がんになっても -がんの治療を、その人「らしい」生活のなかで。-

アストラゼネカ

文字サイズ

乳がん・前立腺がん・肺がんを中心に患者さん・ご家族の体験談、高額療養費制度などの情報を紹介

私からのメッセージ

関原健夫さん
「六回のがん手術を乗り越えて−サラリーマン人生」

Vol.3 がんと向き合い、乗り越えていく上で、
大切なこと、力になったこと

治療に挑む上での情報収集と医師との信頼関係

―― 関原さんは、治療に挑む上で多くの情報を収集され、整理されていかれたそうですね。様々な方からのご意見を聞かれたことで、主治医などと意見がぶつかる事はありませんでしたか?

 私が闘病した時代(1980年代)はがん情報も少なく、情報入手に苦労しました。現在はがん情報が溢れており、情報選択に迷う時代です。私は入手した情報をもとに解らないこと、疑問に思うことをその都度ストレートに質問し、納得して治療に臨みました。ですから、意見がぶつかったということはありませんでした。

 あとになって「随分煩わしい、うるさい患者だったでしょうね。」と主治医に聞いてみると、「医師の言った事を理解し、医師に自分の希望をはっきりと伝えてくれるので、扱いやすい患者さんでしたよ。」と言われました。

 医師はたくさんの患者さんを抱えていて忙しいので、説明されたことをよく理解していないと会話も要領を得ないものになり、互いに意思疎通をすることが難しくなります。
患者なら誰もが医師に質問することに躊躇しますが、自分の状態をよく理解したうえで、わからないことは医師によく聞いて納得をすることが患者にとって重要なことだと思います。そして、その繰り返しが医師との信頼関係のベースになるのではないでしょうか。

医師と患者の関係も一つの人間関係

―― 医師の説明を聞いてわからないことがあれば、その場ですぐに質問されていたのですか?

 そうです。疑問があればすぐにその場で尋ねるようにしていました。でも、その前にある程度自分で調べたり本を読んだりして勉強するように努めました。

 「がん」と一口に言っても、治療も経過も千差万別です。どのような治療を受けるのか、どのような手術を受けるのか、自分でよく質問するべきだと思います。そのために、クリティカルな話も含めて、質問することについては毎回自分で予め整理していました。そのような一つ一つのやりとりの繰り返しを通じて、医師と患者の信頼関係はできていくのだと思います。それは友人同士も男女の間も同じです。相手の目を見ていれば互いの事がわかるわけではありません。つまり、医師と患者の関係も対話を通して築かれる一つの人間の関係ということだと思うのです。

 でも、特に医療の知識や情報は医師と患者には決定的な格差があります。また、患者によっても知識や理解にレベル差があります。ですから、互いに理解し、信頼し合える関係を作るのは簡単なことではありません。しかし、それを少しでも埋める努力は患者側もすべきだと思うのです。たった一つしかない「命」に係わる問題なのですから。

 がん治療のためにアメリカの病院に入院して一番よかったのは、「質問することは患者の権利だから」と言って、医師の方から、「何か疑問はありませんか。質問はありませんか。よくわかりましたか。」と言って質問を促してくれたことです。

 日本の医師もぜひそういうふうにしていただきたいとは思います。しかし、日本の病院は患者で溢れており、医療費も米国に比べ格段に低く抑えられているため病院や医師に余裕は乏しく、アメリカの病院のように医師が患者に質問を促してくれることはすぐには難しいので、まずは患者側が主体的に行動するということが大切だと思います。

―― 医師から治療について説明を聞くときの準備やその際のポイントはありますか?

関原健夫さん

 医師から説明を受けるのは手術の前(インフォームド・コンセント)と、3カ月に1回、肺と肝臓の検査をして、転移の有無などの結果の説明を聞くときでしたが、どの場合も緊張し動揺しました。

 転移し手術となった際、医師から手術の内容や回復の見通しの説明を受けました。それに対して私は、「手術は上手くいくのか」「死のリスクや合併病の可能性はどうか」「呼吸や肝機能はどの程度失うのか」「退院・職場復帰の見通し」等を恐る恐る聞きました。私は幸い副作用の強い化学治療は受けていませんが、副作用の強い化学治療の場合はその抗がん剤のがん縮小効果、延命や完治する見込みなど、知りたいことは詳細まですべて聞くべきでしょう。ただし、今ではインフォームド・コンセントが徹底されているため、手術を含めリスクを伴う治療については、特に医師の方から恐ろしくなるほど細かな説明が行われるようになっています。

 副作用に耐えて少しでも延命を望むのか、人生が短くなったとしてもQOL(クオリティー・オブ・ライフ)を優先して副作用による生活上の弊害を最小限にとめ普段どおり仕事を続けたり、やりたいことを極力やるのかどうか、自分の方向性をしっかり見据えます。その上で考え得る選択肢の中から自分の希望を伝えることが大切です。

 つまり大切なことは、治療のプラスの面、マイナスの面を知って、最後はやはり自分で決定することです。そして、自分で決めたからには希望を持って病や限りある人生に立ち向かうことです。治療には自分自身が納得した上でかかるというのが、病に立ち向かうための一番大切なことだと思います。

乗り越える力になったこと

―― 病気と立ち向かう際には、周りの人々の支えや励ましも必要だと思います。日米ではどのような違いがあるのでしょうか?

