がんになっても -がんの治療を、その人「らしい」生活のなかで。-

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乳がん・前立腺がん・肺がんを中心に患者さん・ご家族の体験談、高額療養費制度などの情報を紹介

私からのメッセージ

青木 美保さん
「自ら参加する医療〜乳がんサバイバーである看護師の体験から」

指に触れない乳がん

――大学病院の看護師経験のある青木さんですが、発見された乳がんはかなり大きなものだったそうですね。発見の経緯を教えてください。

青木美保さん

2005年の夏、41歳のとき、胸の違和感に気づきました。通常は仰向けになると乳房は平べったくなりますが、片方がなんとなく突っ張っている。鏡で写して見ても左右の差があるような感じでした。まさかと思いつつ都内の大学病院を受診すると、4〜5cmほどの石灰化した病変が見つかりました。それまでも自己検診はしていましたし、あとで「何故そんな大きさになるまで気づかなかったの?」と看護師仲間にも言われたのですが、担当してくださった先生によると、大きなしこりを作らず乳管に沿って広がるタイプなので指では触れにくかったのではないかということでした。細胞診では悪性、と出ました。すごくショックでした。

乳がんと確定診断された後、不安で悲しい気持ちに襲われました。約1週間は、夜眠れないほどの不安が続き、最悪のことばかり想像していました。そんなとき出会った本のフレーズに励まされ、たとえ何があっても自分らしさを失わずに一日一日を大事にして生きていこうと決心しました。治療の途中も何度も読み返し、大変励まされました。

<青木さんが出会った本>

『ライフ・レッスン』

「偉大な生涯を95歳でまっとうしたようなケースは完成した人生のように感じるかもしれない。では短い人生は未完成だったのか? ほとんどの人の人生は未完成のように感じるのがふつうである。わたしたちの努力目標はこの一瞬を味わいつくすことにある」

「いのちにかかわるような病気の宣告をうけたときに人生が終わるのではなく、そのときに人生がほんとうに始まる。いまの人生と同じ人生は二度と手にすることができない。いま生きるべき人生はこれしかないことに気づき、毎日をフルに生きることが大事である」

エリザベス・キューブラー・ロス『ライフ・レッスン』(角川文庫)より抜粋

医師に自身の希望を伝えて納得できる治療法を選ぶ

――治療は、検査を受けた病院とは別の病院で受けられたそうですね。

 最初に診てくださった医師には、悪性の疑いが強くても最終的な確定診断がついていないときに、それを確かめるための検査が何週間も先になると言われ、待てないと思いましたし、提示された治療法以外にも治療の選択肢はどれほどあるのかを知り、「納得した上で治療を受けたい、自身で病院を選択したい」と思い、そのことを先生に伝えました。その先生も私の意思を理解してくれ、紹介状を書いてくださいました。

 私は、乳房を全部取ることに抵抗があり乳房温存を希望していたので、本やインターネットも含めて可能な限り調べた末、私の希望に適う施設を調べて受診しました。私の乳がんのサイズは4cmを超えており、そのままでは乳房温存術の適応にはならない状態でした。まず乳房温存術ができるよう、乳がんのサイズを小さくするために半年間13回にわたる化学療法を受けました。私の場合には、この治療の後、組織を採取して顕微鏡で調べる病理学的な検査で、がん細胞は残っていないとの結果が出て、手術を受ける必要がなくなり、ひとまずほっとしました。
 その後、再発を予防するために放射線療法とホルモン療法を受け、現在も続けています。

 この経験から、自分の希望をきちんと医師に伝えて納得できる治療法を選ぶことは大切なことだと思いました。また、自分が希望する治療を受けるために病院を選ぶときには、特に担当医とは長いおつきあいになるので、遠慮したり緊張したりしないでリラックスして何でも話せることが大事だと思いました。私の場合はできるだけ仕事を続けながら治療を受けたかったので、自宅と職場の両方から通いやすい病院という点もあわせて考慮し、病院を選択しました。

治療の過程で感じたさまざまな疑問

――治療を受ける側になってどのように感じましたか。

青木美保さん

 担当してくださった先生も看護師さんもとてもよくしてくださいました。信頼関係を築いた担当医のもと、最良の結果も得ることができ、感謝しています。でも釈然としない、満足できない部分もありました。

 私は、治療の折々に医療者に相談したいこともありましたが、お忙しそうでとても言い出せなかったこともありました。私自身が同じ医療者で、事情がわかっているだけに余計に遠慮したということもあったかもしれないです。また半年間通院しながら、外来で化学療法を受けていたのですが、外来化学療法室には専用トイレがないので、点滴台を押しながらトイレへ行かなければならず、そのとき同情されているような視線が集まる気がして、精神的に苦痛でした。

 そんな中、ベッド横の壁に貼ってあるカレンダーの絵をずっと眺めることでなぐさめられました。それは雲のような絵で、普段はどうとは思わないような絵だったのですが、眺めているといろんな形になり、空想をふくらませて時間の経つのを忘れることができたんですね。絵の効果は絶大だと痛感しました。このことを担当医に伝えると関心をもっていただいたので、治療が終了したとき、額装した小さな絵をプレゼントしました。その絵はさっそく飾られ、その後写真なども貼られるようになりました。

 施設や設備面を含め、治療に適した環境がどの病院にも早く整えばいいなと、看護師として働いていたときには気づきませんでしたが、自分自身の治療の中でさまざまな疑問がわいてきました。

次回は、【患者と看護師の両方の立場から】をお届けします。

皆さまの体験が誰かの生きる力になります

「自分らしくがんと向き合う皆さんの姿、想い」
「患者さんからご家族への想い」「ご家族から患者さんへの想い」

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