がんになっても -がんの治療を、その人「らしい」生活のなかで。-

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乳がん・前立腺がん・肺がんを中心に患者さん・ご家族の体験談、高額療養費制度などの情報を紹介

私からのメッセージ

加藤大基さん
「34歳で肺がんになった医師が、苦悩の末、行き着いた不安とのつきあい方」

Vol.2 患者になって気づいたこと

心のケアの必要性

――加藤さんは著書の中で、ご自身が患者になってはじめてわかった患者心理について触れられています。どういう状況でそれを感じたのでしょうか。

 入院中に何人か友達が訪ねて来てくれたのですがとても嬉しかったですね。それと毎日、医師が回診に来てくれるわけですが、会えない日があったりすると寂しかったりする。

 それで思ったのですが、とりわけがん患者さんは何かにつけ孤独感に襲われるのですね。ベッドに人が訪ねて来てくれると、それが解消されるのだと思います。

 自分が医師として回診しているときはそんなことは思いもしませんでした。私自身、病棟を担当しているときは、基本的には朝と夜、1日に2度回診していたのですが、それは患者さんの容態の変化とか様子を見る目的でした。ですから仮に病棟を回れない日があったとして、診療記録を見たり看護師から様子を聞いたりして患者さんのその日の状態を把握できれば、なんら支障はないと思っていました。

加藤大基さん

 だけどいざ患者になってみると、医師の顔を見ただけで安心する自分がいることに気づきました。患者さんのすべてがそうだとは思いませんが、私の場合はそうでしたね。

 ひるがえって、不安感が強いときなどに医師が顔を見せなかったりすると、中には見捨てられたんじゃないか、と感じる人がいても不思議ではないと思いましたね。

――そこをヒントにして、患者さんのご家族や友人が患者さんに対してできることはありますか。

 そうですね。ご本人が人と会うのを嫌がっていないのであれば、こまめに訪問したり、そばにいて話しかけたり、話しを聞いたりするのはよいのではないでしょうか。様子を見ながら、ふさいでいるようであれば孤独感にさいなまれているのかもしれませんから、それを解消できるように働きかけてみる。それで顔の表情が晴れるようであればいいですね。

 患者さんの心理からすれば世の中とつながっている感じが大事で、そうすれば孤独感に襲われても、そう深刻な事態にはならないと思います。

意外に少ない役に立つ情報

――病気になってわかったことのひとつに、患者さんにとって役に立つ情報が意外と少ない、とおっしゃっています。どんな点でそれを感じましたか。

 最近はネット社会で、自宅に居ながらにしていろんなことが簡単にわかります。その点、非常に便利なのですが、役立つ情報は少ないということです。私自身、自分ががんになって、治療法ごとの成績などいろんなことを調べました。ひとつのキーワードを入れると、何百、何千ものサイトがヒットします。その全部に目を通すわけにはいきませんが、これはと思うものを開いて読んでもまさに玉石混交で、情報は多いようで実は少ないのだというのが素直な実感です。

 最近は医療施設のホームページに、治療後の5年生存率などの情報なども載っていますが、そもそも病期や心臓病、腎臓病などの合併症(持病)の有無、年齢など、調査対象となった患者さんの条件がそろっていないと、他の施設の成績とは比較できません。一見、医学的科学的に見える情報でも、そのように不備なもの偏りがあるものが多いですね。進行がんが消えた、治ったという類の医学的に見て論外な情報もあふれています。

 その中から役に立つ情報を抽出するのは、一般の人にとってはとても難しいことではないでしょうか。それを選別できる目を養うといっても簡単にできることではないからやっかいです。

――雑誌などの活字媒体でも病院ランキングがよく特集されますが、施設選びの目安として役に立ちますか?

 さてどうなのでしょうか?きちんとした基準や調査法などを示していれば参考になるのですが、そういったものは少ないように思えます。さっきも言ったように医療施設ごとの治療成績の比較をするには、患者さんの病状や健康状態をそろえなければなりません。その基準を統一するのは容易ではなく、ランキングをつけるのはとても困難なのです。もしそれをやるのなら、施設ごとの患者さんの登録が必須で、いったん登録した患者さんは治療中はいうまでもなく、退院後も全員の追跡調査が必要です。でなければ客観的な5年生存率など出るわけがないですよね。地域ごとの治療成績を出すとすれば、地域のがん登録も必要です。それをやるには人手も費用もかかります。今、その必要性を厚生労働省がアピールしていますが、なかなか進展しない状況にあるように思います。

 以上のようなことを踏まえて、がん情報で役立つものを探すには、情報の発信源がきちんとしたところかどうか確認するのが一番です。まずは国立がんセンターなど定評のあるサイトで基本的なことを押さえて、それと比較しながら、他のサイトに進んでいくのもよい方法だと思います。

再発の不安と折り合いをつける

――加藤さんは、医師として患者さんの声によく耳を傾けているつもりだったが、十分ではないことが患者になってわかったと述懐されています。どういった点で十分でなかったのでしょうか。

 自分はがんになったわけですが、せいぜい同じ病状の人の気持ちを察することはできても、すべての患者さんの気持ちがわかるようになったわけではありません。ただ再発の恐怖は根治的治療を受けて経過観察中の患者さんで共通するものと思われます。それについては、幾分、代弁できる部分があるのではないかなという気がします。

加藤大基さん

  私の場合、病期は1A期で、このようなケースでの5年生存率は約80%といわれているのですが、治療後すぐは、「20%は再発するんだ」という点に目がいって気になってしかたがありませんでした。今、2年半が経過して、やっとどうにか自分なりにその不安との折り合いのつけ方がわかってきたように思います。どういうふうにわかってきたかというと、結局、再発するかどうかはどんな名医でもわからない、誰にもわからない、という単純なことに気づいたのです。冷静に考えると当たり前のことなのですが、20%の数字に目がいっているときは、そんなふうに割り切ることはできなかった。誰にもわからないこと、つまりいくら考えても答えの出ない問題に向き合っていても、時間を浪費して、心身も消耗するだけだ、ならばそれで悩むのはよそう、他に考えるべきこと、やらなければいけないことはいっぱいあると思ったのですね。

 その心境になるまで私の場合は半年程度かかりました。それはそれでしかたのないことで、無駄だったとは思いません。この経験から言えるのは、人生が有限なのは健康な人もがん患者さんも同じだということです。期限が少し違うかもしれませんが、ならばなおさら有意義に過ごしたい。今はその気持ちが強いですね。

次回は、「医師の立場から言えること」についてご紹介します。

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