いつ?どう使う?
がん支援制度

各時期に考えておくとよいこと、使用できる支援制度をみていきます。

がんの治療には多くの費用がかかります。近年は治療がより高度になってきており、医療費も高額になる傾向があります。治療そのものだけでなく、経済的な不安も大きな心配ごとの一つです。
そんな負担を少しでも軽くするために、公的な支援制度や助成金など、利用できる制度がいくつもあります。
このページでは、がんの診療の流れに沿って、その時々で考えておきたいことや、利用できる支援制度について分かりやすくご紹介します。

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    このページでは、知りたい情報をクリックして詳細を確認できるようになっています。ご自身の状況にあわせて、気になるところから読み進めてみてください。
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この記事で紹介する制度

相談したい内容・悩み 利用できる制度
治療する病院の
受診まで
■ 自覚症状・兆候が見られた
■ 検診などで指摘を受けた
■ かかりつけ医に相談したい
加入している医療保険(いわゆる健康保険)によって、利用できる支援制度が異なる
治療開始まで ■ がん診療をおこなう病院を受診したい
■ 診察・検査のとき
■ 診断・告知をうける・うけたとき
■ 治療選択や治療方針の決定時
■ 高額療養費制度
■ 付加給付制度
■ 国民年金保険料免除
■ 無料低額診療事業
■ 医療費控除
治療・治療後 ■ がんの治療をうけるとき
■ 症状の緩和をしたいとき
■ 療養のとき
■ 傷病手当金
■ 健康保険任意継続制度
■ 障害年金
■ 障害者手帳
■ 介護保険制度
■ 長期療養者就職支援事業
■ 介護休業・介護休暇
■ 自治体のがん患者支援制度

各制度のアイコンについて

ご自身が該当する医療制度、年金制度のアイコンを確認しましょう。

  • 医療保険制度のアイコン

    組合
    保険
    協会
    けんぽ
    共済
    組合
    船員
    保険
    国保
    組合
    国保 後期
    医療

    それぞれの医療保険に加入している方が利用できる制度です。ご自身がどの医療保険に加入しているかは、健康保険証(被保険者証)の下部に記載されている「保険者名称」で知ることができます。
    詳細は、「利用できる医療保険の制度を確認しておきましょう」をご覧ください。

  • 年金制度のアイコン

    国民
    年金

    自営業・学生の方など国民年金に加入の方が利用できる制度です。

    厚生
    年金

    会社員・公務員の方など厚生年金保険に加入の方が利用できる制度です。

  • その他のアイコン

    全員

    加入している医療保険制度、年金制度にかかわらず、すべての方が活用できる制度です。

治療する病院の受診まで

自覚症状・兆候

検診などで指摘

かかりつけ医に相談

この時期に考えておくべきこと

社労士 清水 公一さん

社会保険労務士事務所
Cancer Work-Life Balance 代表
清水 公一 さんから

加入している医療保険(いわゆる健康保険)によって、利用できる支援制度は異なります。まずは、ご自身がどの医療保険に加入しているか確認しましょう。
健康保険証(被保険者証)の下部に記載されている「保険者名称」を見ると、どの医療保険に加入しているかわかります。

医療保険の被保険者と保険者、申請・問い合わせ先

医療保険の被保険者と保険者、申請・問い合わせ先

社会保険労務士事務所
Cancer Work-Life Balance 代表

清水 公一 さんから

がんの費用には、以下のようなお金がかかります。

表1 がんの治療にかかる主な費用
公的医療保険等の対象となる費用 それ以外にかかるお金
  • 診察費
  • 検査費
  • 入院費
  • 手術、放射線治療、
    薬物療法などの費用
  • 介護サービス費など
  • 通院・入院時の交通費
  • 公的医療保険の対象外の治療(開発中の試験的な治療法や薬、医療機器を使った治療など)の費用
  • 差額ベッド代、文書料(診断書など)、食費、日用品、医療用ウィッグ、家族の交通費・宿泊費、お見舞いのお返しなど
  • 生活費

社会保険労務士事務所
Cancer Work-Life Balance 代表

清水 公一 さんから

働いている方には、この段階では「仕事は辞めないで」ということを、声を大にして伝えたいです。仕事を辞めると、使えるはずだったさまざまな支援制度を使えなくなってしまいます。「がんの疑いがある」と言われたり、がんを告知されたりした直後は、ショックで精神的に落ち込んだり混乱したりする状態が少しの間続くものです。しかし、通常は2週間ほどで気持ちが落ち着いてきますので、この間に仕事を辞めるといった重要な結論は出さないでほしいと思います。最初の段階で辞めなくてもいいのです。治療をしながら仕事を続ける方法はあります。

社会保険労務士事務所
Cancer Work-Life Balance 代表

清水 公一 さんから

勤務先の就業規則をよく見直しておくことが重要です。自宅療養や入院・通院といった病気を理由として休める制度(病気休暇や休職)があるか確認しておきましょう。病気を理由に休める制度のない会社もありますし、その条件や期間、休職中の給与の有無なども勤務先によって異なります。
また、有給休暇がどのくらい残っているかも確認しておくとよいでしょう。
休職制度や使える有給休暇のことを頭に入れておくと、休む必要があるときにそれらをどのように使うか計画を立てやすくなると思います。

