がんの検査について
知ろう

がんの検査には種類があり、がんかどうかを判別するための検査、がんの種類や広がりを調べるための検査、薬の効果を予測するための検査など、それぞれ目的があります。先生にいわれるがまま検査を受けたものの、一体何のための検査だったんだろう…と後から疑問に思うことがあるかもしれません。ここでは、がんの診断から治療においておこなわれる検査が、何を目的に、どんな流れでおこなわれるのかを解説します。検査について大まかにでも理解しておくと、まったく知らない状態に比べて不安が軽減しますし、落ち着いて検査を受けることができるでしょう。

がんの検査をおこなう時期と目的

治療の流れに沿って、それぞれの検査をおこなう時期と目的を見ていきましょう。がんの検査は1つだけ検査をおこなうこともあれば、組み合わせることもあります。

症状の出現・検診での指摘

受診

がんの診断

画像
検査

病理
検査

腫瘍
マーカー

補助的に
実施

主な目的

がんであるかどうかの診断やがんの種類の決定

病期(ステージ)の決定

画像
検査

主な目的

がんの進行度の診断

薬物療法の効果予測

バイオ
マーカー

主な目的

薬剤選択のため、効果があるかどうかや副作用の発現の予測

治療

病理
検査

主な目的

手術療法で切除した検体を用いた
・病理学的な病期分類の実施
・がん細胞が残っていないかの判定

効果判定

画像
検査

病理
検査

腫瘍
マーカー

主な目的

腫瘍の大きさの変化などによる、
治療に対する反応性の判定

経過観察

画像
検査

腫瘍
マーカー

主な目的

再発の早期発見

画像検査

X線検査(レントゲン検査)

健康診断や人間ドックなどでもおなじみの検査です。がんがあるかどうか、ある場合はその形を調べることができます。身体の中の組織はそれぞれX線の通りやすさが異なるため、身体にX線を一方向からあてると通過したX線の差が濃淡として画像に映し出されます。消化管や尿路系を調べるときは、よりわかりやすくするために造影剤を使用することもあります。

CT検査

X線を一方向からあてるX線検査と異なり、身体の周囲360度方向からX線をあて、その吸収率の違いから身体の断面を画像化する検査です。そのため、X線検査より詳しくがんの有無や広がり、他の臓器への転移を調べることができます。CT検査では、ベッドの上で仰向けになった状態でトンネル状の装置に入ります。

MRI検査

FMラジオなどで用いられている周波数の電波を身体にあて、身体の内部の断面を画像化する検査です。がんの有無や広がり、他の臓器への転移を調べることができます。CT検査同様に身体の断面を画像化する検査ですが、MRI検査はさまざまな方向から断面を調べることができるため、より多くの情報を得ることができます。そのため、CT検査では正常な組織との区別がつきにくい、脳や乳腺、肝臓、子宮、卵巣、前立腺、骨軟部などに生じたがんの診断に役立ちます。ベッドで仰向けになった状態でトンネル状の装置に入り検査するのですが、検査の際に生じる大きな音を軽減するために、検査中はヘッドホンや耳栓をすることもあります。

PET検査(FDG-PET検査)

がん細胞が正常な細胞に比べてブドウ糖を多く取り込む、という性質を利用した検査です。静脈からFDGという放射性フッ素を付けたブドウ糖を注射し、がん細胞に取り込まれたブドウ糖の分布を画像化することで、ブドウ糖を取り込んで活発に活動しているがん細胞の状態を調べることができます。全身を一度に調べることができることも特徴です。
また、CT検査やMRI検査と組み合わせておこなわれることもあり、より高い精度でがんの有無や広がり、他の臓器への転移を調べることができます。
デメリットとしては、がんと関係なくブドウ糖が集まりやすい脳や心臓、消化管などの組織、炎症を起こしている部位などの診断が難しいことがあげられます。

超音波検査(エコー検査)

健康診断や人間ドックなどで、乳房や腹部の超音波検査がよくおこなわれています。超音波を伝わりやすくするための検査用ゼリーを身体の表面に塗って、超音波プローブとよばれる超音波の出る器械をあてます。そして、体内の臓器からはね返ってくる超音波を画像として映し出すことで、がんのある場所や形・大きさ、周辺の臓器との関係などを調べることができます。超音波検査はさまざまな臓器を調べることができますが、骨や厚い脂肪などは超音波が通りにくいため、骨に囲まれている肺や脳などにできたがんでは検査することができません。

