味覚のお悩みがあるとき、すぐに取り入れられる“工夫”いろいろ

「味がわからなくても、家族においしい料理を作りたい」
「味がしなくて、食が進まない」
「今までとは違う味がしておいしくない」
がんの治療中、「味覚」に対して悩む方が多いといわれています。味がわからないと家族のために台所に立つのも気が引けますし、栄養のためにと義務感にかられてする食事は味気ないですよね。そんなとき、少しでも食事に対して前向きになれるような“工夫”をお届けします。

味がわからなくても、おいしい食事を作りたい

味がわからなくても、おいしい食事を作りたい

味がわからないと困ってしまう、毎日の料理作り。せっかく料理を作っても、家族が本当においしく食べているのか、気になってしまいますよね。そんなときに取り入れられる工夫をご紹介します。

計量を味方につけて、おいしく仕上げる

〈計量スプーンを使って〉

定番アイテムですが、レシピ通りに計量すればおいしい料理が簡単に作れる「計量スプーン」は強い味方です。きっちり計れば、さらにおいしく仕上がります。

  • 粉末の場合:砂糖や小麦粉などの粉末は、山盛りにすくって、スプーンなどの柄ですりきって計ります。1/2の場合は、すりきりに計ってからスプーンなどの柄で余分を取り除きましょう。
  • 液体の場合:スプーンのふちまで注ぎ、表面張力で盛り上がっている状態が1杯です。1/2の場合は、高さ2/3まで注いだ状態です。

〈デジタルスケール(はかり)を使って〉

デジタルスケールも、手軽に正確に計れるのでおすすめです。スケールの上にボウルを置き、そこで計量をすれば洗い物が少なく済むのも嬉しいポイント。よく使う調味料の重さを一覧にしたので、ぜひお役立てください。

大さじ1の重さ

大さじ1の重さ
  • 大さじ1/3=小さじ1(参考:女子栄養大学出版部 調理のためのベーシックデータ第5版)

身近なもので、手軽に計る

実はペットボトルの「キャップ」は、約7.5cc(大さじ1/2)。大さじ1なら2杯、小さじ1なら2/3杯です。そのまま捨てられるので、洗い物の負担も減りますよ。

また、ペットボトルの口にパスタをぴっちり詰めると約100gなので、1人前を計ることもできます。

覚えておくと使える、目分量

わざわざ計るのがちょっと手間に感じるものは、目分量を知っておくと便利です。

  • 塩少々:指2本でつまんだ量(約0.5g)
  • 塩ひとつまみ:親指・人差し指・中指3本の指でつまんだ量(約1g)
  • にんにくの「ひとかけ」:チューブ3~4cm
  • しょうがの「ひとかけ」:チューブ8~10cm
  • サラダ油「大さじ1」:熱する前のフライパンに油を注ぎ、直径8cmほどの量

「味がしない」ときは、味を引き立たせる工夫を

「味がしない」ときは、味を引き立たせる工夫を

料理よりさらに頭を悩ませるのが、味覚の変化だと思います。まずは、「何を食べても味がしない」ときに試していただきたい工夫をご紹介します。

レモンやゆずで酸味をプラス

「酸味」は、鈍化しにくい感覚のひとつです。味がわからない中でも酸味は感じやすいので、例えば焼き魚を食べるなら、レモンやゆず、かぼすなど、お好みのかんきつ類をギュッと絞ってみてくださいね。

だし汁などで、うまみをきかせる

次におすすめしたいのは「だし」の活用です。だしを使うと、塩分を控えめにしても風味が豊かになり、味を感じやすくなります。水を入れたペットボトルに、いりこや鰹節を入れて冷蔵庫で一晩寝かせた「水だし」や、1人分なら急須の茶こしに鰹節を入れて熱湯を注ぐだけの手軽な方法などもあるので、取り入れてみてください。

香りでアクセントをつける

食事をする上で、「香り」も大切な要素です。大葉やねぎ、しょうがなどの香味野菜、カレー粉やごま、こしょうなどの香辛料、ラー油やごま油などのオイルを活用すれば、味がグッと引き立ちます。