治療開始まで

がん診療をおこなう病院を受診

診察・検査

診断・告知

治療選択・治療方針決定

この時期に考えておくべきこと

社会保険労務士事務所
Cancer Work-Life Balance 代表

清水 公一 さんから

がんの診断がついて具体的な治療方針が決まると、入院はどのくらい必要か、仕事は何日くらい休む必要があるかなど、大まかにわかってきます。有給休暇の残日数をどのように使うか、病気を理由とした休職制度でどれほど休めるか、実際に計算してみるとよいでしょう。

社会保険労務士事務所
Cancer Work-Life Balance 代表

清水 公一 さんから

手術の日程などが決まってきたら、いつ、何日くらい仕事を休むか、勤務先の会社などに報告する必要があります。このとき、勤務先の誰にどのように報告するかも大切です。上司や人事労務の担当者と、有給休暇や休職の制度をどのように使うか、休職・復職などに必要な手続きを確認し、業務の引継ぎなどについて話し合います。また、検査の結果などによって状況が変わる可能性があることを伝えておく必要もあります。(職場に伝えたいことを整理するノートや、職場への提出シートもご用意していますので、ご活用ください。→「わたしらしいがん治療ノート」)休職や入院した後、人事労務担当者や上司など会社との窓口になってくれる人と合意しておくとよいでしょう。随時、勤務先と連絡をとって、状況を報告することを忘れないようにしましょう。

社会保険労務士事務所
Cancer Work-Life Balance 代表

清水 公一 さんから

この時期は治療のことだけではなく、仕事のことや家庭のこと、お金のことなど考えなければいけないことがたくさんあり、一人で悩んでしまっている方もいらっしゃるかもしれません。主治医やその他の医療従事者、家族、友人などの周囲の人に相談するのもよいですが、「がん相談支援センター」に相談してみるという方法もあります。
「がん相談支援センター」はがん診療連携拠点病院などに設置されている、がん患者さんやご家族のための相談窓口です。がん専門相談員が、がんの治療や療養生活などに関するさまざまな相談を無料で受け付け、医療や社会制度などの情報を提供したり、問題の解決を支援したりしています。病院によっては看護師や医療ソーシャルワーカーなどの専門職が対応しており、主治医と連携をとって治療状況を把握したうえで相談にのることも可能です。
また、働いているがん患者さんが、会社とどのように休職や復職の話をしたらよいかを相談することもできます。医療ソーシャルワーカーが治療状況をふまえて休職願の書き方を教えてくれたり、主治医と連携をとって診断書を準備してくれたり、会社の上司や産業医との間に入り連絡をとってくれたりすることもあります。治療の過程で休職あるいは復職をすることになった際、がん相談支援センターの支援を受けるのはとても有意義だと思います。一人で悩まずぜひ相談してみてください。
「がん相談支援センター」については「治療の場所とそれに関わる人たち」もご参照ください。
がん情報サービス「がん相談支援センターを探す がん情報サービス

使用できる支援制度

組合
保険
協会
けんぽ
共済
組合
船員
保険
国保
組合
国保 後期
医療
活用タイミング

診断・告知~

すでに支払った高額な医療費が払い戻される

高額療養費制度では、自己負担限度額を超えて窓口で支払った分の医療費が高額療養費として支給(還付)される制度です。組合健保や共済組合など、医療保険によっては支給申請しなくても高額療養費が自動計算されて給与口座などに振り込まれる場合も多いですが、国民健康保険や協会けんぽなどのその他の医療保険では支給を受けるには支給申請が必要です。

同じ医療保険制度に加入する家族に病気や手術で医療費がかかっていたり、直近12ヵ月間3回以上高額療養費に該当したりしているなど、高額療養費の世帯合算多数該当に当てはまる場合には、高額療養費の支給申請をすることでさらに還付を受けることができます。

窓口での支払い額を抑えるには

高額な医療費が発生する場合、健康保険証の利用登録されたマイナンバーカード(マイナ保険証)を利用すると、特別な手続きなしで医療機関・薬局で支払う金額を自己負担限度額までに抑えることができます※1。マイナ保険証を持っていない、または利用しない場合は、「限度額適用認定証」※2(非課税世帯の場合は「限度額適用・標準負担額減額認定証」)を事前に準備し、医療機関・薬局の窓口で、健康保険証と一緒に提示して手続きをおこないます。「限度額適用認定証」はご加入の医療保険に申請すると、通常、申請後即日~1週間程度で発行されます(一部の医療保険や市区町村では限度額適用認定証の新規交付を停止し、マイナ保険証の利用をすすめています)。

