TACE(肝動脈化学塞栓療法)とは?

足の付け根の鼠径部などの動脈からカテーテルという細いチューブを入れ、先端を肝動脈まで挿入し、抗がん剤と肝動脈をふさぐ物質を注入することで、がんに栄養を運んでいる血管をふさぐと同時に抗がん剤での治療効果も期待する治療法です。通常、入院を必要とする治療法です。
国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科長 奥坂 拓志先生

先生からの一言

国立がん研究センター中央病院 
肝胆膵内科長 奥坂拓志先生
 肝臓がんは再発をしやすい病気のため、TACEを複数回経験される方もいると思います。TACEは日本で開発された治療法で、適切に実施することで患者さんのメリットになることが科学的に証明されています。手術やラジオ波焼灼ができない場合でも決してめげずに取り組んでいただきたいと思います。

TACEに関する体験談

※本サイトに掲載している体験談は個々の患者さんのご経験をインタビューした

内容に基づき作成しています。病状や経過、治療への向き合い方などはお一人おひとり異なります。
TACEやRFA、PEIT等の複数の治療を受けた
 主治医からは、病状は今すぐ身体への影響はなく、複数ある腫瘍に直接抗がん剤を注入し一つ一つ潰していく肝動脈化学塞栓療法(TACE)で、効果をみながら治療していきましょう、と言われました。実際に体調に変化もなく、治療がうまく行けば自分はがん患者ではなくなるのだ、と自分を奮い立たせました。
 TACEについては、先に肝細胞がんになった母の付き添いで、治療の説明も経過も理解していたのでそれほど不安はありませんでした。辛かったことといえば、術後の安静で腰が痛くなったことくらいです。最初の治療では、退院後も1週間ほど仕事を休み療養しましたが、その後は全く支障なく仕事に復帰することができました。
 TACEの効果がなかった部分には、ラジオ波焼灼術(RFA)をすることになりました。仕事に配慮していただき、12月の冬休みに入ったタイミングで治療し年内に退院しました。
 翌年3月末に仕事を退職し、5月に2回目のTACEをしました。このときは退院後の倦怠感が強く、家の中で横になっていることが多かったです。やる気はあるのですが、体が動かなかったんです。そのときも夫が家事をよくやってくれて、助かりました。TACEはその後にもう一度行い、同年に経皮的エタノール注入療法(PEIT)を実施したのが最後の治療です。長時間同じ姿勢を保つ必要がありましたが、治療をしながら先生と話をしたりもできましたので、それほど辛いと感じませんでした。
肝切除/焼灼、TACE、その他の治療歴があるかず様
肝切除/焼灼、TACE、その他の治療歴があるかず様
かず様
40代後半
同居家族:
夫、子ども
治療歴
肝切除 / 焼灼
TACE
その他治療
同居家族 :
夫、子ども
発症時年齢:
40代
現在の状態:
経過観察中
既往歴  :
B型肝炎、慢性肝炎、膵腫瘍
※患者さんの名前は仮名です。
副作用への対処については、ご自身で判断せず、必ず医師や薬剤師・看護師等にご相談ください。
TACEを受けてから手術、そしてHAIC
 診断を受けた病院では治療が難しかったため、別の病院の紹介を受け転院しました。担当の外科医から、「手術の前に肝動脈化学塞栓療法(TACE)しましょう」と言われ、診断後まもなくTACEのため1週間ほど入院しました。TACEでは私の場合は痛みを伴いました。大きながんの断末魔の悲鳴が痛みとして現れたのかもしれません。痛みは長くは続きませんでした。  TACEを実施し退院後は職場に復帰し、2か月後に12時間かけて切除手術を行いました。私は麻酔で寝ているだけで負担はありませんでしたが、付き添っていた妻は翌日めまいを起こし倒れました。長時間の付き添いと緊張で疲れていたのでしょう。  手術の10日後、体内にリザーバーを埋め込み、肝動注化学療法(HAIC)を開始しました。1週間に1度、抗がん剤の入ったポンプの交換に通院しながら、腰にポンプをぶら下げて職場にも復帰しましたが、特に仕事に支障はなかったです。
