発症 / 診断とは?

肝臓がんの発症とは、肝臓の組織内に悪性の腫瘍ができた状態のことですが、発症初期には自覚症状がほとんどありません。
B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスによる慢性肝炎や肝硬変がある人、ウイルス感染を伴わない肝硬変と診断された人は、定期的なエコー検査や腫瘍マーカー検査を受けることが勧められています。肝臓がんが疑われた場合は、CT検査かMRI検査による精密検査を受けたり、病変組織の一部を採取して生検を行ったりして診断を確定します。
国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科長 奥坂 拓志先生

先生からの一言

国立がん研究センター中央病院
肝胆膵内科長 奥坂 拓志 先生
 肝臓がんは近年、治療方法が進歩しており、治療選択肢も増えています。診断を受けると多くの方がショックを受け、不安になると思いますが、なんとかなることがほとんどです。また、肝臓がんは昔から日本で多く発生しており、治療や研究に取り組んでいる医療機関・医師が多く、治療方法も日本独自に開発しているものもあり、診断と治療に関しては日本は世界でもトップレベルであることをお伝えしたいです。近くにはきっと力になってくれる医療者がたくさんいます。決して諦めず、ともに頑張りましょう。

発症 / 診断に関する体験談

※本サイトに掲載している体験談は個々の患者さんのご経験をインタビューした

内容に基づき作成しています。病状や経過、治療への向き合い方などはお一人おひとり異なります。
C型肝炎の治療後に、突然肝細胞がんと診断され落ち込んだ
 人間ドックで肝臓の検査数値に異常があり、精密検査でC型肝炎の診断を受けていました。インターフェロンなどの治療を8年ほど行い、ウイルスが消失したため、その後は半年おきに血液検査、1年ごとにCTで経過観察をしていたところ、血液検査で異常値が出て、CTで肝細胞がんがわかりました。C型肝炎ウイルスの治療をしていた頃にもらったパンフレットには、ウイルスが消失してもがんになること、がんになる前に肝硬変になるプロセスがある」と書いてあったため、肝硬変になるかもしれないと気持ちの準備はありましたが、いきなりがんの診断だったので、とても驚きました。当時調べた肝細胞がんの5年生存率は他のがんと比べても低く、また再発するリスクも高いと知り、大変落ち込みました。同時期に遠方の母が心不全で亡くなったこともあり、諸手続きや法要なども自分がやらなくてはならず、この頃のストレスは大きかったです。
肝切除/焼灼、薬物療法などの治療歴があるG様
肝切除/焼灼、薬物療法などの治療歴があるG様
G様
60代後半
同居家族:
治療歴
肝切除 / 焼灼
薬物療法
同居家族 :
発症時年齢:
60代
現在の状態:
経過観察中
既往歴  :
A型肝炎、十二指腸潰瘍、C型肝炎
※患者さんの名前は仮名です。
C型肝炎の治療後の定期受診で肝細胞がんが見つかった
 40代後半に、会社の検査でC型肝炎ウイルスに感染していることがわかりました。当時症状はなく、数年後に治験に参加したことはありましたが、その後も定年になるまでは、医療機関に通うこともありませんでした。定年を機にインターフェロン治療に取り組み、ウイルスを封じ込めたと思っていたのですが、フォローアップのための年4回の定期受診の際、エコー検査で肝細胞がんが見つかったのです。
 肝炎の患者会を通してC型肝炎ウイルスが消えてもがんになることは聞いてはいたものの、自分としては青天の霹靂でした。あと何年生きられるのだろう?と不安になり、すぐに生存率や余命について調べ数字をみて頭に残り落ち込みました。時間が経過して冷静になってみると、生存率や余命は診断時のステージによって差があることがわかり、私の場合は定期的な受診のおかげで、ごく早期に発見できたのは幸いだったと思い直すことができました。
肝切除/焼灼、その他の治療歴があるRenn様
肝切除/焼灼、その他の治療歴があるRenn様
Renn様
70代後半
同居家族:
妻、子供
治療歴
肝切除 / 焼灼
その他治療
同居家族 :
妻、子供
発症時年齢:
70代
現在の状態:
経過観察中
既往歴  :
尿毒症、うつ病、腹部大動脈瘤、心筋梗塞
※患者さんの名前は仮名です。
トレーニング中に感じた痛みは、肝細胞がんだった
 当時、トレーニング中に痛みが2日経っても治まらず、肋骨骨折を疑いクリニックを受診したのです。触診から痛みの原因は骨折ではないとわかり、エコー検査で肝臓に影が見つかりました。すぐに紹介状を書いてもらい、翌日に総合病院を受診。詳しい検査の結果、痛みの原因は肝臓の腫瘍だったことがわかりました。手術をするまでは良性か悪性かはわかりませんでしたが、手術後に悪性が確定し、肝細胞がんの診断を受けました。