※1 保険外負担分(差額ベッド代など)や、入院時の食事負担額等は対象外となります。

※2 70歳以上で住民税非課税世帯ではない人は、限度額適用認定証を取得する必要はありません。原則として、70歳以上75歳未満の人は窓口で「高齢受給者証」、75歳以上の人は「後期高齢者医療被保険者証」を提示すれば、支払いは自己負担限度額までとなります。ただし、所得区分が「現役並み所得者Ⅰ」または「現役並み所得者Ⅱ」に該当する方は医療機関・薬局の窓口で限度額適用認定証の提示が必要になります。

社労士 清水 公一さんの
“ここがポイント”

高額療養費はどの医療保険に加入している方も活用でき、負担を大きく軽減してくれる制度ですので、心配せずにまずは申請してみましょう。支給申請には医療費の領収書が必要となる場合があるので、必ず保管しておくようにしましょう。高額療養費はさかのぼって支給申請できますが、支給を受ける権利は診療を受けた日の翌月の1日から2年でなくなってしまうことに注意が必要です。

マイナ保険証は、手続きなしで高額療養費の限度額を超える支払いが免除される他に、確定申告時の医療費控除申請が簡単にできるようになる、過去に処方されたお薬や特定健診などの情報を医師・薬剤師にスムーズに共有できるなどのメリットがあります。また、従来の保険証は2025年12月2日以降原則利用できなくなるため、マイナ保険証を利用しない場合は保険者から発行される「資格確認書」を持っている必要があります。

限度額適用認定証を使う場合、医療保険ごとに有効期限があるため、定期的に更新申請が必要です。がん患者さんは手術後の抗がん剤治療など治療が長く続くことが多いため、限度額適用認定証の申請時に期間を選ぶことができる場合は、最長の期間で申請しておくのがおすすめです。

制度についての詳細は、用語について「高額療養費制度」をご参照ください。

全国のがん診療連携拠点病院にあるがん相談支援センターでもご自身の状況に応じたアドバイスを得ることができます。
がん情報サービス「がん相談支援センターを探す がん情報サービス

組合
保険
共済
組合
国保
組合
活用タイミング

診断・告知~

医療費の自己負担をより低額に抑えられる独自の制度

付加給付制度(共済組合では附加給付制度)は、一部の組合健保や共済組合などが独自に実施している制度です。独自に設定された限度額(2~5万円程度)を超えた分の医療費が払い戻し(還付)されます。付加給付制度では、高額療養費制度自己負担限度額よりも、限度額が低く設定されているため、患者さんの自己負担をより低額に抑えることができます。

※一部の国民健康保険組合(国保組合)でも、「療養見舞金」「療養付加金」など、同様の独自の給付を受けられる場合があります。

社労士 清水 公一さんの
“ここがポイント”

付加給付制度のある組合健保や共済組合では、支給申請をしなくても自動計算されて還付されることもあります。手続きが必要かどうかは、ご自身が加入されている医療保険の窓口に一度確認してみるとよいでしょう。また、被扶養者や任意継続被保険者が付加給付の支給を受けられるかどうかは保険者ごとに異なるため、保険者に確認が必要です。
私も治療中は付加給付制度のおかげで、医療費がどんなにかかっても自己負担額は低く抑えられていました。長期療養が必要ながん患者さんにとって非常に恩恵のある制度だと思います。

制度についての詳細は、用語について「付加給付制度」をご参照ください。

国民
年金
活用タイミング

診断・告知~

収入が減少したとき年金保険料の負担を減らすことができる

収入が減少して国民年金保険料を納付することが経済的に難しい場合に、所得に応じて保険料を全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除にすることができる制度です。

社労士 清水 公一さんの
“ここがポイント”

保険料の免除を受けることで将来の老齢基礎年金額は少なくなります。ただし免除期間は年金の受給資格期間に算入されますので、老齢基礎年金や障害基礎年金、遺族基礎年金は受け取ることができます。また、免除期間中に障害が発生した場合でも障害基礎年金を受け取ることができます。
前年の所得が一定金額以下の場合に免除を受けることができる制度ですが、退職や失業により納付が困難になった方の場合は、特例として前年の所得にかかわらず免除を受けることができます。がんの影響で収入が減っている方は、市区町村の国民年金担当窓口または年金事務所に相談してみるとよいでしょう。

制度についての詳細は、以下をご参照ください。
日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度

全員
活用タイミング

診断・告知~

生計が困難な方が無料または低額で診療を受けられる

経済的な理由で必要な医療を受ける機会が制限されることがないよう、低所得などの生計困難者を対象に無料または低額な料金で診療をおこなう事業です。一部の医療機関が任意で実施している社会福祉事業のため、実施している医療機関によって手続きや条件は異なります。生活保護を申請中の方や生活保護を受けていない低所得の方も利用できます。

社労士 清水 公一さんの
“ここがポイント”

生計が困難な方の選択肢として生活保護もありますが、生活保護は申請から受給まで一定の時間がかり、また保護には要件があり、状況によっては受けられない方もいます。そのような方でも利用できるのが無料低額診療事業です。まだ認知度が低い事業ですが、全国でおよそ700施設の病院や診療所が実施しています。医療費の支払いに不安を持つ方でも治療をあきらめずに、事業を実施している医療機関にぜひ相談してみてください。実施している医療機関の一覧は、自治体(都道府県など)のホームページなどに掲載されています。

