がん患者さんのためのお助けごはん
超簡単レシピと食事のヒント 貧血編

食事から栄養をしっかり摂ることは、体を回復させるための大事なポイントです。一方で、がん治療中に現れるさまざまな副作用で、食べるのが難しくなってしまうことも。そんなときに無理なく食べることができて、栄養が摂れるメニューを、国立がん研究センター中央病院 栄養管理室長 管理栄養士の土屋 勇人 先生と一緒に考えました。
ここでは、おうちにある食材、コンビニエンスストアやスーパーで手に入るものを使った副作用別の超簡単レシピ、外食するときのメニュー選びなどの食事のヒントをお伝えします。
あなたのお気に入りを見つけてみてください。

今回のテーマは、がん治療中の副作用として経験される方が多い貧血です。貧血はふらつきやめまい、吐き気、息切れ、頭痛といった症状があらわれることもあります。貧血にはいくつか種類がありますが、本記事では鉄欠乏性貧血の場合について解説していきます。

1. 管理栄養士からの
アドバイス
「貧血のときにおすすめの食事とは?」

貧血(鉄欠乏性貧血)がある時の食事のポイント

貧血(鉄欠乏性貧血)の症状があるときは

  • 鉄を豊富に含む食材を摂る…レバー、牛肉、青魚、大豆製品、小松菜、ひじきなど
  • 鉄の吸収を高める食材も一緒に摂る…動物性たんぱく質を含む食材(肉や魚、卵、乳製品、)やビタミンCを含む食材(野菜やフルーツ)
  • 鉄の吸収を妨げるタンニンに注意…食事中・食事前後の濃い緑茶、紅茶やコーヒーを控える

貧血(鉄欠乏性貧血)の症状があるときは、鉄そのものの補給に加え、鉄の吸収をサポートする栄養素を一緒に摂取することが大切です。鉄はヘム鉄(主に肉や魚に含まれる)と非ヘム鉄(主に大豆製品や野菜、海藻に含まれる)に分かれます。非ヘム鉄はヘム鉄より吸収されにくいという特性がありますが、動物性たんぱく質やビタミンCと一緒に摂ることで吸収されやすくなります。

1日3食バランス良く、鉄を多く含む食材を積極的に取り入れることが貧血対策の基本です。鉄が強化された栄養補助食品なども、間食や補食で上手に活用してみましょう。

2. おうちで作る
「がん患者さんのための
お助けごはん」

鉄が効率よく摂れるレシピをご紹介していきます。身近な食材で簡単に作ることができるので、ぜひおうちで試してみてください。

①お食事レシピ
レバー以外の食材で栄養補給!

サバマヨ・ロールサンド
レバーは鉄を豊富に含む食材として有名ですが、普段の食事で取り入れるのは、下処理など面倒に感じられるかもしれません。鉄を多く含んだ、サバなどの青魚の缶詰なら、買い置きができて手軽なのでおすすめ。レモン汁を加えるとさっぱり食べやすくなります。

レシピ:サバマヨ・ロールサンド

<材料>

  • さば水煮缶(1/3缶)
  • レモン汁(小さじ1/2)
  • マヨネーズ(大さじ1~1と1/2)
  • せん切りキャベツ(20g)
  • ロールパン(2個)
  • ~お好みで~
  • 粗挽き黒こしょう(少々)

<作り方>

  • 1. サバをほぐしながらマヨネーズとレモン汁を混ぜる。
  • 2. ロールパンに切り込みを入れる。
  • 3. ロールパンにキャベツ→サバマヨの順番で挟む。
  • 4. お好みで粗挽き黒こしょうを振る。

ワンポイントアドバイス

・粗挽き黒こしょうはお好みで加えてください。

肉豆腐風
絹ごし豆腐より鉄の多い木綿豆腐を使う方がおすすめ。動物性たんぱく質を含む牛肉を組み合わせることで、鉄の吸収を促します。

レシピ:肉豆腐風

<材料>

  • 木綿豆腐(約1/3丁)
  • 牛肉切り落とし(50g)
  • 水(大さじ3)
  • めんつゆ 3倍濃縮(大さじ1)
  • 冷凍ほうれん草(50g)
  • 片栗粉(木綿豆腐用:小さじ1、牛肉用:少々)
  • ~お好みで~
  • チューブのしょうが(小さじ1)
  • ねぎ

<作り方>

  • 1. 木綿豆腐を厚さ1cmほどに切る。
  • 2. 片栗粉を全体にまぶして耐熱容器に入れる。
  • 3. 牛肉にも片栗粉をまぶし、耐熱容器に広げてのせる。
  • 4. めんつゆと水を加え、ふんわりラップをかける。
  • 5. 電子レンジ600Wで3分加熱。
    ※肉が赤い場合はしっかりと火が通るまで30秒ずつ追加加熱する。
  • 6. ほうれん草を加える。
  • 7. 電子レンジ600Wで3分加熱し、そのまま5分ほど蒸らす。

ワンポイントアドバイス

・肉のにおいが気になるときはチューブのしょうが(小さじ1)を入れると食べやすくなります。
・お好みでねぎを入れてもおいしいです。

②間食・補食レシピ
おやつで賢く鉄を摂ろう!