 がんの告知を受けた時は、がんに対する知識もなく、かといって真実を知ることも怖くて自分から調べることはできず、「再発しなければ大丈夫だろう」と自分に言い聞かせるようにしていました。がんと聞いてショックではありましたが、そこからすぐに死を意識することはありませんでした。
肝切除/焼灼、薬物療法、その他の治療歴があるパグ様
肝切除/焼灼、薬物療法、その他の治療歴があるパグ様
パグ様
20代後半
同居家族:
恋人
治療歴
肝切除 / 焼灼
薬物療法
その他治療
同居家族 :
恋人
発症時年齢:
20代
現在の状態:
経過観察中
既往歴  :
なし
※患者さんの名前は仮名です。
B型肝炎からステージⅡの肝細胞がんへ移行
 大学生の頃、献血を機にB型肝炎ウイルスに感染していることがわかりました。10年ほど後に、母も肝炎を発症したことで、出産時の母子感染であることを知りました。感染が判明したときは特に症状もなく、経過観察していけば良いとのことでしたが、大学卒業後2年間、パラグアイでJICA海外協力隊の活動をして帰国した年に肝炎を発症し、2年ほど、炎症を抑えるための注射のためにほぼ毎日通院治療を続けました。炎症が落ち着いた後は、3ヶ月おきに血液検査等で経過を診ていただく日々でした。
 夫の転勤等が落ち着き、産休代替教員として小学校に勤務し始めましたが、その2ヶ月後にクリニックの定期検診の際の肝臓エコーで複数の影が存在したため、総合病院でCTやMRI等で精密検査をしたところ、腫瘍の数からステージⅡの肝細胞がんと診断されました。
 B型肝炎ウイルス感染から肝細胞がんに移行する例はそれほど多くないと聞いていたことや、肝細胞がんは比較的高齢の方の病気だと思っていたこともあり、告知を受けたときは、「まさか」と信じられない気持ちと、「なってしまったのか」との気持ちが交互に訪れ、頭の中が真っ白になるというのはこういうことかと思うくらい何も考えられない状態でした。
 がんと聞くと、どうしても死を意識してしまうこともあり、家族と一緒の時は忘れられても、一人になるといつまで息子と一緒に過ごせるのかなどと不安になってしまい辛いこともありました。
肝切除/焼灼、TACE、その他の治療歴があるかず様
肝切除/焼灼、TACE、その他の治療歴があるかず様
かず様
40代後半
同居家族:
夫、子ども
治療歴
肝切除 / 焼灼
TACE
その他治療
同居家族 :
夫、子ども
発症時年齢:
40代
現在の状態:
経過観察中
既往歴  :
B型肝炎、慢性肝炎、膵腫瘍
※患者さんの名前は仮名です。
ある日突然の腹痛から「肝細胞がんステージⅣ」と診断
 大学生の時に血液検査で「オーストラリア抗原」陽性がわかりました。これは、のちのB型肝炎ウイルスです。オーストラリア抗原キャリアというだけで症状はなく、普通の生活をしていました。  それから18年後、B型肝炎を発症しましたが、インターフェロン治療で抗原の陰性化を達成しました。その後は定期的な経過観察が必要だと言われ、数年は検査を続けていましたが、抗原は陰性のままでしたし、職場の定期健診での肝臓の検査数値も特に悪くなかったため、かかっていた病院の医師が開業したタイミングで経過観察をやめてしまいました。その後は「治った」との認識で生活していました。  ところが50代のある時突然、それまでに感じたことのない腹痛が出現したため、翌日受診したところ、「肝細胞がんステージⅣ」と診断されたのです。あまりにも突然で、当時まだ大学生だった子どもたちのこと、仕事のことなど、考えることが多すぎてまとまらず…、あの状態を頭が真っ白な状態というのでしょうね。
肝切除/焼灼、TACE、薬物療法、その他の治療歴があるねむ様
肝切除/焼灼、TACE、薬物療法、その他の治療歴があるねむ様
ねむ様
60代後半
同居家族:
治療歴
肝切除 / 焼灼
TACE
薬物療法
その他治療
同居家族 :
発症時年齢:
50代
現在の状態:
経過観察中
既往歴  :
B型肝炎
※患者さんの名前は仮名です。
慢性肝炎の定期検査で肝臓がんが発覚
 30年ほど前に行った副鼻腔炎の手術前の血液検査でB型肝炎ウイルスに感染していることがわかりました。当時、肝臓の検査数値が多少悪く、慢性肝炎との診断を受けた2~3年後から、週2回ほど総合病院で注射を打ち、飲み薬を毎日飲んでいました。その頃から、肝細胞がんになる可能性があるから治療を続けておいた方が良い、と言われていたので、定期的に通院しながら半年から1年に1度はエコー、CT、MRI等の検査も受け経過観察を続けていました。体調は良好でしたから、がんになるとは全く思っていませんでした。ところが定期検査で肝臓がんが見つかったのです。
 ただ、見つかったのは肝臓の端のほう、皮膚に近い場所に1つの腫瘍だけで、手術で簡単に切除できると言われたこともあり、あまりショックを感じることはありませんでした。早期に発見できたので、医学も進歩しているし切除して再発しなければ大丈夫だろうと考えていたのです。