無料低額診療事業については、全日本民医連のホームページでも説明されていますので、ご参照ください。
全日本民医連「無料低額診療事業 制度の説明

全員
活用タイミング

診断・告知~

確定申告で1年間の医療費を所得から控除できる

1年間に支払った医療費が一定額(10万円)を超えた場合に、超えた医療費分を所得から控除することができる制度です。確定申告をおこなって医療費控除を受けることで、納めた所得税の一部が戻ってきます。
任意で加入するがん保険などの保険金で補てんされた金額(がん診断一時金は除く)を含めることはできませんが、入院時の食事代、通院のための交通費など高額療養費制度の対象外の医療費も含め、1年間に支払ったさまざまな医療費(自己負担分)が控除の対象になります。また、医療保険(組合健保や協会けんぽ、国民健康保険などの、いわゆる健康保険)の種類にかかわらず、生計を同一とする家族全員の医療費を合算することができます。つまり、家族の中で所得税率が高い人が家族全員の医療費を合算すれば、「一定額の超過分×所得税率」の額の税金が減額になります。必ずしも扶養家族である必要はなく、共働きの夫婦や成人した子ども、遠方にいる親でも、生計が同じであれば合算して控除することができます。

社労士 清水 公一さんの
“ここがポイント”

確定申告では毎年2月中旬から3月15日頃までに前年(1月1日~12月31日)分の申告書を提出します。前年の医療費の合計が10万円を超えていたら確定申告の準備を始めるとよいでしょう。医療費控除の申告時、医療費の領収書やレシートの提出は必要ありませんが、医療費の明細書をまとめて提出する必要があります。この明細は、年末までに医療保険の保険者から送付されてくる年間の医療費通知(医療費のお知らせ等)を利用できる場合もありますので、捨てずに残しておくとよいでしょう。また、明細書に記載した医療費の領収書は自宅で5年間保管する必要があります。なお、申告を忘れた場合でも、5年以内であれば遡って手続きすることができます。
令和3年3月から順次全国の医療機関で、マイナ保険証が利用できるようになりました。マイナ保険証を利用すれば、政府が運営するオンラインサービス「マイナポータル」で、自身の医療費情報を確認できます。また、令和3年分所得税の確定申告から、所得税の医療費控除の手続きにおいてマイナポータルと国税電子申告・納税システム(e-Tax)を連携することでデータを自動入力することができるようになり、確定申告時の医療費控除申請が以前より簡単になりました。
厚生労働省ホームページ:「マイナンバーカードの保険証利用について

制度についての詳細は、用語について「医療費控除」をご参照ください。

治療/治療後

がんの治療

症状の緩和

療養

この時期に考えておくべきこと

社会保険労務士事務所
Cancer Work-Life Balance 代表

清水 公一 さんから

治療開始からフォローアップ以降の時期には、がん患者さんは休職と復職をくり返すことがあります。このとき、どのように主治医と勤務先の会社等をつなぐかが大切になります。
休職や復職に必要な診断書・意見書の作成において主治医が就業可否を判断するためには、患者さんの実際の仕事内容、勤務形態、通勤方法・時間といった具体的な勤務情報を主治医に適切に伝えておく必要があります。また、勤務先が職場復帰する患者さんに必要な就業上の措置を講じることができるよう、診断書・意見書には就業可否だけでなく、職場で配慮すべきことなどを具体的に記載してもらう必要があります。
しかし、主治医と勤務先の間の情報共有を進めるのは簡単なことではないでしょう。厚生労働省からは「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」が提案され、下記の勤務情報提供書や意見書の様式例も紹介されています。

主治医や勤務先が特定の様式をもっていないようであれば、このような様式例を利用するとよいでしょう。またガイドラインでは、主治医の意見書などをもとに会社が作成する「両立支援プラン/職場復帰支援プラン」の作成例も紹介されていますので、これらも参考に、勤務先と話し合いながら治療と仕事の両立・職場復帰の形をさぐっていきましょう。

使用できる支援制度

組合
保険
協会
けんぽ
共済
組合
船員
保険
国保
組合
活用タイミング

がんの治療~

病気やケガによる休職中の給与減少を補う

働いている方が病気やケガで仕事を休み、給与の支払いを十分に受けられない場合に、公的な医療保険から給与額のおよそ3分の2の日額の傷病手当金が支給されます。国民健康保険後期高齢者医療制度(長寿医療制度)にはない休業給付です。給与が満額または一定額支給される場合は、傷病手当金は支給されません(支給される給与が傷病手当金の額より少ない場合は、差額が支給されます)
傷病手当金が支給される期間は、支給を開始した日から通算して1年6ヵ月です。支給期間中に勤務して、一時的に傷病手当金が支給されない期間があった場合、その期間は支給日数には含まれず、残りの期間を受給することができます(図)

