にして過ごしています。膀胱全摘除術を選んだことに後悔はありません。この選択がベストだったと思っています。