 日本人は患者への思いやりの気持ちはあっても、その気持をうまく表現して相手に伝えるのが不得手だと思いました。

 アメリカでは、短い入院でも直ちにカードや寄せ書きなどが届きました。がんを患ったことを特に公表してはいませんでしたが、「貴男が入院されたことを知りました。早く直って元気に戻ってきてください。」という気持ちを素早く伝えてくれたのです。最近は日本人も変わってきましたが、自分の思いやりの気持ちを率直に伝えることは、アメリカ人のほうが遥かに早く、上手いと感じます。

 今では日本でもメッセージカードはどこへ行っても売っていますので、お見舞いに行けなくとも、ただ「早く元気になってください。」という一言を書いたカードを送るだけで気持ちは伝わります。

 この自分の気持ちの伝え方は、病気になった時のやりとりだけではなく、男女の愛情表現にも共通しています。アメリカではすぐ相手に「I love you」と口に出すでしょう。日本では思っていてもなかなか自分の気持ちをストレートに表現しません。相手を思う気持ちは同じであっても、相手に伝わらなければ意味はありません。欧米、特にアメリカ人の多くははっきりと伝えてくれます。「I love you」と言われたら誰でも嬉しいでしょう。

―― 関原さん自身がかけられて嬉しかった言葉はありましたか?

 もう20年間になりますが、日本で再発し入院中、職場の若い女性から、「最近関原さんをお見かけしないと思ったら、体調を壊されて、お休みだということを知りました。早く元気になって、またお目にかかるのが楽しみです。」と書かれたカードが届き嬉しくなりました。たった一枚のカードですが、日本人でこのようなさりげない心遣いをさっと出来る人はなかなかいないと思い、この人はたいしたものだなと感じました。

―― 逆に、闘病中に周りの方からの言葉で傷ついたり、つらい思いをされたことはありますか?

 私はがんの転移・再発で十分傷ついていましたから、人の言葉くらいではあまり傷つくという事はありませんが、嫌な思いをしたことはあります。先ほどの女性とは反対で、退院し、職場復帰した後、「俺は入院していることを聞き心配したのに、何で俺に言わなかったんだ。」というようなことを言う友人がいて驚きました。本当に心配したのなら、その気持ちをカード1枚で届けてくれれば状況をお知らせできたのですが…。

 「気にかけている」ということをさりげなく伝え合えるといいなと思います。

―― 主治医と信頼関係を築くということでお話を伺ってきましたが、最後に関原さんが日頃から良き人間関係を築くため、心がけていらっしゃることをお聞かせください。

関原健夫さん

 私は若い頃から、出来るだけ多くの人に出会い、その出会いを長く大切にし、積極的にコミュニケーションを図ることを心掛けてきました。

 日本人は無意識に人の聞き役に回って自分のことを話さない人が多いですが、自分の意見や気持ちをストレートに出して「自分はこういう人間だ。」と先に相手に解ってもらった方が人間関係を築き易いと思います。自分がどんな人間なのかを話さなければ、相手も胸襟を開いて話してくれず、気が合う、気が合わないなどの判断がなかなか出来ません。だから、私は何でも思ったことや自分という人間について話すことにしています。

 いつもそのような方法で人と接していると、9割の人とは非常に仲良くなり、良い人間関係が築けると思います。残り1割の人からは、批判的なことを言われることにもなりますが、その1割を気にして自分を抑えるよりも、仲良くなった9割の人によって広がっていく人間関係の方が大切だと考えています。

 もう一つは少しでも人のために役立つことを心がけることが大切です。人から見て立派なことや、何か大それたことでなくてもいいのです。とにかく少しでも人のために役に立つとことを若い頃からどこかに心に持って行動することです。日頃から自分本位な人は、良き人間関係は望めず、困っている、逆境に立った時にも誰も助けてくれません。

 本にも書きましたが、アメリカで、たった一人で乳がんと闘い、亡くなった友人の千葉敦子さんは、闘病中に多くのアメリカ人に助けられました。

 「関原さん、あなた、やっぱり人のために役に立つことを一つでもしないと。自分は闘病中だから自分のことだけで精一杯、とか言っていたらダメよ。」彼女はそう言っていました。私も千葉敦子さんに随分勇気付けられました。医師や家族や多くの友人のお陰で助かったわが命、人のために役立つことを一つでも二つでもしなければと心しています。その積み重ねが最終的に自分にとって心強い人間関係という形になって表れてくるのです。

 本を書いてからは特にこの思いが強くなりました。昨日もある銀行の支店長から「どうしてもがんで相談したいことがあるので会いたい」という電話がありました。もちろん断ろうと思えば断ることも出来ますが、お会いするのが私の務めだと思って、お目に掛かることにしています。

 これからも、「オープンマインドで自分からコミュニケーションを図ること」「何でも良いから、自分にできる、人のために役に立つことをすること」を心がけて、豊かな人間関係を築いていきたいと考えています。

次回は、「がんと上手に向き合うために」というテーマでお話いただいた内容をご紹介いたしま

皆さまの体験が誰かの生きる力になります

「自分らしくがんと向き合う皆さんの姿、想い」
「患者さんからご家族への想い」「ご家族から患者さんへの想い」

このようなテーマで皆さまからの
体験談を募集しています詳しくはこちら