胃がん後に職場復帰をお考えの方へ
がん治療の進歩もあり、がん患者さんでも職場に復帰して活躍されている方が増えています。胃がん手術体験者では、2001年の段階であっても職場復帰率が60~75%以上とされています1,2)。職場復帰は、社会の一員に戻れた喜びに加え、収入源が確保でき精神的に落ち着くきっかけにもなります。
仕事に戻りたいと思ったときに、留意するポイントをまとめました。
胃がんと診断されたときの“びっくり離職”、なぜダメ?
がんと診断された患者さんが、驚いて「治療のために会社を辞めなければ」などと考え、実際に退社してしまう“びっくり離職”が問題になったことがあります3)。がん患者さんのための支援制度の中には、会社や組織に所属していることで使用可能になる制度(例:傷病手当金、籍のある会社独自の制度)がさまざまあり、退職してしまうと、それらの制度が使えなくなってしまいます。「がんになったから仕事を辞めよう」と思っているのであれば、まずは冷静になり、休職など別の選択肢があるか考えてみましょう。
胃がん治療後に職場復帰できるタイミングはいつ?
職場に戻るタイミングは「どのような手術方法だったのか」「手術後の薬物療法は問題なくできているか」「どのような職種・労働内容か」などによって変わってきますので、手術後数週間から、数ヵ月程度と個人差が大きくなります。無理をせず、段階的に再開していきましょう。
復帰タイムライン4)
- ◉退院(手術から10日~数週間程度)
- この時期は、まだ手術の傷が痛んだり、つっぱるような感じがしたりします。
- ◉自宅療養(退院から数日~数週間)
- まずは自宅でゆったり過ごし、少しずつ体を慣らしていきましょう。家事や買い物など、日常生活の中で体を動かすことが体力回復の第一歩です。体調が安定してきたら、少しずつ外出の回数を増やしていきましょう。
- ◉職場復帰の準備
- 本格的に職場復帰する前に、リハビリを兼ねて職場の近くまで行ってみるなど、今の体力で通勤ができそうか試してみましょう。職場の上司や同僚には、手術後の経過とともに「食事を数回に分けてとる必要がある」といった具体的な事情などを伝え、あらかじめ理解と協力を求めておくと、復帰後の不安が少なくなります。担当医に診断書を書いてもらうなどの手続きも進めましょう。
- ◉職場復帰(退院後数週間~数ヵ月)
- 最初は軽い作業からスタートし、様子を見ながら少しずつ通常の仕事内容に戻していきましょう。デスクワークや事務など、体に大きな負担がかからない仕事であれば、比較的早い時期に復帰できますが、お腹にグッと力が入るような作業や重いものを持つ仕事は復帰に時間がかかります。
胃がん手術後の身体と心を考えた職場復帰プランニングとは?
手術後の身体の変化を理解しよう
胃を切除した場合、貯留・消化・吸収の機能が変化します。加えて、胃の切除による合併症(ダンピング症候群など)や栄養障害が出現することもあり、手術前と同じように身体が動かないことがあります。
手術後の心の変化を理解しよう2)
胃がんの手術を経験した方の多くは、手術が終わったばかりの早い時期から、職場復帰への不安を抱えています。「以前と同じように働けるのか」「職場復帰後の体調は大丈夫か」「職場で食事するとき、どうしよう...」といった不安を持たれる方も多くいます。
職場復帰のプランニング5)
担当医へ職場復帰をしたい旨を相談し、問題ないと判断されたら、職場復帰のための準備を始めましょう。職場があなたにとって必要な支援を行うためには、あなたから職場へ情報を提供する必要があります。職場で定められた様式が用意されている場合もあるので、人事担当者に必要な手続きについて確認しましょう。
会社に伝えるべき主な情報
- ①
-
今の体調と治療の状況
- 現在の症状
- 今後、入院や通院が必要かどうか、治療にかかる期間
- 治療の内容とスケジュール
- 通勤や仕事に影響しそうな症状や副作用があるかどうか
- ②
- 仕事を続けられるかどうかについて、医師の意見
- ③
- 働き方や働く上での配慮について、医師の意見(避けたほうがいい作業、時間外労働の可否、出張の可否など)
- ④
- その他、配慮してほしいことについて、医師の意見(通院時間の確保や休憩場所の確保など)
具体的な手順
- 職場で決まった書類があるか確認し、用意する
- ご自分の仕事内容を、担当医に詳しく伝える
- 担当医に、上記①~④の情報を書類に記入してもらう
- 職場に書類を提出する
がん相談支援センターの活用を検討するのがおすすめ
まずは、ご自身の希望(職場復帰)・治療・身体・心の状況について整理しましょう。「がん相談支援センター」でも、職場復帰についての相談が可能です。
がんのことに詳しく、職場復帰にも関わった経験のあるスタッフが相談に乗りながら、ご自身の状況を一緒に整理してくれて、次に何をすべきなのかアドバイスしてくれます。必要に応じて医師の意見書の手配もしてくれます。一部の「がん相談支援センター」では社会保険労務士と連携しており、職場とのやり取りに関してアドバイスをもらえます。
支援・相談 がんになったら、どこに相談すればいい?がん相談支援センターの活用法
- <参考文献>
- 篠田憲幸:日本外科学会誌 臨時増刊,102: 637, 2001
- 山脇京子ほか:日本がん看護学会誌, 20(1): 11-18, 2006
- 厚生労働省 治療と仕事の両立支援コラム 「まだまだ働きたい自分が「もし病気を罹患したら」」https://chiryoutoshigoto.mhlw.go.jp/column/column_04.html (2026年6月時点)
- 佐野 武 監修:胃がん手術後の生活読本, 主婦と生活社, 2013, p.34-35
- 厚生労働省 「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」(令和6年3月版)