がん治療の副作用対策とセルフケア:
貧血

貧血はがん患者さんによくみられる副作用です。日常のちょっとしためまいや、吐き気として症状が現れることもあります。ここでは、貧血の対策とセルフケアについてご紹介します。

貧血の症状

採血して初めて貧血だとわかるなど、無症状のことも多いです。めまいや倦怠感(だるさ)、疲れやすいなどの症状、進行すると耳鳴り、頭痛、動悸、息切れなどが起こることがあります。日常生活にどのような支障が出ているのか、症状がなかったときと比べて話すことで症状の強さを上手に伝えることができます。

伝え方の例:

  • 今まで階段の上り下りが普通にできていたのに、一呼吸置かないと動けなくなった。
  • 起き上がるときにふらっとしたり、めまいが出たりして動けるようになるまでに時間がかかる。
  • 家事をするのに休憩をはさまないとできなくなった。
  • 横になっている時間が前より長くなった。

がん治療中に
貧血が起こるしくみ

貧血が起こる原因はさまざまです。がんそのものや、がんができた部位からの出血、抗がん剤治療や放射線治療で骨髄が障害され、赤血球を作る働きが低下することによっても起こります。また、胃を切除した方で赤血球を作るのに必要なビタミンB12や鉄が吸収されにくくなったり、食事量の低下により栄養不足になったりすることで貧血が起こることもあります。がん治療を受けている多くの方にみられる副作用です。

  • 例えば、3週間間隔で投与される点滴の抗がん剤(もしくは経口抗がん剤)開始後は、投与後10日前後から2週間過ぎた頃まで続き、3週間目頃から検査値は回復することが多いといわれています。投与回数を重ねることで症状が強くなる場合があります。
  • 放射線治療の場合は、血液を作る働きを持つ骨髄が多い、骨盤の骨に照射した場合に起こりやすくなります。

貧血の予防と対策

貧血の予防と対策
  • つらいときは無理せずに身体を休めることが大切です。
  • めまいや立ちくらみは急に動くことで起こりやすくなるため、なるべくゆっくり動くようにしましょう。
  • なかなか検査値が回復せず症状が進んでいる場合は、輸血をおこないます。
  • 胃の切除後は、鉄やビタミンB12の不足による貧血が起こりやすいため、状況に応じて鉄やビタミンB12の補充をおこないます。鉄剤は食事や他の薬との飲み合わせに注意が必要です。

貧血があるときの食事の工夫

赤血球をきちんと作るために、まずは栄養状態をよくすることが大切です。糖質(ご飯、パン、麺)、タンパク質・脂質(肉、魚、卵、大豆製品、乳製品)、ビタミン・ミネラル(野菜、果物)を十分に摂ることができる、栄養バランスのよい食事を心がけましょう。その上で、鉄分の豊富な食品をとりましょう。

* 緑茶、紅茶、コーヒーなどタンニンを多く含む飲料は鉄分の吸収を妨げるため、食事中、食事前後は避けましょう。

貧血があるときの食事の工夫

おすすめ食品・メニュー

  • 豚レバー、牛レバー、牛ひれ肉、かつお、まぐろ赤身、納豆、木綿豆腐、小松菜など

→ 鉄分が豊富。肉や魚介類などの動物性食品に含まれている鉄分は、植物性食品に含まれているものよりも吸収率が高いといわれています。

  • アセロラジュース、レモン、ブロッコリー、パプリカなど

→ ビタミンCが豊富。植物性食品に含まれている鉄分は、ビタミンCを一緒に摂ることで吸収率をアップさせることができます。

めまいや倦怠感(だるさ)、
疲れやすい、は
貧血症状かもしれません

「なんとなくつらい」の原因は副作用かもしれません。「こんなことで相談していいのかな」と考えずに主治医に相談しましょう。

こんなときは相談を:

  • めまいがある、だるい、疲れやすいなどの症状がある。
  • 血尿、血便(真っ赤な色の便や黒っぽい色の便)がある。