病理検査

身体から採取した細胞や組織(細胞のあつまりのこと)を顕微鏡で観察し、腫瘍が良性なのか悪性なのか、悪性の場合はどの程度悪性なのかなどを詳しく調べます。病理検査に基づいておこなわれる診断を病理診断といい、専門の病理医がおこないます。
細胞を調べる病理検査は「細胞診(さいぼうしん)」といい、病変から自然にはがれた細胞や病変の表面をこすることによって採取した細胞を検査する「剝離(はくり)細胞診」と、病巣部に細い注射針を刺して吸引・採取した細胞を検査する「穿刺吸引(せんしきゅういん)細胞診」があります。
組織を調べる病理検査は「組織診(そしきしん)」といい、おこなうタイミングによって次の3つにわけられます。

  • 生検組織診:治療開始前に診断の確定や治療方針を決定するために、採取した病変を検査することです。
  • 術中組織診:手術中に治療方針を決定するために、採取した検体を検査することです。
  • 手術材料を用いた組織診:手術後に診断や病期分類の確定、手術でどのくらい根治が目指せるか、術後補助療法をおこなう必要があるかなどを検討するために、手術で摘出した臓器や組織を検査することです。

腫瘍マーカー検査

「腫瘍マーカー検査」は、がんかどうかの診断や治療効果が出ているか、再発・転移がないかを確認するための補助的な検査です。血液や尿を使って調べることができます。人間ドックなどでもがんの早期発見のためにおこなわれているので、耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。腫瘍マーカーは、がん細胞やがん細胞に反応した細胞によって特徴的に作られるタンパク質などのことをいいます。一般的に、腫瘍マーカーはがん細胞の数が多くなると値が高くなるのですが、がんとは関係ない要素で値が高くなることや、反対にがんがあっても値が高くならないこともあります。そのため、腫瘍マーカーだけでがんの有無がわかるわけではなく、他の画像検査などの結果もあわせて医師が判断します。また、現時点ではすべてのがんで腫瘍マーカーが見つかっているわけではありません。

見つかっている主な腫瘍マーカー

見つかっている主な腫瘍マーカーき

バイオマーカー検査

血液や尿、組織に含まれるタンパク質や遺伝子などの体内の物質を調べることによってわかる客観的な指標(目印)を「バイオマーカー」といいます。広い意味では腫瘍マーカーもバイオマーカーに含まれますが、ここでは治療方針を決めるためにおこなわれているバイオマーカー検査について説明します。バイオマーカー検査では、これからおこなう予定の薬物療法で効果が得られるかどうか、特定の副作用が出やすい体質かどうかを調べることができるため、その人に合った最適な治療を選択することにつながります。

治療効果が得られるかどうか調べるためのバイオマーカー

治療効果が得られるかどうかを調べるためのバイオマーカー検査は、病理検査の際に採取した細胞や組織を用いておこなわれます。

がんの種類 主なバイオマーカー
肺がん EGFR、ALK、BRAF、ROS1、PD-L1、MET
乳がん HER2、BRCA1/2、PD-L1
卵巣がん BRCA1/2
胃がん HER2
大腸がん RAS、BRAF
消化管間質腫瘍(GIST) KIT
胆道がん EGFR
前立腺がん BRCA1/2
膵がん BRCA1/2
頭頸部がん PD-L1
悪性黒色腫 BRAF、PD-L1
白血病 BCR-ABL、FLT3

副作用が出やすい体質かどうかを調べるためのバイオマーカー

副作用が出やすい体質かどうかを調べるためのバイオマーカー検査では、薬剤の投与前に血液検査で遺伝子を分析します。トポイソメラーゼ阻害薬の一種を投与する際のバイオマーカーにはUGT1A1、代謝拮抗薬の一種を投与する際のバイオマーカーにはNUDT15があります。

がん遺伝子パネル検査とは?

がん遺伝子パネル検査(がんゲノムプロファイリング検査)はがん組織や血液を使って、数十から数百の遺伝子を同時に調べることをいいます。その一部が保険診療として、標準治療がないまたは終了したなどの条件を満たす患者さんに対し行われます。検査の結果、遺伝子変異が見つかった場合には治療できることがあります。

がんの検査についてもっと詳しく

もっと詳しく知りたい場合や上記以外に知りたい検査がある場合には、下記のサイトをご参照ください。
国立がん研究センター がん情報サービス:がんの検査について