※制度が異なりますが、一部の国民健康保険組合(国保組合)に傷病手当金と同様の給付があります。

社労士 清水 公一さんの
“ここがポイント”

傷病手当金は事後請求であり、支給を受ける権利は2年間でなくなってしまいます(就労できず、支給を受けたい日の翌日から2年以内に申請する必要があります)。申請には給与支払いの有無について事業主の証明が必要になります。給与の代わりとなるものなので、1ヶ月~3ヶ月位ごとに申請するのがよいでしょう。

退職後も継続給付を受けることができる

退職後であっても、以下の条件を満たすことにより、支給期間が1年6ヵ月以内であれば残りの期間分の給付を受けることができます。

<継続給付の条件>

  1. 退職日までに1年以上継続して被保険者であること
  2. 退職日に傷病手当金を受給しているか、受給できる状態であること
  3. 退職後も引き続き同じ病気療養のため労務不能の状態であること(医師の診断書が必要)
  4. 退職日に仕事を休んでいること

最も注意すべき点は4です。退職日に出勤してしまうと、労務不能と認められず、23の条件を満たさなくなり、傷病手当金の継続給付が支給されません。お世話になった人への挨拶まわりなどをすることもあると思いますが、退職日を出勤日扱いにしないようにしてください。一度でも働ける状態になったり、別の仕事に就いたりして給付が途切れると、その時点で支給は終了となってしまいます。傷病手当金の継続給付を受ける際、資格喪失後の健康保険は問われないので、必ずしも任意継続被保険者となる必要はなく、家族の扶養や国民健康保険に加入しても問題ありません。

受給し終えた後、再度傷病手当金を受給できる可能性も

一度傷病手当金を受給し終えた後、再び同じ病気が悪化して働けなくなった場合でも「社会的治癒」が認められれば、もう一度傷病手当金を1日目から受給できる可能性があります。「社会的治癒」とは、最初の病気の治療後、相当期間にわたって社会復帰を果たしていた場合、医学的には治癒していなくても、社会保険上は「治癒したもの」とみなし、再発を新たな病気として扱うという考え方です。 相当期間に明確な法的定義はなく、最終的な判断は各健康保険組合や協会けんぽとなりますが、治療をせずに社会復帰していた期間が1~2年以上の場合は社会的治癒が認められ、2回目の傷病手当金を受給できる可能性があるので、ご加入の健康保険に相談してみましょう。

図 傷病手当金の支給期間

支給期間を通算して1年6ヵ月の期間まで支給(延長される期限の限度はない)

図 傷病手当金の支給期間

参考:厚生労働省第135回社会保障審議会医療保険部会
資料4 傷病手当金について

組合
保険
協会
けんぽ
共済
組合
船員
保険
活用タイミング

がんの治療~

在職中の医療保険を任意で継続できる

勤務先を退職した後も、本人の希望により、在職中に加入していた組合健保や共済組合などの医療保険を2年間継続できる制度です。任意継続によって在職中とほぼ同様の保険給付を受けることができますが、任意継続被保険者期間中に新たな傷病が発生しても傷病手当金は支給されず、また出産手当金も支給されません。また、付加給付の支給の有無は保険者ごとに異なるため、保険者に確認が必要です。
在職中には事業所と本人で半分ずつ負担していた保険料を、退職後は本人が全額負担することになります。この他退職後は、国民健康保険に加入する、またはご家族の医療保険の被扶養者になるという選択肢もあります。

社労士 清水 公一さんの
“ここがポイント”

がんによる退職は特定理由離職者に該当するため、国民健康保険の保険料が軽減される場合もあります。退職理由などを伝えた上で国民健康保険の保険料がいくらになるか市区町村の健康保険窓口で試算してもらい、健康保険任意継続の保険料と比較してみるとよいでしょう。

会社を退職するとき(任意継続)「全国健康保険協会

国民
年金
厚生
年金
活用タイミング

がんの治療~

がんを含む病気やケガで障害が残った方の生活を支える年金

病気やケガによる初診日から1年6ヵ月を経過した日(障害認定日)に障害状態にあると認定された場合などに、年金が受給できる制度です。障害年金は障害認定日の翌月分から受け取ることができます。進行する病気であるがんの患者さんでは1年6ヵ月以降に症状が悪化して障害状態になる場合も多いですが、その場合も認定されれば請求日の翌月分から受給できます(事後重症による請求)。また、人工肛門造設や尿路変更術、新膀胱造設、喉頭全摘出などの手術をおこなった患者さんの場合は、1年6ヵ月より前でも障害認定日とされる可能性があります。

社労士 清水 公一さんの
“ここがポイント”

