心の支えになってくれたのは、同じ会社に勤める同僚である同い年の友人でした。彼女の父親はがん経験者。かなり進行した段階から、奇跡的ともいえる回復を遂げた父親の姿を見てきた彼女は、とても親身になって私に寄り添ってくれました。抗がん剤治療中の脱毛が気になっている私に気づき、ケア用の帽子をプレゼントしてくれました。また、犬を飼っている私に、入院中に寂しくないようにと犬の形をしたお守りを渡してくれたんです。彼女の支えと励ましがなければ、ここまで頑張れたかどうかわかりません。心から感謝しています。
がんになるまでの私は、とても引っ込み思案な性格でした。
卵巣がんは女性特有の病気ということに加え、罹患数は少なく、同じ病気を持つ方が周りに全くいない状態。インターネットで情報を探しても、卵巣がんは自覚症状が少ない病気として知られていて、発覚したときには進行している場合も多く、厳しい話が書かれていたことも少なくありません。今後自分はどうなるんだろうと不安ばかり募る中、もっと情報が欲しい、経験者の話を聞き、気持ちを共有したいと、勇気を振り絞って、三重県の婦人科がん患者会「イエローハート」に参加。おとなしい性格で、なかなか話の輪に入ることはできない私を、患者会は温かく迎えてくれました。少しずつ話していくうちに、患者会の方々が「私もそうだった」と共感し、話を聞いてくださり、私も、これからも元気でいられるかもしれないと、前向きに考えられるようになりました。
友人や患者会など、相談できる人、場所はたくさんあります。ほんの少しの勇気を出して、自分から一歩を踏み出せば、前向きに捉えることもできます。がんを経験し、不安で悩んでいる人たちには「一人で抱え込まないで」と伝えたいです。
最初にがんが発覚したとき、私にとっては人生で初めての手術でした。翌日から痛みがかなりひどく、記憶が途切れるほどでしたが、「手術が終わったらゴルフをするぞ!」と目標を立てて乗り切りました。美味しい食べ物に目がない私が、抗がん剤治療中、全く食べられない時期もありました。人が食事をしている匂いさえ受け付けず、ひどいときは、病室のベッドで、カーテンの向こうで患者さんが食事中だという事実が知っただけでも吐き気を覚えるほど。そんな状態でも、「抗がん剤治療が終わったら、桜を見に京都に行き、美味しいものを食べる!」と計画を立てて乗り切りました。
また、ある時は、インターネットで体験談を探していて、卵巣がんの中でも私と同じがん腫の方のブログを見つけたんですが、その方がご自宅でサロンを開き、カラーコーディネーターをしていると知りました。ぜひ話を聞いてみたいと連絡を取って、車で数時間かけて一人で訪ねて行ったこともあるんですよ。
がんになるまでの私は、いつでもできることは後回しにして、淡々と日常を送っていたんです。そんな自分が、「やりたいことはすぐやろう」と、とてもアクティブな日々を送るようになったのも、がんを経験したからこそ。食べたいものを食べ、見たいものを見て、やりたいことを我慢せずにやっていく。これからも健康を大切に、日々の生活の中で楽しみを見つけていきたいです。