豆乳カフェオレプリン
家族みんなで美味しくいただけるカフェオレ風味です。豆乳は鉄の多い無調整豆乳を選びましょう。

レシピ:豆乳カフェオレプリン

<材料>

  • 卵 Lサイズ(1個)
  • 無調整豆乳(150ml)
  • 砂糖(大さじ2)
  • インスタントコーヒー(大さじ1/2)
  • トッピング(いちご、オレンジ)

<作り方>

  • 1. 卵→砂糖・コーヒー・豆乳の順で混ぜ合わせる。
  • 2. 耐熱カップに注ぎ、ホイルで蓋をする。
    ※泡が気になる場合はスプーンですくう。
  • 3. フライパンの底に布巾を敷いてカップを置く。
  • 4. カップの半分が浸るまでフライパンに水をそそぎ、中火にかける。
  • 5. フツフツ煮立ってきたら弱火にし、5分加熱する。
  • 6. 10分ほどそのまま蒸らす。
  • 7. 粗熱が取れたら冷蔵庫で冷やす。
  • 8. 食べる前に、好みのフルーツをトッピングする。

ワンポイントアドバイス

・ビタミンCを含む果物をトッピングすると鉄分の吸収率がアップします。

きなこチーズ蒸しパン
お餅に絡めるイメージがあるきなこですが、鉄補給に役立つ食材。チーズに含まれる動物性たんぱく質で鉄の吸収率もアップ。

レシピ:きなこチーズ蒸しパン

<材料>

  • ホットケーキミックス(50g)
  • 無調整豆乳(70ml)
  • きなこ(大さじ1)
  • プロセスチーズ(1個 18g)

<作り方>

  • 1. チーズ以外の材料を耐熱用マグカップに入れ、ダマがなくなるまで混ぜる。
    ※豆乳は少しずつ入れながら混ぜるとダマになりにくいです。
  • 2. プロセスチーズをちぎってトッピングする。
  • 3. ラップをせずに電子レンジ600Wで3分加熱。
  • 4.竹串で刺し、生地がついてこなければ完成。
    ついてくる場合は30秒ずつ追加加熱する。

ワンポイントアドバイス

・マグカップに入れて混ぜると洗い物も少なくて済みます。

3. 作らず頼る
「がん患者さんのための
お助けごはん」

めまい、ふらつき、吐き気といった貧血の症状で料理ができないときは、コンビニエンスストアやスーパーで買える食品を上手に活用しましょう。

コンビニエンスストア・スーパーで買って役立つお助け食品

鉄補給と吸収のサポートに役立つ食品を紹介します。あらかじめ買い置きしておくと、疲れを感じたとき、食欲がないときでも気軽に取り入れることができるので便利です。

コンビニエンスストア・スーパーで買って役立つお助け食品

おすすめ食品とPOINT

  • 豆乳飲料、ココア飲料:食欲がないときは気軽に飲めるドリンクがおすすめ
  • あさりの即席みそ汁、冷凍ボンゴレパスタ:鉄が多いあさりを気軽に食べられる
  • ひじき煮:肉や魚、卵などの動物性たんぱく質を含む主菜と一緒に食べるのがおすすめ
  • 豆腐スティック:サラダチキンのコーナーで売っていて、間食や補食にも便利
  • カットフルーツ:ビタミンCの補給になる

貧血対策や予防に役立つ
外食メニュー

鉄が豊富に含まれる食材を使ったメニューをご紹介します。賢くメニューを選んで、外食も楽しみましょう。

貧血対策や予防に役立つ外食メニュー

おすすめの外食メニューとPOINT

  • レバー串焼き:鶏、豚どちらでもOK
  • 豆腐ステーキ、豆腐ハンバーグ、肉豆腐:和食のお店なら大豆製品を使った料理も豊富
  • ほうれん草とベーコン(ハム)のソテー:ベーコンやハムに含まれる動物性たんぱく質で鉄の吸収率アップ
  • ゴーヤチャンプルー:ゴーヤのビタミンCが豆腐に含まれる鉄の吸収をサポート
  • ソイラテ:豆乳を使ったソイラテは、ミルクを使ったカフェラテより鉄が多い

まとめ

がんの治療中は、使う薬剤によっても貧血が起こりやすくなりますし、副作用の影響で食事量が減ることから貧血になる場合もあります。普段の食事に加え、間食や補食のタイミングで上手に鉄分を補給しながら、貧血予防を心がけてみてくださいね。