がんによって身体に障害が生じた場合も障害年金の対象となることはあまり知られていないため、認定基準を満たしていても申請手続きをしていないがん患者さんが多く、また、障害年金に対してのがんを診療する医師の認知度も低いのが現状です。がんによる障害の程度(等級)は、組織所見とその悪性度、一般検査及び特殊検査、画像検査等の検査成績、転移の有無、病状の経過と治療効果等を参考にして、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定されます(障害者手帳とは別の認定基準です(表1))。また、病状の悪化や倦怠感などのため気力が奪われ、いざ障害状態になったときに申請手続きができない場合も多いようです。私自身は社会保険労務士のサポートを受けて受給することができました。障害年金は申請しても認定されない場合がありますが、障害がある方の生活を支える重要な制度ですので、障害状態に該当すると思われたら、早めに障害年金に詳しい社会保険労務士、がん相談支援センター、年金事務所などに相談してみるとよいと思います。請求手続きと審査を合わせると、実際に年金が支給されるまで半年ほどかかるケースが多いです。
注意点として、同じ疾患で障害厚生年金と傷病手当金を重複して受給することはできません。したがって障害厚生年金の受給が始まると調整が行われ、傷病手当金の一部あるいは全額が支給停止されます。ただし手続き上、重複して受給する期間が発生することが多く、その場合、支給された傷病手当金を併給月分まとめて保険者に返還する必要があるので注意が必要です。障害基礎年金と障害厚生年金の合計の日額より傷病手当金の日額が多い場合は、傷病手当金から差額分のみが支給されます(図1)。実際には障害基礎年金と障害厚生年金の合計日額より、傷病手当金の日額が多いことがほとんどです。障害基礎年金のみ受給の場合は傷病手当金と障害基礎年金の両方が支給されます(図2)。

表1 がんでの障害年金の認定基準

表1 がんでの障害年金の認定基準
Cancer Work-Life Balance「がんでの認定基準をわかりやすく解説

図1 障害厚生年金を支給される場合の傷病手当金支給額の調整
〇傷病手当金より障害年金のほうが少ないケース

傷病手当金 日額:8,500円
(標準報酬月額38万円)
障害基礎年金2級+障害厚生年金2級 日額:5,500円
(年金額約198万円)
表1 がんでの障害年金の認定基準

傷病手当金が8,500円支給されているときに、障害基礎年金と障害厚生年金が支給されると、傷病手当金8,500円のうち障害基礎年金+障害厚生年金の合計額5,500円が優先して支給され、傷病手当金のうち5,500円が支給停止になります。差額分3,000円は支給されます。

〇傷病手当金より障害年金のほうが多いケース

傷病手当金 日額:4,000円
(標準報酬月額18万円)
障害基礎年金2級+障害厚生年金2級 日額:5,000円
(年金額約180万円)
図1 障害厚生年金を支給される場合の傷病手当金支給額の調整 傷病手当金より障害年金のほうが多いケース

傷病手当金が4,000円で障害基礎年金+障害厚生年金が5,000円だった場合は、傷病手当金4,000円が全額支給停止になり、障害基礎年金+障害厚生年金5,000円が全額支給されます。

Cancer Work-Life Balance「傷病手当金と障害年金は同時にもらえるの?

図2 障害基礎年金のみ支給される場合

傷病手当金 日額:8,500円
(標準報酬月額38万円)
障害基礎年金2級 日額:2,100円
(年金額約78万円)
図2 障害基礎年金のみ支給される場合

傷病手当金と障害基礎年金をすべて受け取れるので、傷病手当金が8,500円で障害基礎年金が2,100円だった場合は、日額10,600円が支給される計算になります(実際の支給は月単位です)。

Cancer Work-Life Balance「傷病手当金と障害年金は同時にもらえるの?

制度についての詳細は、用語について「障害年金」をご参照ください。

全員
活用タイミング

がんの治療~

介護休業とは

介護休業とは、労働者(日々雇用を除く)が要介護状態にある家族※1を介護するために取得できる休業のことです。要介護状態とは、けがや病気、または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護が必要な状態のことをいい、要介護認定を受けていなくても介護休業の対象になります。
常時介護を必要とする状態については判断基準が定められており、(1)介護保険制度の要介護状態において要介護2以上である、または(2)12項目(座位、歩行、移乗、飲食、排泄、着替え、意思の伝達、服薬など)の項目で一定以上の状態※2が継続する場合とされています。
※1 対象家族は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。
※2 「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」は厚生労働省のホームページをご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/otoiawase_roudousya.html

利用の手続き

介護休業を利用する場合、休業開始予定日の2週間前までに書面で会社(事業主)に申し出てください。
申し出を受けた会社は、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にある対象家族を介護するための休業であるかどうか、個々の事情に合わせて判断します。なお、会社から対象家族が要介護状態にあることの証明書類の提出を求められることがあります。証明書類は医師の診断書に限定されていません。要介護状態にある事実を証明できるものを提出してください。

利用期間と回数

対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業できます。「93日」という期間は短いと思われるかもしれませんが、介護休業制度は、仕事と介護を両立できる体制を整えられるように、家族による介護がやむを得ない期間の緊急的な対応措置として設けられています。

