がんになっても -がんの治療を、その人「らしい」生活のなかで。-

アストラゼネカ

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乳がん・前立腺がん・肺がんを中心に患者さん・ご家族の体験談、高額療養費制度などの情報を紹介

私からのメッセージ

坂下千瑞子さん
「がんを体験した医師の私に今できること」

がん医療の可能性を信じて

―― リレー・フォー・ライフをはじめ、患者さんの支援活動に取り組まれるようになったきっかけは何だったのでしょうか。

 アメリカではリレー・フォー・ライフで集められた寄付金の40%は、がん治療の研究費として使われてきたと講習会の時に聞きました。そしてみんなの願いが込められたその大きなお金と熱意が、治療法を大きく前進させたのです。がん治療は様々なアプローチで進化を遂げていますが、がん細胞だけを狙い打つ分子標的薬がここ数年で目覚しく進歩し成果をあげています。このようながん治療に革命を起こしている薬の先陣を切って開発され、多くの患者さんや医療者や研究者に勇気と希望を与えてくれた薬がリレー・フォー・ライフの支援によって世に送り出されたと聞いて、血液内科医の私は深く感銘を覚えました。

 がんの原因が遺伝子の異常とわかり、そのメカニズムが少しづつ解明される中で、多くの研究者達の努力によって日々新薬が研究開発され、それを医療者が現場で慎重に用い、患者さんが元気になっていく。早期に発見できなかったがんさえも、コントロールできる時代がやってきた。そこにエネルギーを投じさえすれば、がん医療は目覚しく進歩する可能性を秘めています。それとともに、がんを経験した人たちの生き方について、もっと考えていく必要があると思いました。がん医療を、医師と患者という両面から経験したことによって、色々な改善すべき問題点に気づき、また医学の進歩に希望を見出したので、自分のできることからまずは始めてみようと思いました。

「笑い療法士」の認定を受ける

―― 笑い療法士の認定を受けられたのも、患者さんのために何かしたいという思いからだったのでしょうか。

 はい。笑いで患者の自己治癒力を高めることをサポートし、また病気の予防をする「笑い療法士」はとてもユニークで色々な可能性を秘めた資格だと思い、認定を受けました。

 東京医療保健大学教授の高柳和江先生が代表世話人である「癒しの環境研究会」が、書類選考し講習会への参加や活動報告書を評価して認定しています。これまでに300人以上が認定を受けており、そのなかには医師や看護師も含まれています。

私は特に、がん患者さんに笑顔を取り戻してほしいと思い活動を始めました。と言ってもパフォーマンスで笑わせるのではないのですね。どんなに大変な時でも、必ず笑顔になれるとみんなに知ってほしいんです。その人の中の笑いの種を見つけて育てる。すると、にこっと笑ってくれるんですね。

 私にとっては娘が笑い療法士でした。抗がん剤投与中で、起き上がれないほどつらい時に、「ママ、きたよ〜」と3歳になる娘がニコニコしながら元気に病室に入ってくる。その姿を見るだけで、私もにっこりします。病院の食事に全く手をつけられなかった時も、娘が覗きこんで「わあーおいしそう!一つ食べてもいい?」と言ってニコニコしながら口に入れるのを見ていると、何だか食べてみようという気になり、自分でもビックリしました。あんなにつらくて、気持ちが悪かったのに、どこからか元気が出てきたんです。その人の内なるパワーと笑顔を引き出し、一緒にいると元気になれる人、それが笑い療法士の目指すものなのかなと私は考えています。

 その娘が、大人になったら自分も笑い療法士になりたい、と言っています。(笑)

患者さんと医師の相互理解のために役立てたい

―― がん体験を、医師としてどのように生かせるでしょうか。

 今はまだ体力の回復が十分でないし、これから先の病状にも不安を抱えています。本格的に医師としての診療活動は行っていませんが、医師と患者、両方の立場がわかるからこそできることに取り組んでいきたいと思っています。

