がんの治療法(三大療法)
がんの三大療法とは
固形がん

- 概要
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がんを手術で取り除きます。
- 長所
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完全に切除できれば、からだのなかからがんを除き、根治(がんが完全に治ること)を目指すことができます。
- 短所
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がんや周辺組織を取り除くことによって臓器の機能が低下したり、後遺症が残ることがあります。


※お薬により、投与方法が異なります。
細胞障害性抗がん薬
- 概要
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がん細胞が増えないよう細胞の分裂を抑えます。
手術と放射線治療の効果を高める目的でおこなうこともあります。 - 長所
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全身のがん細胞すべてが標的となるため、転移があるがんにも適しています。
- 短所
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正常な細胞にも作用してしまうため、吐き気、食欲低下、倦怠感、白血球の減少、脱毛などが起こります。
分子標的薬
- 概要
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がんの形成や、がんの進行に関わる特定の分子を捉えてがんの増殖を抑制します。
- 長所
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がん細胞を増やしている分子に直接働きかけるため、正常な細胞に影響は少ないといわれており、細胞障害性抗がん薬よりも副作用が少ないと考えられます。
- 短所
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それぞれのお薬に特徴的な副作用があります。免疫チェックポイント阻害薬(免疫機能の持つブレーキを解除し、免疫細胞ががんを攻撃できるようにする治療薬)は自己免疫疾患に似た症状を引き起こすことがあり、まれに重症となります。
内分泌療法薬(ホルモン薬)
- 概要
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特定のホルモンによって増える特徴があるがんに対し、ホルモンの分泌を抑制することでがん細胞が増えないようにします。
- 長所
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正常な細胞に作用しないため、細胞障害性抗がん薬と比べて副作用が少ないと考えられます。
- 短所
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性ホルモンの働きを止めることで、更年期に似た症状が出たり、骨粗しょう症になる可能性があります。

- 概要
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根治を目指す、あるいはがんを縮小します。
- 長所
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臓器の形や働きを保ち、全身への影響を抑えることができます。
- 短所
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放射線を照射した部位(皮膚や毛根)の障害と、照射開始後まもない時期に吐き気や全身倦怠感がおこることがあります。
血液がん


※お薬により、投与方法が異なります。
細胞障害性抗がん薬
- 概要
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造血幹細胞移植前の処置、またはがんの根治を目的におこないます。
- 長所
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全身に作用するため、検査ではわからない小さな病変への効果が期待できます。
- 短所
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正常な細胞にも作用してしまうため、吐き気、食欲低下、倦怠感、白血球の減少、脱毛などが起こります。
分子標的薬
- 概要
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慢性骨髄性白血病や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫でがん細胞の増殖を抑制します。
- 長所
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がん細胞をねらうため、細胞障害性抗がん薬よりも副作用が少ないと考えられます。
- 短所
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それぞれのお薬に特徴的な副作用があります。
内分泌療法薬(ホルモン薬)
- 概要
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リンパ球から発生した血液がんにステロイド薬を投与しがん細胞の増殖を抑制します。
- 長所
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細胞障害性抗がん薬よりも副作用が少ないと考えられます。
- 短所
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ステロイド薬の大量投与によって胃潰瘍、糖尿病、高血圧、脂質異常症、不眠などが起こることがあります。

- 概要
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正常な造血幹細胞(血液を構成する赤血球、白血球、血小板のもとになる細胞)を投与して、造血機能を正常に戻します。
- 長所
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放射線療法と薬物療法のみでは治すことが難しい血液がんの根治が期待できます。
- 短所
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GVHD(移植片対宿主病:移植された骨髄から形成されたリンパ球が移植先の細胞を攻撃すること)が、起こる可能性があります。

- 概要
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造血幹細胞移植の前に、免疫抑制(免疫の働きを抑制すること)と生着(移植された造血幹細胞が造血機能を果たすこと)を促すため、全身に放射線を照射します。早期のリンパ腫の根治のために照射する場合もあります。
- 長所
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がんのある部位のみへ照射する場合は、全身への影響が抑えられます。
- 短所
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骨髄抑制(骨髄の造血機能が低下すること)が起こる可能性があります。
一部の血液がんでは、免疫療法の1つであるCAR-T療法がおこなわれることもあります

- 概要
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若年性のB細胞性急性リンパ芽球白血病で、がん細胞の増殖を抑制します。
- 長所
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患者さんのT細胞を採取し、がん細胞を攻撃するよう改変して量を増やしたCAR-T細胞を患者さんの体内に戻しがん細胞を攻撃させます。
- 短所
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CAR-T療法では、がんを攻撃するサイトカイン(免疫細胞の間で情報伝達をおこなうタンパク質)が大量に放出されることで正常細胞まで攻撃され、全身のさまざまな部位で炎症反応が起こります。
集学的治療とは
がんの治療計画は、「手術療法」「薬物療法」「放射線療法」の特性が最大限に活かされるよう設定されますが、がんのなかには単独で治療をおこなうよりも、いくつかの治療法を組み合わせておこなったほうが、より高い有効性が得られる場合があります。
複数の治療法を組み合わせてより高い効果を得る方法を『集学的治療』といいます。
がん治療の選択肢が集学的治療へ広がったことで、治療効果の改善が期待できる場合があります。たとえば手術療法と組み合わせる術前補助化学療法(薬物療法でがんを小さくすることで手術を可能にしたり臓器を温存する治療法)や術後補助化学療法(手術のあとに、薬物療法で目に見えない小さながんを除く治療法)では、再発までの期間の延長や再発率の低下といった成果が得られる場合があります。
これまで集学的治療は、三大療法の組み合わせのみを指していましたが、最近は支持療法や緩和ケアまでを含めて、集学的治療と呼ぶことが増えてきました。(この場合は包括的がん医療と同様の意味で使われます。)
- 参考資料
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- 中根 実ほか : がん看護学, 医学書院, 2019.
- 田口 哲也ほか:がん治療とサポーティブケア, じほう, 2019.
- 監修
- 国立がん研究センター がん対策研究所
- 更新月
- 2022年8月