介護休業期間の給与

介護休業を取得した期間は原則、会社から給与は出ません。その代わり、雇用保険の加入者で介護休業開始の直近2年間に12カ月以上の給与を受け取っている人は、ハローワーク(公共職業安定所)から「介護休業給付金」が支給されます。
介護休業を開始したときの賃金日額×支給日数×67%を、上限の93日分まで受け取ることができます。介護休業給付金の支給申請手続きは原則、会社を経由しておこないます。

介護休暇について

まとまった休みを取るほどではないけれども、通院の付添いやケアマネジャーなどとの短時間の打合せ等、1日または時間単位で休暇を取得したいときもあるかと思います。そのようなときに活用できるのが「介護休暇」です。常時介護を必要とする状態についての判断基準は介護休業と同じです。日々雇用や1週間の所定労働日数が2日以下の労働者を除いた、対象家族を介護する労働者が活用することができます。取得できる日数は、対象家族が1人の場合は年5日まで、対象家族が2人以上の場合は年10日までです。労働基準法の年次有給休暇とは別に取得できますが、有給か無給かは、会社の規定によります。手続きについては、書面の提出に限定されておらず、口頭での申し出も可能となっていますが、社内の規定をご確認ください。

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障害のある方が多様な公的サービスを受けられる

障害のある方がさまざまな窓口で障害者手帳を掲示することで、福祉サービスを受けることができる制度です。障害者手帳は複数種類がありますが、がん患者さんの場合は身体の機能に障害があると認められた方に交付される身体障害者手帳を取得できる可能性があります。
障害者手帳の掲示によって、所得税や住民税の控除、公共サービス(公共施設利用料、交通機関運賃、携帯電話料金など)の割引または免除、医療費等の助成といった公的サービスの他、自治体や民間企業が独自に提供する割引サービスなども受けることができます。

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“ここがポイント”

がん患者さんでは、肺がんで肺切除を受け呼吸器機能障害がある場合や人工肛門で直腸の機能障害がある場合、喉頭部切除で発声に障害がある場合などに、等級に該当する可能性があります。

厚生労働省ホームページ:「身体障害者障害程度等級表」

間違われやすいのですが、障害者手帳は、日本年金機構による障害年金(現金が給付される)とは全く異なる制度で、認定基準も異なります。都道府県などの自治体が障害者手帳を交付しており、交付申請は市区町村の障害福祉担当窓口でおこなうことができます。

制度についての詳細は、用語について「障害者手帳」をご参照ください。

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がんの自宅療養に必要な介護サービスが受けられる

介護保険制度は、介護や支援が必要な状態であると認定された40歳以上の方が、介護サービスを受けられる制度です。介護サービスは原則として65歳以上の方が対象ですが、40~64歳の介護や支援が必要ながん患者さんも対象となります。

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“ここがポイント”

がん患者さんが在宅でもQOL(生活の質)を維持して過ごすために重要なサービスです。がん患者さんは、ヘルパーさんによる訪問介護や訪問入浴などの居宅支援サービスや介護ベッドなどの福祉用具貸与サービスを受けることが多いようです。
医療保険(組合健保や協会けんぽ、国民健康保険などの、いわゆる健康保険)を利用している入院中には介護保険による介護サービスは利用できませんが、自宅療養ではサービスの利用が可能です。要介護認定の申請から介護サービス利用開始までには時間がかかるため、退院後すぐに介護サービスを利用できるよう、手続きは入院中から始めておくことが非常に大事です。入院中に申請するときは、がん相談支援センターなどで相談するとスムーズに手続きができると思います。必要があれば病院にて介護保険の認定調査を行ってくれます。
介護サービスを利用するには、まず市区町村の窓口に要介護認定を申請して、調査員による訪問調査(入院中は病室に訪問)などを受けます。要介護の認定を受けると、介護サービス計画(ケアプラン)が作成されてサービスを利用できるようになります。

制度についての詳細は、用語について「介護保険」をご参照ください。

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専門相談員から治療状況をふまえた就職支援が受けられる

がんなどの病気により長期にわたる治療を受けながら就職を希望する方を対象に、ハローワークの専門相談員(就職支援ナビゲーター)が患者さんの希望や治療状況・経過をふまえた職業相談や職業紹介、職場定着支援をおこなっています。

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“ここがポイント”

がんの診断時、治療開始前まで、治療開始後のすべての段階において、がん患者さんは就労継続が困難と感じたり、治療・療養に専念する必要があると考えて仕事を辞めたり、依頼退職・解雇などの理由で仕事を辞めざるを得なくなったりすることがあります。また、長期にわたって通院と治療を続ける患者さんでは、体調に配慮した働き方が必要となることもあります。長期療養者就職支援事業では、仕事を辞めた患者さんの再就職だけでなく、在職中の方の就労継続の支援もおこなっています。
ハローワークの専門相談員は、がん診療連携拠点病院のがん相談支援センターで出張相談も実施していますので、在職中や退職後にかかわらず仕事と治療の両立に悩むときは、がん相談支援センターを訪れてみることをおすすめします。
がん情報サービス「がん相談支援センターを探す がん情報サービス

制度についての詳細は、以下をご参照ください。
厚生労働省「長期療養者就職支援事業(がん患者等就職支援対策事業)

