がんになっても -がんの治療を、その人「らしい」生活のなかで。-

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乳がん・前立腺がん・肺がんを中心に患者さん・ご家族の体験談、高額療養費制度などの情報を紹介

私からのメッセージ

上野直人さん
「医師として見ていたこと、患者になって見えたこと」

Vol.3 患者も家族もチームの一員として医療に参加する

がんのチーム医療とは

―― チーム医療ということがよく言われますが、なぜがん医療に必要なのでしょうか?

 がん医療の進歩はいちじるしくまさに日進月歩です。同時にますます高度化・専門化・細分化しています。かつてのように主治医一人がすべてを身につけて実施していくのは不可能になっています。今日のがん医療には、複数の専門医やコ・メディカルを含む多くの専門スタッフによるチーム医療が必須になってきているのです。一人の患者の治療方針についてさまざまな角度から議論し、複数の選択肢を検討しながらエビデンス(科学的根拠)に基づいた有効性の高い医療を行うためです。

 私はこのチーム医療が日本の風土や医療制度にみあった形で根付いてほしいと願っています。患者やその家族もチーム医療に参加してほしいのです。

―― 患者や家族がチーム医療に参加することができるのですか?

チーム医療

 むしろ患者が参加しないとチーム医療は成り立たないといってよいでしょう。各分野の専門家が協力し合って行うチーム医療では、ポイントポイントで治療法の選択肢があることが多いので、患者自身どんな医療を受けたいのか、希望を医療スタッフに伝えなければなりません。それが家族の希望であって患者の本意でないと困るのです。本意ではない治療法を行って、治療に対する患者の意欲が低下すると治療が継続できない恐れがあります。抗がん剤治療などはそうですよね。治療効果にも影響が出てしまうことがあるのです。

 そうはいっても患者さんは情報を整理できないで混乱していることがよくあります。そういうときは医療スタッフが交通整理をして希望を引き出すように努力をしますが、医療スタッフよりも家族の方がずっと患者の希望を理解して、うまく整理をつける手助けになるケースがあるのです。日本では、とくに家族の役割が大きいように思います。ですから患者もご家族も参加するチーム医療が望ましいのです。私は日本の風土や日本人の気風、家族のあり方などからして、私たちが行っているチーム医療とは違う、より理想に近いチーム医療が日本で実現する可能性があるのではないかと思っています。

医療スタッフの力を最大限に引き出す

―― 患者が積極的に関わっていくことで、よりよい医療を受けることが可能になるのでしょうか。

  もちろんどの医療施設も、その時点で可能な医療サービスを提供しています。でもその医療を行っているのは、医師にしろ看護師にしろ、医療スタッフ全員が人です。人には感情がありますので、やっぱり気持ちよく働いているときは、よりよい医療ができるのです。そういった意味で、一生懸命に医療に参加してくれる患者には、自然に応えてしまうところがあるように思います。

―― 多くの人は、医療施設に行けば誰もが自動的に均等に医療サービスを受けられるものだと思っているのではないでしょうか。

 原則はその通りなのです。でも現実は医療施設によって受けられる医療には格差があり、地域によって医療の質と量も違います。同様に同じ医療施設であっても、昼間と夜間では提供できる医療のレベルと対応力が違います。それは医療スタッフでも同じなのです。施設の働きやすさ、院内の人間関係、それぞれのプライベートなことなど、医療スタッフ側の問題が個々の専門能力の発揮に影響を与えることがあります。

 同時に患者側の要因が影響を与えることもあるのですね。つい先日もアメリカでこんなことがありました。患者はカリフォルニア州の検事さんで、みごとに患者として医療に参加してくれたのですが、職業柄か、つい医療スタッフに対して詰問口調になってしまうのです。医療スタッフは理屈詰めで追い込まれるような気がして、最後にはおびえてぎこちなくなり、よかれと思うアドバイスさえできなくなってしまいました。明らかに、スタッフと患者さんとのコミュニケーションがうまくいかなくなり、患者さんに提供する医療情報も少なくなっていました。そこでその患者さんには、こんなことが起きています、と正直に話しました。すると元来、頭のよい方ですので、これまたみごとに態度や口調を修正されました。

M.D.アンダーソンがんセンター

  このように、患者さんのコミュニケーションのしかたで医療スタッフの対応が変わってしまうことは、現実に起こりうることです。日本では「3分間診療」といわれる中で、いかに主治医と信頼関係を構築し、治療のゴールを共有して納得して医療を受けるか、非常に難しいことだと思います。患者側も、配慮をもって医療スタッフと接することが大切なのではないでしょうか。この話をあえて持ち出したのは、患者さんの側にも、医療スタッフの力を引き出せる余地があるということを知ってほしかったからです。

次回は、「自分らしく生きるということ」についてご紹介します。

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「自分らしくがんと向き合う皆さんの姿、想い」
「患者さんからご家族への想い」「ご家族から患者さんへの想い」

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