早期胃がんと進行胃がんで治療の流れが異なる
リンパ節への転移の可能性がとても低く、病変が粘膜にとどまっていて、がんをまるごと取り除くことが期待できる早期の胃がんでは、お腹を切らずに口から内視鏡を入れて行う治療が行われます。開腹手術より体への負担が少ないことが特徴です1)。
一方で、早期でもリンパ節に転移している可能性がある場合は、腹腔鏡手術やロボット手術が実施されます。
さらに胃がんが進み、進行胃がんと診断された場合は、手術と抗がん剤治療を組み合わせた治療が行われます2)。手術と抗がん剤治療の進め方は、大きく分けて2パターンです。
リンパ節転移がはっきり見られない場合や、手術で切除しやすいと判断される場合は、先に手術を行います。そして、手術中に取り出した組織を詳しく調べる「病理検査」の結果、ステージIIやIIIと診断された場合には、再発のリスクを下げるために抗がん剤治療が勧められます。手術のあとに行われる抗がん剤治療は、「術後補助療法」とも呼ばれます。
進行した胃がんの中には、リンパ節への転移が認められ、手術だけでがんをすべて取り切るのが難しいケースがあります。また「スキルス胃がん」のように、手術で切り取ったとしても、そのあとの経過が思わしくないタイプのがんもあります。
このようなケースでは、手術の前に抗がん剤治療(術前療法)を行い、がんを小さくすることで、より確実に手術でがんを取り切れる状態にすることを目指します。
胃がん治療における手術と抗がん剤治療、それぞれの役割とは?
進行がんの場合は、手術と抗がん剤治療が治療の中心となります。
手術はがんを取り除くことを目的とする3)
胃がんの手術は、がん細胞をすべて取り除くことで、完全に治すことを目指して行います。手術では、がんだけでなく、がんが転移している可能性が高い胃の周りのリンパ節も一緒に取り除きます。
切除の方法や手術の進め方は、胃がんの進み具合によってさまざまです。胃をすべて摘出する場合もあれば、一部だけ切除する方法もあります。
抗がん剤治療は再発予防や進行を抑えるために行う3)
抗がん剤治療は、薬の力でがん細胞が増えるのを抑える治療です。胃がんの治療では、再発を防ぐために手術の前後に使うほか、手術でがんを完全に取り除くのが難しいときや、再発したときにも行われます。
薬には飲み薬や点滴などのタイプがあり、がんの進み具合や体の状態に合わせて、医師が最適な種類や組み合わせを検討します。
状況に応じて免疫療法や放射線治療も検討する
手術や抗がん剤治療のほかに、近年注目されている治療には「免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)」があります。免疫チェックポイント阻害薬は、ウイルスや細菌から体を守るための仕組み(免疫)を利用して、がん細胞を攻撃するためのお薬です4)。
また、「放射線治療」が選ばれるケースもあります。ただし、胃がん細胞は放射線への反応が弱いため、骨への転移による痛みや腫瘍からの出血といった、胃がんによる症状を和らげる目的で用いられます5)。
手術と抗がん剤治療を組み合わせる
手術と抗がん剤治療のパターンと、対象となる患者さん、治療のメリット・デメリットは以下の通りです6,7)。
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手術+手術後に抗がん剤治療:
対象:病理学的(p)ステージがⅡ期またはⅢ期の患者さん
メリット:手術後に微小ながん細胞が体に残っている場合に、抗がん剤で再発を抑えられる可能性がある
デメリット:手術で十分にがんを取り除けた患者さんにとっては負担の大きい治療になる場合がある
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手術+手術前に抗がん剤治療:
対象:手術前の検査で多くリンパ節転移が認められた患者さん
メリット:手術前の体力があるうちに抗がん剤治療を行うことで手術の際にがんを取り除きやすい
デメリット:抗がん剤治療が効かなかった場合、がんが大きくなってしまう
治療法には上記の通り、いくつかのパターンがありますが、どれか一つが良い治療法というわけではなく、患者さんそれぞれの状況に合わせて、その人にとっての最善が選択されています。
緩和ケアで症状のつらさを和らげる4)
緩和ケアは、がんによる体や心のつらさ、生活の中での困りごとを軽くするための支援です。「終末期の治療」というイメージを持たれる方もいらっしゃいますが、実は、がんとわかった時点から始まります。
痛みや吐き気などの体の症状だけでなく、不安や落ち込みといった心のつらさ、仕事や家庭のことなど、どんなことでも遠慮なく担当医に相談してみましょう。
- <参考文献>
- 日本胃癌学会 編:胃癌治療ガイドライン 医師用 第7版, 金原出版, 2025, p28
- 国立がん研究センター 東病院 「治療方針」https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/gastric_surgery/050/020/index.html (2026年6月時点)
- 国立がん研究センター 中央病院 「胃がんについて」https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/clinic/gastric_surgery/080/index.html (2026年6月時点)
- 国立がん研究センター がん情報サービス 「胃がん 治療」 https://ganjoho.jp/public/cancer/stomach/treatment.html(2026年6月時点)
- 東京医科大学病院 「胃がんの治療」 https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/cancer/stomach/treatment.html (2026年6月時点)
- 日本胃癌学会 編:患者さんのための胃がん治療ガイドライン 2026年版, 金原出版, 2026, p40-41,78-79
- 国立国際医療センター「胃がんの化学療法について」 https://www.hosp.jihs.go.jp/s022/120/index_6.html (2026年6月時点)