肺がんの症状
肺がんは早期発見が難しいといわれているがんの1つです。それは、肺がんに特有の症状がなく進行するまで気付きにくいことが原因です。このページでは、病状の進行によって変化する肺がんの症状についてまとめました。気になる症状がある場合は医療機関を受診しましょう。そして、早期発見のためには、定期的に健康診断や人間ドックを受けること、40歳以上の方は年に1回の肺がん検診を受けることが大切です。
肺がんとは?
肺は左右に1つずつあり、左肺は2つ、右肺は3つの肺葉に分かれています。肺の働きは、呼吸により身体に酸素を取り込み、不要な二酸化炭素を排出することです。口や鼻から吸った空気の通り道である気管は、気管支として左右に分かれ、さらに枝分かれを繰り返し、左右の肺の中で木の枝のように広がっています。その先端付近には肺胞という小さな袋がたくさんついており、そこで酸素と二酸化炭素の交換がおこなわれています。
肺がんは、何らかの原因により気管支や肺胞の細胞ががん化したものです。2019年の部位別がん罹患数では2位、2021年の部位別がん死亡数では1位であり、特に40代以降の男性に多くみられるがんです。
肺がんの症状
肺がんの症状はさまざまで、肺の内部にがんがとどまっている早期の段階での症状、がんが周囲の臓器へ浸潤、圧迫したことによる症状、離れた臓器に転移したことによる症状など、病状の進行によって変化していきます。他の呼吸器疾患でも同じような症状が出ることもあり、「この症状があれば必ず肺がん」というような特有の症状はありません。反対に症状が全くないまま進行し、定期的に受けている健康診断や他の病気の検査時に見つかることもあります。
主な初期症状
がんが肺のどこに生じているかにより、症状は異なります。肺の中心部にがんがある場合は、咳や痰、発熱などの風邪のような症状が出ますが、肺の端のほうにある場合は、早期では無症状であることが多いとされています。
主な症状
- 咳
- 痰
- 血の混ざった咳や痰
- 呼吸をするときにヒューヒュー、ゼーゼー音がする
- 息切れ、息苦しさ
- 胸の痛み
- 発熱
など
進行し始めてからの症状
肺に生じたがんが大きくなり、周囲の臓器へ浸潤したり、周囲の臓器を圧迫したりすることにより症状が起こります。浸潤、圧迫する臓器により、起こりうる症状はさまざまです。
主な症状
- 食道を圧迫している場合:食べ物を飲み込みづらい、飲み込めない
- のどや声帯の神経を圧迫している場合:声のかすれ
- 腕の神経への浸潤、圧迫がある場合:腕の痛みやしびれ
- 頸部(首)の神経への浸潤、圧迫がある場合:まぶたが下がってくる、瞳孔の収縮
- 上大静脈(上半身の血液を集めて心臓に流れ込む静脈)の圧迫がある場合:顔、首、腕のむくみ、上半身の血管の膨れ上がり
- 胸膜(肺を覆っている薄い膜)、胸壁(皮膚から胸膜までの部分)への浸潤がある場合:胸の痛み、圧迫感、咳、動いたときの息苦しさ
- 心膜(心臓を覆っている薄い膜)への浸潤がある場合:動悸、息切れ、咳、胸の痛み、むくみ
など
転移してしまってからの症状
肺は全身から血液が集まる臓器であり、リンパ管も張りめぐらされているため、肺がんは他の臓器に転移しやすいと考えられています。転移しやすい臓器は、反対側の肺、骨、脳、肝臓、副腎などです。転移による症状は、転移した場所とその大きさによって異なります。がんが小さいうちは症状がないことがほとんどです。
主な症状
- 骨に転移した場合:肩や背中の痛み、骨折、手足の麻痺(背骨に転移した場合)
- 脳に転移した場合:頭痛、吐き気、ふらつき、意識がぼんやりする
- 肝臓に転移した場合:全身のだるさ、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
- 副腎に転移した場合:顔のむくみ、肥満、吐き気、腹痛
肺がんが見つかるきっかけとなる症状
肺がんは、特に症状がないまま、定期的に受けている健康診断や人間ドック、他の病気の検査で偶然見つかることがあります。また、呼吸器の症状がなく、転移によるさまざまな症状、例えば肩や背中の痛み、頭痛、ふらつき、麻痺顔のむくみなどがきっかけで見つかることもあります。最も多い症状は、咳や痰です。風邪をひいていないのに咳や痰が2週間以上長引く、咳や痰に血が混ざっている、発熱が5日以上続くなどの症状がある場合は医療機関の受診をおすすめします。
肺がんは早期発見が重要
肺がんは無症状の場合もあり、診断時には病状が進行していることも少なくありません。肺がんは年齢が上がるに従い罹患率が増えるため、特に40歳以上の方は1年に1回肺がん検診を受けましょう。喫煙している人(喫煙したことがある人)や家族が肺がんになったことがある人、アスベストなどの影響を受けやすい職業や環境にいる人、肺疾患(慢性閉塞性肺疾患、間質性肺炎、肺がんなど)にかかったことがある人などは肺がんになるリスクが高まるといわれています。多くの市区町村では一部の自己負担金で検診を受けることができます。検診では、問診、胸部X線(レントゲン)検査、喀痰細胞診(痰の中にがん細胞がないか調べる検査)※などにより、肺がんの疑いがあるかどうかを調べることができます。
- 50歳以上かつ、喫煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が600以上の人のみ実施
肺がんについて、詳しくは肺がん(症状・治療法)のページもご覧ください。
- 参考
-
- 国立がん研究センター がん情報サービス:肺がんについて
- 国立がん研究センター がん情報サービス:肺がん検診について
- 公益財団法人 がん研究振興財団:がんの統計 2023(令和5年3月発行)
- 医療情報科学研究所 編:がんがみえる. メディックメディア, 2022.
- 日本肺癌学会 編:患者さんのための肺がんガイドブック2021年版. 金原出版株式会社, 2021.
- 厚生労働省:がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(令和3年10月1日一部改正)
- 監修
- 日本医科大学 呼吸器内科 臨床教授 笠原 寿郎 先生
- 掲載月
- 2024年4月