高額療養費制度とは?自己負担の限度額や申請方法について解説

1. 高額療養費制度とは

高額療養費制度の図1
図1
高額療養費制度の図2
図2

医療費控除と高額療養費制度の違い

医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定額を超える場合に受けられる所得控除(所得額から一定の金額を差し引く制度)のことを言い、高額療養費とは別の制度です。医療費控除を申告すると、所得税だけでなく住民税もおさえることができます。

医療費控除について詳しくは国税庁ホームページをご覧下さい。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm

医療費控除
図3
高額療養費制度
図4

両制度の違い 具体的なポイント

項目 医療費控除 高額療養費制度
申請先 お住まいの税務署 ご加入の医療保険
対象となる期間 1年間 1ヵ月
医療費の範囲
  • 通院のための交通費
  • 調剤薬局での薬代
  • 治療のためのマッサージ代等
  • 複数の施設での医療費
  • 保険適用内・外の治療費
保険適用内の治療費
(差額ベッド代・入院時食事療養費・入院時生活療養費は対象外)
世帯について 医療費控除は生計をひとつにする方はまとめて申告が可能 (国保の場合)保険証の番号が同じ者のグループ
(国保以外)被保険者と被扶養者

2.利用できるケース・注意点

がんの治療費などでひと月の医療費の支払いが高額になり、上限額を超えた場合

高額療養費制度の対象外となるもの

以下の項目は、高額療養費制度の対象外で自己負担になります。

  • 入院中の差額ベッド代
  • 入院中の食事代
  • 通院の交通費
  • 遠方からの通院治療などで宿泊した場合の費用
  • 公的医療保険の対象とならない治療(先進医療の技術料など)
  • 諸雑費(入院時に購入した衣類などの日用品、食費、見舞いに来る家族の交通費など)

3. 受給資格がある方

国民健康保険、協会けんぽ、健康保険組合、共済組合などに加入している人

4. 自己負担上限額(払い戻し金額)

自己負担の上限額の計算方法

70歳未満の方の自己負担限度額

所得区分 自己負担限度額 多数該当
年収約1,160万円~
健保:標報83万円以上
国保:旧ただし書き所得901万円超
252,600円+(医療費−842,000)×1% 140,100円
年収約770~約1,160万円
健保:標報53万~79万円
国保:旧ただし書き所得600万~901万円
167,400円+(医療費−558,000)×1% 93,000円
年収約370~約770万円
健保:標報28万~50万円
国保:旧ただし書き所得210万~600万円
80,100円+(医療費−267,000)×1% 44,400円
~年収約370万円
健保:標報26万円以下
国保:旧ただし書き所得210万円以下
57,600円 44,400円
住民税非課税者 35,400円 24,600円

70歳以上の方の自己負担限度額

被保険者の所得区分 自己負担限度額
外来
(個人ごと)
外来・入院
(世帯)
現役並みⅢ
(標準報酬月額83万円以上で
高齢受給者証の負担割合が3割の方)
252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
[多数該当:140,100円]
現役並みⅡ
(標準報酬月額53万~79万円で
高齢受給者証の負担割合が3割の方)
167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
[多数該当:93,000円]
現役並みⅠ
(標準報酬月額28万~50万円で
高齢受給者証の負担割合が3割の方)
80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
[多数該当:44,400円]
②一般所得者
(①および③以外の方)
18,000円
(年間上限14.4万円)
57,600円
[多数該当:
44,400円]
③低所得者 Ⅱ(*1) 8,000円 24,600円
Ⅰ(*2) 15,000円
  1. 被保険者が市区町村民税の非課税者等である場合です。
  2. 被保険者とその扶養家族全ての方の収入から必要経費・控除額を除いた後の所得がない場合です。

注)現役並み所得者に該当する場合は、市区町村民税が非課税等であっても現役並みの所得者となります。

払い戻される金額例

払い戻される金額例

70歳以上の方は全国健康保険協会「高額な医療費を支払ったとき」をご覧ください。

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3030/r150/

たとえば、50歳で年収500万円、窓口負担が3割の方の場合、適用区分は「ウ」になります。
がんの医療費がひと月に100万円かかり、窓口での支払いが3割の30万円とすると、

80,100円+(100万円−267,000円)×1%=87,430円

となり、治療費の自己負担限度額は87,430円になります。
よって、払い戻される金額は

30万円−87,430円=212,570円

になります。
年齢や保険種別などを入力すると、制度を利用できるかがチェックできる、
高額療養費かんたんチェックをご利用ください。

高額療養費かんたんチェック

https://www.az-oncology.jp/guide/check/index.html

5.高額療養費制度で治療費の負担を軽減するしくみ

高額療養費制度には下記のような治療費の負担を軽減するしくみがあります。

世帯合算

本人がひと月に複数の医療機関を受診した場合、自己負担額を合算できます。
また、お一人で一回分の窓口負担では上限額を超えない場合でも、同一の健康保険に加入されている同世帯の方の自己負担額を合算することができます。
詳しくは「世帯・同一人合算が知りたい」をご覧ください。

