胃がん手術後の栄養管理とは?
栄養の支援体制
胃の切除手術を受けたあとに抗がん剤治療(化学療法)を行う場合、胃が小さくなったことや抗がん剤の副作用による食欲不振が重なると、栄養状態の悪化や体重減少、筋力の低下が起こりやすくなります。このような課題に対しては、医師、看護師、薬剤師、栄養士など多職種のチームがそれぞれの専門性を活かし、患者さんが安心して治療を続けられるようサポートします。
実際には医療機関によってサポート体制は異なりますので、医師や栄養士、メディカルスタッフが個々の患者さんに合った栄養指導をしてくれるでしょう。
入院退院直後~手術後3ヵ月:
退院後は、一度にたくさん食べようとせず、1日のうちで何度かに分けて、ひと口ずつしっかり噛みながら、時間をかけて食事をとることが勧められています1)。また、消化管の負担を減らすために、消化のよい食べ物がお勧めです。
胃がん手術後の患者さんの1日に必要なエネルギー量は以下の計算式で求められます2)。
1日に必要なエネルギー量(kcal)=標準体重(kg)×25~30kcal
(標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22)。
手術後6ヵ月~1年3):
手術から半年を過ぎると、少しずつ体力が戻ってきます。この頃になったら、朝・昼・夕の1日3回の食事パターンに挑戦してみましょう。また、青魚に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)といった、体によい栄養素を意識して摂るのもおすすめです。あまり食べられない場合は、高カロリーのものがおすすめです。
手術後1年~2年:
手術後の新しい身体にも慣れてきて、食事も摂れるようになってきます。このタイミングで、体重を手術前の状態へ戻していくことを目指しましょう。どうしても食欲がわかないときは、栄養補助食品を試すのもよいでしょう3)。
薬やサプリメントの使用は医師に相談する
手術後のさまざまな症状に対して、市販の薬を使いたくなることがあるかもしれません。しかし、医療機関で処方された薬との飲み合わせによっては、薬の効果を妨げたり、副作用を引き起こしたりすることがあります。必ず担当医に相談し、自己判断での服用は避けましょう。
サプリメントを使いたいときも、担当医や管理栄養士に相談してください。症状に応じて適切なものを案内してもらえます。
胃がん手術後の運動管理は?
「体重が減る」と聞くと、どうしても食べることだけに目が向きがちですが、筋肉が減ることで体重が落ちることもあります3)。そのため、筋肉や筋力の維持・増強も重要です。
胃を切除し、術後補助療法を受けている患者さんにとっても、適切な運動は体調を整えるうえでも必要ですが、最初からきつい運動は禁物です。
退院から間もないときは生活の中で体を動かす4)
お勧めなのは、生活の中で体を動かすことです。
- 掃除をする(動きまわる)
- 買い物に出かける
- 歩くときは階段を上り下りする
- 車を駐車するときは、あえて目的地から遠い場所に停めて歩くようにする
メディカルスタッフから指導があれば、筋力トレーニングなども始められます。
手術後3ヵ月以降は積極的な運動も可能
重いものを持てるようになる時期です。ウォーキングや筋力トレーニングの負荷を強めていくことができます。
医師や理学療法士のサポートを得て、適切な運動をして、生活水準を高めていきましょう。
介護が必要になった場合に、自宅や地域ではどのようなサポートを受けられる?
手術の前後は入院が必要になりますが、抗がん剤の投与は通院や通院と短期間の入院を組み合わせて行うことが多く、胃がんの治療中は、大部分の時間を自宅で過ごすことになります。
「訪問診療」や「訪問看護」を利用すれば、痛みのケアなどを在宅で受けることができます。また、「訪問介護」を利用すると生活面でのサポートも受けられるため、知っておくと安心です。
介護保険制度を利用して介護の負担を減らす5)
介護保険制度は、65歳以上で要介護・要支援の認定を受けた方が対象ですが、40歳以上で「がん末期」と診断された場合にも利用することができます。
利用できるサービスは、次のようなものがあります。
- 訪問看護
- 訪問介護
- 福祉用具のレンタル
- 住宅改修
など
これらのサービスを上手に取り入れることで、自宅での生活の質が高まり、ご家族の介護負担も軽減されます。
在宅医療は専門家チームが支える
自宅で療養する場合も、病院と同じように多くの専門家がチームで患者さんとその家族を支えます。
- 訪問診療医
- 訪問看護師
- ケアマネジャー(介護支援専門員)
など
中でも、「ケアマネジャー」は、初めて聞く方も多いかもしれません6)。
自宅で療養する際は、さまざまな介護サービスを組み合わせて利用します。ケアマネジャーは、患者さんの状態に合わせてケアプランを作成し、各サービス事業者や施設、市町村との連絡調整をサポートしてくれる心強い存在です。
胃がん手術後のメンタル面で気をつけることは?
以下の図は、がん患者さんにストレスがかかったとき、心が揺れ動くことで日常生活への適応がどのように変化するかを示しています。
図:がん情報サービス 「心のケア がんと心」 図3:ストレスへの心の反応より作図7)
胃がんに限らず、がんに罹患した方は、多大なストレスを抱えて生活することになります。がんサバイバーや、がん治療を経験した患者さんは、再発への恐怖、苦痛、不安、抑うつなどの精神症状発症のリスクが高まり、診断後も長年にわたり精神症状が持続する可能性があります4)。手術が終わって不安な気持ちは少し和らいでも、気分の落ち込みはその後も残りやすいことがわかっています8)。そのため、手術後も心のケアをしっかり続けることがとても大切だと考えられています。
不安や抑うつ症状がないか、以下でセルフチェックをしてみてください4)。
- 過去2週間、物事への興味や楽しみがほとんどなく、半日以上悩まされましたか?
はい/いいえ - 過去2週間、気分が落ち込んだり、憂鬱になったり、絶望感に襲われたり、半日以上悩まされましたか?
はい/いいえ - ストレス、心配、怒り、再発への恐怖、がん治療の影響による苦痛などが、生活に支障をきたしましたか?
はい/いいえ
「はい」と答える項目が一つ以上ある方は、心のケアが必要かもしれません。医療機関で相談して、がん患者さんの心に詳しいメディカルスタッフを紹介していただくとよいかもしれません。
- <参考文献>
- 国立がん研究センター がん情報サービス 「胃がん 療養」
https://ganjoho.jp/public/cancer/stomach/follow_up.html (2026年6月時点) - 青木照明 監修:胃がん手術後の安心ごはん, 女子栄養大学出版部, 2020, p18
- 比企直樹: 毎日おいしく食べる! 胃を切った人のための食事, ナツメ社, 2013, p24, 28, 42, 43
- National Comprehensive Cancer Network(NCCN): NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines®) Survivorship. Version 2.2025.
- 国立がん研究センター がん情報サービス「介護保険」
https://ganjoho.jp/public/institution/backup/elderly_care_insurance.html(2026年6月時点) - 厚生労働省「介護支援専門員(ケアマネジャー)」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000114687.pdf(2026年6月時点) - 国立がん研究センター がん情報サービス 「心のケア がんと心」
https://ganjoho.jp/public/support/mental_care/mc01.html(2026年6月時点) - 足立真一ほか: 癌と化学療法, 52(2): 143-145, 2025