膀胱がんの治療
薬物療法:
薬剤のはたらきと副作用
抗がん剤
- はたらき
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抗がん剤は細胞傷害性抗がん剤ともよばれ、がん細胞を直接攻撃してがん細胞の増殖を抑えます。このとき、がん以外の正常細胞も影響を受けます。
膀胱がんでは、複数の抗がん剤を組み合わせた併用療法または1種類の抗がん剤による単剤療法が行われます。
- 筋層非浸潤性膀胱がんに対して
- 抗がん剤は膀胱内注入療法としての使用が検討されます。
- 筋層浸潤性膀胱がんに対して
- 抗がん剤は術前療法または術後療法としての使用が検討されます。
- 転移性膀胱がんに対して
- 抗がん剤は免疫チェックポイント阻害薬との併用や単独で使用されます。
- 主な副作用
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貧血、好中球減少、白血球減少、血小板減少、食欲減退、吐き気、嘔吐、腎機能障害など
がんの治療でよくみられる副作用が起こりやすい時期や症状の伝え方、対策などについて、下記のサイトでご覧いただけます。
免疫チェックポイント阻害薬
- はたらき
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①免疫細胞は体の中のがん細胞を攻撃して体を守っていますが、②がん細胞は「PD-L1」という物質を介して免疫細胞による攻撃を停止させ増殖します。③免疫チェックポイント阻害薬はPD-L1に結合することで攻撃停止命令を阻止し、免疫細胞ががん細胞を再び攻撃できるようにする薬剤です。
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①
- 免疫細胞は、常に体の中に侵入したウイルスや細菌、がん細胞を見つけて攻撃し、体を守っています(免疫機能)
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②
- がん細胞は、細胞表面に「PD-L1」という物質を作ります。PD-L1 は、免疫細胞の表面にあるPD-1と結合し、免疫細胞によるがん細胞への攻撃を停止させる命令を出して逃れ、増殖します
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③
- 免疫チェックポイント阻害薬は、PD-L1に結合することにより、がん細胞への攻撃停止命令を阻止し、免疫細胞ががん細胞を再び攻撃できるようにします
- これとは異なるメカニズムで効果を発揮するものもあります
- 筋層浸潤性膀胱がんに対して
- 術前療法として抗がん剤と免疫チェックポイント阻害薬を使用した後に、術後療法として免疫チェックポイント阻害薬のみを続けて使用する方法があります。
また、術後療法として免疫チェックポイント阻害薬のみを使用する方法もあります。 - 転移性膀胱がんに対して
- 免疫チェックポイント阻害薬は、初回の薬物療法(1次治療)として抗体薬物複合体(ADC)または抗がん剤と併用して使用することができます。
抗がん剤による1次治療で病状の進行がみられない場合、その状態をできるだけ長く保つために、免疫チェックポイント阻害薬を使用することができます(維持療法)。
また、抗がん剤による1次治療で効果がみられず、がんが進行したり再発した場合に、次の治療(2次治療)としても使用することができます。
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- 主な副作用
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甲状腺機能障害(低下/亢進)、下痢、吐き気、疲労、貧血、好中球減少、血小板減少、無力症、食欲減退、関節痛、そう痒症、発疹、高血圧、間質性肺疾患など
免疫チェックポイント阻害薬でよくみられる副作用の症状や対応方法について、下記のサイトでご覧いただけます。
抗体薬物複合体(ADC)
- はたらき
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ADCは特定のタンパク質に結合する機能をもつ抗体に薬物をつなげたものです。
①ADCの抗体部分が膀胱がん細胞上に存在するタンパク質に結合し、②がん細胞内に取り込まれ、抗体部分から薬物が切り離された後、③薬物はがん細胞を攻撃し増殖を抑えます。-
①
- ADCの抗体部分が膀胱がん細胞上のタンパク質と結合します
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②
- ADCががん細胞の内部に取り込まれ、抗体部分から薬物が切り離されます
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③
- 切り離された薬物は、がん細胞の増殖を抑えて、がん細胞を死滅させます
- 転移性膀胱がんに対して
- ADCは1次治療で免疫チェックポイント阻害薬との併用療法として使用することができます。
また、抗がん剤(1次治療)、免疫チェックポイント阻害薬(2次治療)で効果がみられず、がんが進行したり再発した場合に、3次治療として使用することもできます。
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- 主な副作用
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末梢性ニューロパチー(手足のしびれ、筋力の低下)、脱毛症、そう痒症、下痢、吐き気、疲労、体重減少、無力症、食欲減退、味覚不全、発疹、皮膚乾燥、肝機能障害など