肝切除/焼灼、TACE、薬物療法などの治療歴があるからくり様
肝切除/焼灼、TACE、薬物療法などの治療歴があるからくり様
からくり様
60代後半
同居家族:
妻、猫
治療歴
肝切除 / 焼灼
TACE
薬物療法
同居家族 :
妻、猫
発症時年齢:
60代
現在の状態:
抗がん剤治療中
既往歴  :
2型糖尿病、慢性肝炎、B型肝炎
※患者さんの名前は仮名です。
ステージⅡの肝細胞がんの告知を受けたショックでパニックに
 職場の人間ドックの血液検査で肝臓の数値に異常を指摘され、かかりつけのクリニックで受けた超音波エコー検査でも影が見つかったため、大学病院で再検査を受けました。それまで毎年受けていた人間ドックでは異常はありませんでしたが、今から思うと疲れやすくなった、食欲が低下していたなどの傾向はあったように思います。大学病院ではCT、MRI、腫瘍マーカー等の検査を行い、1週間後の結果を待ちましたが、「何か重大な病気だったらどうしよう」と思うと落ち着かず、ふわふわした気持ちで過ごしていました。子どもが「そんなに心配しなくても大丈夫だよ」と言ってくれたのが心の支えでした。
 結果を一人で聞くのは不安で、夫に付き添ってもらい、ステージⅡの肝細胞がんの告知を受けました。私は告知を受けたショックでパニックになってしまい、先生の話が頭に入りませんでした。先生は治療についても、タブレットなどを使いながら分かりやすいよう説明してくれましたが、私は前向きな気持ちになれず、同行してくれた夫にしっかり聞いてもらえたのは助かりました。2つできていた腫瘍のうち1つが大きいため、すぐに治療を開始した方が良いと言われ、次回の診察までに方針を決めることになりました。
TACE、薬物療法、その他の治療歴があるKana様
TACE、薬物療法、その他の治療歴があるKana様
Kana様
40代
同居家族:
夫、子ども2人
治療歴
TACE
薬物療法
その他治療
同居家族 :
夫、子ども2人
発症時年齢:
40代
現在の状態:
抗がん剤治療中
既往歴  :
特になし
※患者さんの名前は仮名です。
自宅での昏倒から救急搬送され肝細胞がんステージⅢと診断
 自宅で昏倒し、救急車で搬送されたことを機に肝細胞がんがわかりました。それまでは肝炎の既往はありませんでしたが、かかりつけ医で定期的にしていた血液検査から、肝臓の数値が思わしくないことはわかっており、薬剤を処方してもらっていました。大事に至る状態ではなかったこともあり、ずっと経過観察をしていたのですが、前年の暮れから息子夫婦が一時的に同居したこと等で、多少ストレスが溜まっていたかもしれません。
 搬送中は意識を失っており、搬送された救急病院では手に負えないとのことで、近くの大学病院に移送されました。目が覚めると病床に家族が駆けつけてきていました。とりあえず応急処置をしていただき、そのまま入院して詳細に検査をしたところ、肝細胞がんステージⅢであることがわかりました。身近にがん患者がいなかったこともあり、初めはピンときませんでした。がんは不治の病とのイメージだったので、先生に余命を尋ねたのですが、具体的な数値をきいて、ショックを受けました。
肝切除/焼灼、TACE、薬物療法、その他の治療歴があるKF様
肝切除/焼灼、TACE、薬物療法、その他の治療歴があるKF様
KF様
70代
同居家族:
治療歴
肝切除 / 焼灼
TACE
薬物療法
その他治療
同居家族 :
発症時年齢:
60代
現在の状態:
抗がん剤で治療中
既往歴  :
腎臓がん、前立腺肥大
※患者さんの名前は仮名です。
腹膜内悪性腫瘍がわかったとき医師に「勝ちます」と言った
 私は30代から毎年人間ドックを受けていたのですが、50代の頃から肝臓の腫瘍マーカーであるAFPの高値を指摘されていました。CT上では肝臓に異常はなかったため、経過を見ていましたが肝臓ではなく腎細胞がんがわかり、右腎臓を切除しています。術後のフォローアップ検査でAFPの異常高値がみられたため、消化器内科を紹介され、そちらで経過観察を続けていたところ、50代で腹膜内悪性腫瘍がわかりました。当時はこれといった症状はなく「原発不明がん」との診断で、術後は抗がん剤治療を開始しました。のちに、これが肝外発育性肝細胞がんに起因するものだと判明しました。
 50代で腎細胞がんとなり、右腎を切除してしまったことで大きな喪失感に襲われていましたが、翌年に腹膜内悪性腫瘍がわかったときは、なぜか消化器内科の先生に「勝ちます」と言ったことを覚えています。振り返ってみると、「生きたい」との思いがそう言わせたのかもしれません。
肝切除/焼灼、薬物療法などの治療歴があるMrs.K様
肝切除/焼灼、薬物療法などの治療歴があるMrs.K様
Mrs.K様
70代
同居家族:
治療歴
肝切除 / 焼灼
薬物療法
同居家族 :
発症時年齢:
50代
現在の状態:
抗がん剤治療中
既往歴  :
腎細胞がん、膀胱がん
※患者さんの名前は仮名です。