肝切除/焼灼、TACE、薬物療法、その他の治療歴があるねむ様
肝切除/焼灼、TACE、薬物療法、その他の治療歴があるねむ様
ねむ様
60代後半
同居家族:
治療歴
肝切除 / 焼灼
TACE
薬物療法
その他治療
同居家族 :
夫、子ども
発症時年齢:
50代
現在の状態:
定期検査(画像・血液)で経過観察中
既往歴  :
B型肝炎
※患者さんの名前は仮名です。
再発が見つかりTACEを受けることに
 腹腔鏡手術から1年ちょっと経過した定期検査のCTで、再発した腫瘍が2つ見つかりました。最初の手術で完全に切除して治った、再発しない、と思っていたので、これはショックでした。でも先生から「大丈夫ですよ、ほかにもたくさん治療法がありますから」と言われ、少し安心しました。肝動脈化学塞栓術(TACE)をすることになり、1週間ほど入院しました。TACEは、意識がある状態で足の付け根の動脈から肝臓まで管を入れ、腫瘍に抗がん剤を流し塞ぐという治療です。2つのうち1つはうまくいきましたが、もう一つは複雑な場所にあり、管が届かず様子見することとなりました。TACE自体の痛みはなく、退院後も活動制限はありませんでしたが、術直後の午後から翌日の朝まで絶対安静が必要で、お手洗いにも行けず、背中が痛くなりました。辛かったことがあるとすれば、その安静にすることくらいでしょうか。
肝切除/焼灼、TACE、薬物療法などの治療歴があるからくり様
肝切除/焼灼、TACE、薬物療法などの治療歴があるからくり様
からくり様
60代後半
同居家族:
妻、猫
治療歴
肝切除 / 焼灼
TACE
薬物療法
同居家族 :
妻、猫
発症時年齢:
60代
現在の状態:
抗がん剤治療継続中
既往歴  :
2型糖尿病、慢性肝炎、B型肝炎
※患者さんの名前は仮名です。
TACE後はなかなか本調子に戻らなかった
 放射線治療を終えた1ヶ月後に、もともと予定していた肝動脈化学塞栓療法(TACE)をしました。初めて聞く治療だったこともあり、どのような治療で何に気をつけるべきなのか、など調べていくうちに、「肝臓がんは再発が多い」という情報に触れ、「治療を頑張っても再発してしまうのか…」と、落ち込みました。TACEでは1週間入院しましたが、体力が落ちてしまいなかなか本調子に戻らず、当初予定していたフルタイムでの職場復帰は叶わず、時短勤務から徐々に元のペースに戻していきました。治ったら大好きな旅行に行きたいということを励みに気持ちを保っていました。
TACE、薬物療法、その他の治療歴があるKana様
TACE、薬物療法、その他の治療歴があるKana様
Kana様
40代
同居家族:
夫、子ども2人
治療歴
TACE
薬物療法
その他治療
同居家族 :
夫、子ども2人
発症時年齢:
40代
現在の状態:
別の抗がん剤治療に変更
既往歴  :
特になし
※患者さんの名前は仮名です。
繰り返して受けたTACEやRFAがいつまで続くのか不安に
 手術から3年間は再発なく、治ったという気持ちで楽しく過ごすことができましたが、残念ながらちょうど3年後に再発が見つかり、最初の肝動脈塞栓療法(TACE)を行いました。TACE自体はそれほど苦になりませんでしたが、術後の数時間の安静は辛かったですね。同年12月にまた再発がわかりました。肝細胞がんは再発を繰り返すと聞いてはいましたが、こんなに短期間で再発するのか、と正直落胆しました。長く付き合っていかないといけない病気なのだ、と気持ちが切り替わったのはこの頃だったと思います。このときはラジオ波焼灼療法(RFA)で治療しました。
 翌年5月に3回目の再発で再度TACEを行いました。ほどなくして2ヶ月後、7月にも再発で再度RFAを実施、このようなことがいつまで続くのだろうと漠然とした不安がありました。
肝切除/焼灼、TACE、薬物療法、その他の治療歴があるKF様
肝切除/焼灼、TACE、薬物療法、その他の治療歴があるKF様
KF様
70代
同居家族:
治療歴
肝切除 / 焼灼
TACE
薬物療法
その他治療
同居家族 :
発症時年齢:
60代
現在の状態:
抗がん剤で治療中
既往歴  :
腎臓がん、前立腺肥大
※患者さんの名前は仮名です。