がんになっても -がんの治療を、その人「らしい」生活のなかで。-

アストラゼネカ

文字サイズ

乳がん・前立腺がん・肺がんを中心に患者さん・ご家族の体験談、高額療養費制度などの情報を紹介

私からのメッセージ

加藤大基さん
「34歳で肺がんになった医師が、苦悩の末、行き着いた不安とのつきあい方」

がんは生き方にどう影響したか

――ご自身の病の体験は、医師として、あるいは個人としての生き方にどう影響を及ぼしましたか。

  やはり「死」ということを考えたし、逆に「生」について深く考えるようになった気がします。私の祖父は94歳で今も健在です。長生きの家系かもしれません。だからというわけではないのですが、漠然と自分も80代ぐらいまで生きるのだろうと思っていました。ところが30代にしてがんになった。

加藤大基さん

 ひるがえって、2人に1人ががんにかかるといわれる時代にあって、やはり普段から、罹患したときのことや「死」について、「生」について考えておく必要があるのだと、痛切に感じました。いわゆる死生観ですね。

 ただでさえ「死」は私たちから遠くなっていて、報道などで間接的に接することがほとんどで、家でお年寄りを看とるということは少なくなってきました。「死」から遠ざかっているのは、ある意味でよいことなのかも知れませんが、その意味や意義について考えることを怠ってはいけないと思うのです。闘病中、もちろん今もそうなのですが、そのことを何度も感じました。

 個人的なことでいえば、医師として第一線への復帰というのはしばらくは差し控えようと思ったし、自分自身としては「死」を意識に置くようになったことで、目標が明確になったように思います。

「死生観」を持つことは病気と共生していくためのひとつの方法

――普段から「死」や「生」について考えると、仮にがんになってもあわてなくてすむ、ということでしょうか。

 そうですね。自分のことを話しますと、もしがんが見つかったときすでに余命いくばくもないという状況だったなら、受け入れるのが大変だったと思います。今はそれから2年半が経過しましたが、死への助走が取れるようになって、うっすらと覚悟のような感覚が体内に宿ってきたのを感じます。

 再発の恐怖や死の恐怖を完全に克服できたわけではありませんが、今ならそういう事態になってもなんとかハードルを乗り越えられるのではないか、そういう気がします。

 ――とすると、「死」と「生」について深く考えること、つまり死生観を持つことは、病気とうまく共生していくための、ひとつの方法ということができますか。

 そうかもしれません。少なくとも病気を抱えながら生きていくうえで、多少なりとも心穏やかに過ごしていく方法になるかもしれませんね。豊かな死生観を持つということは、病気を持って生きていくとしても豊かな余生につながるのではないかと思います。

文部科学省より採択された死生観の研究

――死生観を考えるうえで、加藤さん自身は正岡子規や吉田松陰の著作がとても参考になったそうですね。

加藤大基さん

 正岡子規は30代、吉田松陰は20代と、両者とも若くして亡くなりました。学生時代、著作を読んでいるときは、ふーん、若くして死んだんだというぐらいにしか受けとめていなかったのですが、自分がかんになったことで、死生観というキーワードが浮上してきて、その観点から二人のことを捉えなおすようになりました。著作を読み返してみると、やはり死生観が並大抵ではなく、一種の感動を覚えます。

 そんなこともあって、東大時代の上司である中川恵一先生(放射線科准教授・緩和ケア診療部長)の勧めもあって、一緒の研究チームに加えていただいたんです。文部科学省のグローバルCOEという競争的な研究費助成制度があるのですが、それに採択された研究で「死生学の展開と組織化」というテーマの特任研究員として活動をしています。

 たとえば東大病院の放射線科にかかっている患者さんやそのご家族、そして一般の人などを対象に、死生観を浮き彫りにするべくアンケートをとったりしています。

 「がんになってもできるだけ長く生きたいですか」「多少苦しくても積極的ながん治療を受けたいですか」「死後の世界を信じますか」といったような質問に答えてもらうのですね。私自身は昨年の1月から活動を始めて、これまで300人ほどから回答をいただいています。2009年初頭には中間の解析結果が出ます。いくいくはこれをもとに医学の初等教育に「死生観」を取り入れていただくような活動をしたいと思っています。今の医学教育にはそういった科目は皆無です。死生観といった言葉さえ出てきません。

 医療従事者が死生観を学ぶことは、患者心理を知るうえでも役に立つだろうし、臨床では個人個人の死生観を考慮した治療法の選択、ケアのしかたもできるのではないか、と考えています。私のこれからの目標は、このような形で自身のがん体験を活かしていくことです。

―― 加藤さん、ありがとうございました。

皆さまの体験が誰かの生きる力になります

「自分らしくがんと向き合う皆さんの姿、想い」
「患者さんからご家族への想い」「ご家族から患者さんへの想い」

このようなテーマで皆さまからの
体験談を募集しています詳しくはこちら