
膀胱がんとは?

膀胱がんについて
膀胱と膀胱がん
膀胱の位置
膀胱は骨盤の中にある袋状の臓器で、男性では恥骨と直腸の間、女性では恥骨と子宮、腟の間にあります。


膀胱の構造
膀胱の壁は内側から「粘膜上皮(尿路上皮)」、「上皮下結合組織」、「筋層」で構成されており、筋層の周囲には「脂肪組織」があります。

膀胱のはたらき
膀胱は、腎臓で作られた尿を一時的にためておくはたらき(蓄尿)と、体外に排出するはたらき(排尿)があります。
膀胱は尿の量に応じて伸び縮みして、成人ではおよそ300mLの尿をためることができます1)。
- 医療情報科学研究所編:病気がみえる vol.8 腎・泌尿器 第3版, メディックメディア, 2019, p10
膀胱がんとは
膀胱がんとは膀胱にできるがんの総称で、膀胱がんの90%以上は、膀胱の内側をおおう尿路上皮という粘膜にできる「尿路上皮がん」です1)。
膀胱がんが発見された場合、尿管や腎盂(じんう)など同じ尿路上皮でつながっている他の部位にもがんが存在する可能性があるため、注意が必要です。
また、膀胱がんはがんを切除しても再発しやすい特徴があります。膀胱内に以前から存在していた、がん細胞になる可能性の高い細胞が新たにがん化することや、手術前から別の部位に広がっていたがん細胞が成長することなどによって、再発すると考えられています。
- 医療情報科学研究所編:がんがみえる 第1版, メディックメディア, 2022, p459
膀胱がんの再発様式
- ◀ 膀胱がんの再発様式①
- 膀胱がんの再発様式② ▶

- 医療情報科学研究所編:がんがみえる 第1版,
メディックメディア, 2022, p462をもとに作成
膀胱がんの症状
初期にみられる症状
膀胱がんの主な症状には、血尿や頻尿、排尿時の痛み、残尿感などがあります。
血尿は80%以上の患者さんにあらわれ、痛みを伴わないことが特徴です1)。
- 初期にみられる症状
-
- 血尿
- 頻尿
- 排尿時の痛み
- 残尿感
など


- 血尿とは
- 腎臓や尿路からの出血により、尿に血が混ざっている状態を血尿といいます。
血尿には、目でみてはっきりわかる“肉眼的血尿”と、目でみてもわからず顕微鏡で確認できる“顕微鏡的血尿”の2種類があります。
- 医療情報科学研究所編:がんがみえる 第1版, メディックメディア, 2022, p457
がんの進行に伴う症状
がんが進行すると、がんにより尿管がふさがれて腎臓に尿がたまってしまい、わき腹や背中、腰の痛み、排尿時の痛み、尿が出にくくなるなどの症状があらわれることがあります。
また、その他に体重の減少や、足のむくみなどが生じることもあります。
- がんの進行に伴う症状
-
- わき腹、背中、腰の痛み
- 排尿時の痛み
- 尿が出にくくなる
- 体重の減少
- 足のむくみ
など


膀胱がんの危険因子
膀胱がんを発症する危険性(リスク)を高める要因として、「喫煙」、「特定の化学物質への曝露」、「膀胱内の慢性的な炎症」などがあります。
- 喫煙
-
喫煙は膀胱がんのもっとも重要な危険因子です。
喫煙者は非喫煙者に比べて、膀胱がんを発症するリスクが2~5倍高いといわれています1)。

- 特定の化学物質への曝露
- 芳香族アミン類という物質が膀胱がんの原因になることがわかっています。この物質を含む化学物質や染料、顔料、ペンキなどを扱う職業の方は膀胱がんを発症するリスクが高いといわれています1,2)。

- 膀胱内の慢性的な炎症
- 膀胱結石など他の疾患によって膀胱内で炎症が長期間続くと、その炎症部分からがんが発生することがあります1)。
- その他
- 長期間の尿道カテーテルの使用、骨盤内に対する放射線療法、一部の抗がん剤が関係することもあります1,3)。
- 医療情報科学研究所編:病気がみえる
vol.8 腎・泌尿器 第3版, メディックメディア, 2019, p273 - 松島正浩ほか:日泌尿会誌, 104(4), 569, 2013
- 日本泌尿器科学会編:膀胱癌診療ガイドライン2019年版
[増補版], 医学図書出版, 2023, p10