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生活福祉資金貸付制度とは

他からの融資を受けられない低所得世帯や障害者世帯、高齢者のいる世帯に対し、安定した生活を送れるよう、都道府県の社会福祉協議会が一時的に資金を無利子または低利で貸し付け、必要な相談や支援をおこなう制度です。

貸付対象
・低所得者世帯 :必要な資金を他から借り受けることが困難な世帯(市町村民税非課税程度)
・障害者世帯 :身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者等の属する世帯
・高齢者世帯 :日常生活上、療養または介護を必要とするおおむね65歳以上の高齢者の属する世帯
貸付資金の種類

生活福祉資金には用途に応じて、(1)総合支援資金、(2)福祉資金、(3)教育支援資金、(4)不動産担保型生活資金の4種類があります。

このうち「総合支援資金」は、失業などによって生活に困窮している人に対して貸し付ける、生活再建までに必要な生活費や住宅の入居手続きの際に必要な費用、生活を再建するために一時的に必要な費用です。

「福祉資金」は「福祉費」と「緊急小口資金」の2種類があり、「福祉費」には、けがや病気の療養に必要な経費および療養期間中の生計維持に必要な経費、介護サービス、障害者サービス等を受けるのに必要な経費およびその期間中の生計維持に必要な経費などがあります。「緊急小口資金」は、緊急かつ一時的に生計の維持が困難となった場合に貸し付ける少額の費用(10万円以内)です。

貸付限度額と償還(返済)期間

貸付限度額と償還期限、利子、連帯保証金の条件は資金の種類によって異なり、「福祉費」の場合、 貸付限度額は580万円以内、貸付日からの据置期間は6ヵ月以内、償還期間は20年以内が目安とされており、連帯保証人は原則必要です。利子は「連帯保証人あり」は無利子、「連帯保証人なし」は年1.5%になります。

・療養に必要な費用と療養期間中の生計維持に必要な費用

限度額 :療養期間が1年を超えないときは170万円、1年を超え1年6ヵ月以内であって、世帯の自立に必要なときは230万円
据置期間 :貸付けの日から6ヵ月
償還期間 :5年

・介護サービス、障害者サービス等を受けるのに必要な経費およびその期間中の生計維持に必要な経費

限度額 :介護サービスを受ける期間が1年を超えないときは170万円、1年を超え1年6ヵ月以内であって、世帯の自立に必要なときは230万円
据置期間 :貸付けの日から6ヵ月
償還期間 :5年

生活福祉資金貸付条件等の一覧は厚生労働省のホームページをご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatsu-fukushi-shikin1/kashitsukejoken.html

貸付交付までの手続き・注意点

まずは、お住まいの地域の社会福祉協議会にお電話でご相談ください。
相談後、資金の利用目的ごとに必要な書類を提出し、審査を受けます。具体的な資金の利用目的が明確でない、返済の負担のほうが大きく貸付が支援にならないと判断される、返済(償還)の見通しが立たないなどの場合、貸付を受けることができません。
また、借り入れの相談・申し込みから資金交付までに1~2ヵ月程度かかること、審査の結果、貸付が不承認になる場合があることにご留意ください。

医療用ウィッグ、胸部補整具助成

脱毛や乳房の切除など、がんの治療に伴う外見の変化に対して、心理的負担を軽減し就労や社会参加を応援するため、頭部補整具(ウィッグ、毛付き帽子)や胸部補整具(人工乳房、補整下着、補整用シリコンパッド)、弾性着衣などの購入、またはレンタル費用の一部を助成する区市町村の取り組みがあります。購入する前にお住まいの自治体の窓口に相談してみましょう。

若年がん患者在宅療養支援助成

介護保険制度の対象とならない 40 歳未満のがん患者さんが、住み慣れた生活の場で安心して自分らしい生活ができるように、在宅サービス利用料の一部を助成する「若年がん患者在宅療養支援」があります。訪問入浴介護や生活援助などだけではなく、通院のためのタクシー利用料や福祉用具・介護用品の貸与や購入費が助成に含まれるケースもあります。

若年がん患者の妊孕性温存療法支援助成

若年がん患者さんが将来の妊娠に備えながら、希望を持ってがん治療等に取り組むことができるよう、卵子等の凍結保存をおこなう生殖機能温存治療、凍結更新、妊娠のための治療を一体的に支援し、治療費の一部を助成する「若年がん患者等生殖機能温存治療費助成事業」を実施している自治体があります。

助成制度の有無や助成額、申請方法、条件などは各自治体により異なります。詳しい内容はお住まいの自治体にお問い合わせください。

監修

社会保険労務士事務所
Cancer Work-Life Balance
代表 清水 公一

NPO法人肺がん患者の会ワンステップ、千葉大学医学部附属病院 患者支援部 がん相談センター 特任研究員。2020年社会保険労務士事務所「Cancer Work-Life Balance」設立。肺がん治療と社会保険労務士の両方の経験を生かし、日々全国からの相談受付、各種セミナーや講演などを実施している。