 がん医療をよりよいものにしていくには、医学の進歩に加えて、患者さんと医療者とのコミュニケーションの改善が必要です。そのためには、まず意識の差があることを双方に知ってもらい、対話を始めることだと思います。

 医療者は、きちんと説明をしているから、患者さんは理解して納得して治療を受けていると思っているんですね。そして「何でも言ってください」と言えば患者さんは何でも言ってくれると思いがちですが、自分の命を預けている医師に対して、なかなか本音を言う患者さんはいません。気を遣い、遠慮しながら嫌われないように努力しています。意識の差とはたとえば、「その人の命をあきらめられるかどうかは、医療者と本人とでは感じ方が全く違うということ」、「80%の治癒率を素晴らしいと考えるのか、80%しか保証されない命を不安に感じるのか」、「髪がバサバサと抜ける恐怖を、後で生えてきますからと簡単に済ませてしまうのか、大変な想いをしましたねと共感できるか」といった違いです。

 私が病気になった時に、どう生きるかを教えてくれたのは医療者ではなく先輩患者さんであったと思います。彼らはどう気持ちを立て直し、自分を取り戻し、生きていくかを教えてくれました。だから、がん体験者の力を借りて、より豊かなサポートを実現する事もできると私は思っています。と言っても、患者さん同士の間にもルールは必要です。自分の経験したことを伝えることは重要ですが、それを相手に押しつけたり、相手を自分の物差しで測ってはいけないと思います。そういったルールを守れば、たとえ部位が違っても、がん患者さん同士はわかりあえることがたくさんあります。互いに共感し寄り添うだけでも十分で、一人じゃないと気づき、勇気が湧いてくるのです。そのような患者さんの交流会のメリットを医療者にも伝えていきたいと思っています。告知と同時に患者さんの交流会の紹介もしてもらえるくらいに、医療者に理解してもらえれば、逆に医療者にはケアしにくい患者さんの不安や葛藤を減少させることができるので、医療もやりやすくなると思います。

患者さんが自分で決め、納得して受けられるがん医療のために

―― 今後はどのような活動をしていきたいですか。

 昨年と今年、大分大学医学部の4年生を対象にして1コマ分の講義を担当させていただきました。がん患者の想いや医療の在り方について話したのですが、学生さん達から「患者さんの気持ちがわかる医師になりたい、ありがとう」という感想をいただきました。講義の中では、「医療の主人公は誰か」ということや、「医療者と患者さんとの意識の差」についても考えてもらうようにしています。

 それからリレーフォーライフ大分実行委員会では、がん患者さんやご家族の交流会(サロン)を月に1回、大分記念病院で開催しています。参加された方が仲間を見つけ、生きる勇気や希望を得て元気になられる姿をみるととても嬉しいです。その中で患者さんの生の声を拾いながら、色々な所へ届けたいなと思っています。

一コママンガ風の冊子

 私自身の活動ではないのですが、この病院では、事務長の知り合いの女性でイラストが得意な方が、入院中の患者さんの視点で描いた一コママンガ風の冊子を使って職員教育を実施しているんです。患者さんの視点がわかりやすくて、とてもいい教材になっているのではないかと思います。先日サロンでこの冊子を紹介したら、がん患者さんたちが嬉しそうに、「そうそう、その通りなのよ!」と共感していました。このように、患者さんの声を医療に生かしていく活動も続けたいと思っています。

 もちろん、患者さんとそれを支える家族、医療者、地域社会の人々が交流する場としてのリレー・フォー・ライフも続けていきます。2009年もより多くの方に参加していただき、夢と希望と勇気と笑顔が一杯の楽しい大会になることを願っています。

 将来的には、私の体験を活かせる現場に携わることができればいいなと考えています。たとえば私がそこにいることで、患者さんと医師の間のギャップが埋まり、医療がスムーズになって、患者さんの満足度も高くなるといった役割が担えるようになれば、嬉しいですね。

――坂下さん、ありがとうございました。

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