少し低めの温度でいただく

せっかくの温かいお料理、できたてをいただきたいところですが、人肌程度に冷ますと味を感じやすくなり、おいしくいただけることが多いようです。

苦く感じるなどの「味覚変化」には、おいしく食べる工夫を

苦く感じるなどの「味覚変化」には、おいしく食べる工夫を

次にご紹介するのは、「何を食べても苦さや金属のような嫌な味がしてしまう」ときに取り入れたい工夫です。

歯みがきやうがいで、口の中をサッパリと

口の中が乾燥していたり唾液の量が少ないと、味を感じにくくなります。歯みがきやうがいによる口腔ケアで、唾液の分泌を促しましょう。あめを舐めるのもおすすめです。食前に冷たいお茶やレモン水などで、口の中をサッパリさせるのもよいですよ。

水分の多い食事をとる

口の中に留まる時間が長いと、その分味を感じやすくなるため、水分の多い料理をいただくのもひとつの方法です。スープやだし煮など、口の中をサッと通り抜けるようなものを選ぶとよいでしょう。

コクがある食材で、嫌な味を隠す

苦味や金属のような嫌な味を感じにくくするには、マヨネーズ、牛乳、バターなどの“コク”があるものをプラスしてみましょう。脂肪分のまろやかさが、嫌な味を和らげてくれますよ。また、しょうゆに苦味を感じる場合は、洋風の味つけを試してみるのもおすすめです。

いろいろな計り方や味つけの工夫をご紹介しましたが、味がわからないと料理をする気が起きないこともあると思います。そんなときは薄味に仕立てて、物足りなければ食べるひとそれぞれが調味料を足しましょう。また、「セルフ味つけ」できるレシピを取り入れてみるのはいかがでしょう。例えば揚げ物のように、食卓に出してから調味料の量を調整できる料理だと、料理をするときに身構えずに済みます。スーパーのお惣菜なども活用しながら、食事を楽しんでくださいね。

味覚のお悩みがあるとき、
すぐに取り入れられる“工夫”いろいろ

コンビニにあるもので
レンジで作るとん平焼き風

コンビニにあるもので レンジで作るとん平焼き風

栄養士コメント

鉄板焼きメニューを、コンビニにある材料で、さらにレンジでできるようにアレンジ。ふんわり卵とソースが食欲をそそります。

栄養価(1人分)

エネルギー 183 kcal
たんぱく質 9.9 g
脂質 10.6 g
炭水化物 17.2 g
食物繊維 7.1 g
食塩相当量 1.6 g

材料(1人分)

使用量

冷凍肉入りカット野菜(なければ、野菜炒め用カット野菜100gと豚薄切り肉30gでも可) 1袋(130 g)
卵(Mサイズ) 1個(50 g)
中濃ソース 大さじ1(18 g)
少々(0.2 g)
こしょう 少々
かつお節 少々(1 g)
青海苔(あれば) 少々

手順

  1. 耐熱皿に凍ったカット野菜をのせ、ラップをせず電子レンジ(600W)で2~3分加熱し、火が通ったら塩、こしょうします。
  2. 電子レンジで薄焼き卵を作ります。平な耐熱皿にラップを敷き、よく溶いた卵をひろげて、電子レンジ(600W)で1分加熱します。
  3. ラップから卵をはがし、1の野菜の上にのせます。ソースをかけ、かつお節、青海苔を振って完成です。
  4. 電子レンジの加熱時間は1人分の目安です。電子レンジによって加熱時間は前後します。

薬味たっぷりごま酢そば

薬味たっぷりごま酢そば

栄養士コメント

たっぷりの薬味、ごまと酢でアクセントをつけたつゆでいただく一品。温泉卵などを添えてアレンジすると栄養バランスもアップ。

栄養価(1人分)

エネルギー 345 kcal
たんぱく質 12.0 g
脂質 12.5 g
炭水化物 48.6 g
食物繊維 7.3 g
食塩相当量 2.1 g

材料(1人分)

使用量

冷凍日本そば 1玉(150 g)
長ねぎ 1/5本(20 g)
みょうが(あれば) 1個(10 g)
青じそ 2枚(1 g)
しょうが 1/3片(5 g)
A めんつゆ(3倍濃縮) 大さじ1(21 g)
A 水 60 ml
A 酢 大さじ2/3(10 g)
A ねりごま(または、すりごまでも可) 大さじ1(18 g)

手順

  1. 長ねぎとみょうがはそれぞれ小口切り、青じそとしょうがはそれぞれせん切りにします。
  2. 冷凍そばは袋の表記通りに解凍します。(または乾麺をゆでてもよい。)
  3. 器に2のそばを盛り、1の薬味をのせます。混ぜ合わせたAをかけていただきます。