多数回該当

過去12ヵ月で、高額療養費として払い戻しを受けた月が3月(3回)ある場合、4月(4回)目から、自己負担限度額がさらに引き下がります。

表2:厚生労働省 「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(平成30年8月診療分から)

  適用区分 本来の上限額 多数回該当
年収約1,160万円~ 252,600円+(医療費−842,000)×1% 140,100円
年収約770~約1,160万円 167,400円+(医療費−558,000)×1% 93,000円
年収約370~約770万円 80,100円+(医療費−267,000)×1% 44,400円
~年収約370万円 57,600円 44,400円
住民税非課税者 35,400円 24,600円

支払いを負担の上限額までに抑えるためには

高額な医療費が発生する場合、マイナンバーカードを健康保険証(マイナ保険証)として利用すると、特別な手続きなしで医療機関・薬局で支払う金額を自己負担限度額までに抑えることができます。

マイナ保険証を利用しない場合は、事前に「限度額適用認定証」を医療機関の窓口に提示するか、医療費の自己負担分をいったん支払った後に支給申請を行い、限度額を超える分の払い戻しを受けます。

※70歳以上の方は高額療養費の適用区分が記載された「資格確認書」を医療機関に提示すると、自己負担限度額を超える支払いが免除されます。

6. 受給期間

高額療養費は、保険医療機関等から保険者へ提出する診療報酬明細書の審査が必要なため、申請から受給まで少なくとも3ヵ月程度かかります。
高額療養費の支給を受ける権利は、診療を受けた月の翌月の初日から2年間有効です。したがって、2年前までさかのぼって支給申請することができます。

7. 高額療養費制度の支給申請方法

マイナ保険証を利用する場合

マイナ保険証(健康保険証の利用登録がされたマイナンバーカード)を使って医療機関の窓口で受け付けをすれば、事前の手続きなしで高額療養費の限度額を超える分の支払いが免除されます

※国民健康保険料に滞納がある場合、住民税非課税世帯の方は別途申請が必要になります。

事前に手続きする場合(マイナ保険証を利用しない場合)

高額な医療費を一時的に立て替える状況を避けたい場合、事前に公的医療保険(保険者)から「限度額適用認定証」(非課税世帯の場合は「限度額適用・標準負担額減額認定証」)の交付を受け、それを入院する時や外来診療を受ける時に医療機関の窓口に健康保険証または資格確認書と併せて提示すると、医療費を自己負担限度額まで抑えることができます。

主な流れ
  1. 加入している公的医療保険(保険者)に「限度額適用認定証」の交付を申請します。
  2. 保険者が「限度額適用認定証」を交付します。
  3. 医療機関の窓口に「限度額適用認定証」を提示します。
  4. 退院時や外来診療後、自己負担限度額までの医療費を窓口で支払います。

※70歳以上の方は高額療養費の適用区分(限度区分)が記載された「資格確認書」を医療機関に提示すると、高額療養費制度における自己負担限度額を超える支払いが免除されます。適用区分が記載されていない場合は、資格確認書への任意記載事項併記申請を市町村の窓口に行ってください。

事後に手続きする場合(マイナ保険証を利用しない場合)

  1. 医療機関の窓口で医療費の自己負担分を支払います。
  2. 加入している公的医療保険(保険者)に高額療養費の支給申請書に記入し、必要書類(領収書等)を添付して提出または郵送します

    ※市町村の国民健康保険窓口、健康保険組合、全国健康保険協会(協会けんぽ)、共済組合の各窓口

  3. 保険者から自己負担分を超えた医療費が払い戻しされます(支給までに3カ月程度かかります)。

医療保険によって申請手続き、必要書類、自己負担の上限額に若干の違いがあるため、詳しくはご加入の医療保険やお住まいの市町村の窓口にお問い合わせください。

8. 申請に必要なもの

  • 高額療養費支給申請書

    *各種窓口でご確認ください

  • 被保険者証
  • 医療機関への支払い済み領収書
  • 振込用口座番号
  • 印鑑

9. 高額療養費制度申請先

高額療養費の申請先は、ご加入の医療保険により異なりますので、ご確認・お問い合せのうえ申請を行うようにしてください。

保険種別 被保険者 保険者 申請・問い合わせ先
健康保険 健康保険の適用事業所で勤務する民間企業従事者 組合管掌健康保険(組合健保) 健康保険組合 各健保組合担当窓口
全国健康保険協会管掌健康保険
(協会けんぽ)
全国健康保険協会 協会の各都道府県支部
国民健康保険 国民健康保険
国民健康保険組合の被保険者である者
各市区町村
各種国民健康保険組合
各市区町村
各種国民健康保険組合
船員保険 船舶の船員 全国健康保険協会 協会の各都道府県支部
共済組合 国家・地方公務員、一部の独立行政法人職員、日本郵政グループ職員、私立学校教職員 共済組合 各共済組合担当窓口
長寿医療制度(後期高齢者医療制度) 75歳以上の者
65歳以上で後期高齢者医療広域連合から障害認定を受けている者
都道府県後期高齢者医療広域連合 都道府県
後期高齢者医療広域連合窓口

※記載されている情報は2025年12月時点のものです。