治療の場所とそれに関わる人たち

がんと診断されたとき、あるいはがんの治療を受けなければならないとき、気になるのは、どこで、どのような人たちと関わっていくのかということでしょう。「今あなたに必要な治療はどのようなものか」「あなたが治療法に対してどのような考えを持っているか」などに応じて、その時々で治療を受ける場所や関わる医療スタッフは変わってきます。
「仕事と治療を両立したいから、通いやすい病院で治療を受けたい」「できる限りの最適な治療を受けたい」「自宅で過ごす時間を優先したい」。きっと、患者さん一人ひとりに、希望や考えがあるはずです。がん治療を進めながら大切にしたいことを見つめ直していくことは、自分らしいがん治療の第一歩です。あなたの人生に合った治療・療養の場を選ぶために、がん治療に関わる施設とそれぞれの医療スタッフの役割を知っておきましょう。

治療の場所

クリニック(かかりつけ医)

クリニック(かかりつけ医)

がん以外の病気(持病)は、主治医の判断のもと、抗がん療法開始前に通っていたクリニックでかかりつけ医が引き続き治療をおこないます。がん診療拠点病院と連携パスを用いて一部の抗がん療法をおこなう場合があります。

  • 連携パス…ある患者さんの治療にあたる複数の医療機関で共有される、各医療機関の役割や治療目標が示された計画表。

調剤薬局(かかりつけ薬局)

調剤薬局(かかりつけ薬局)

専任の薬剤師が、患者さんごとに抗がん薬を含むすべての医療機関で処方されたお薬を継続的に把握し、重複したお薬や飲み残しがないかを確認します。

がんの治療をおこなう病院

[ 国が指定するがん診療連携拠点病院等 ]

人員や設備などが決められた条件を満たし、厚生労働大臣が指定した病院です。
①専門的ながん医療の提供、②周辺地域の病院が連携・協力して診療できる体制の構築、③がん患者さんに対する相談支援や情報提供の役割を担っています。

都道府県がん診療連携拠点病院と
地域がん診療連携拠点病院
都道府県がん診療連携拠点病院と地域がん診療連携拠点病院

がん診療連携拠点病院には、各都道府県で中心的役割を果たす「都道府県がん診療連携拠点病院」と、都道府県内の各地域(2次医療圏)で中心的役割を果たす「地域がん診療連携拠点病院」があります。具体的な病院のリストはがん情報サービスganjohoで調べることができます。

  • 2次医療圏…複数の市町村をまとめる地域医療単位。入院治療などを提供する。
地域がん診療病院
地域がん診療病院

がん診療連携拠点病院がない地域(2次医療圏)で指定された病院です。拠点病院と連携し、専門的ながん医療の提供、相談支援や情報を提供する役割を担っています。

[ 地域でがん診療をおこなう病院 ]

都道府県が指定したがん診療拠点病院
都道府県が指定したがん診療拠点病院

都道府県によっては、独自にがんの拠点病院を定めている場合もあります。各都道府県によって呼び方が異なりますが、「がん連携指定病院」「がん連携協力病院」などと呼ばれています。

地域の病院
地域の病院

がん診療拠点病院が遠くにあるなど自宅から通いにくい場合、がん診療拠点病院でなくても地域の病院で抗がん療法をおこなうことがあります。

[ がん診療連携拠点病院で関わる人たち]

医師

がんの種類や進行度を診断したり、治療方針を決定します。がん治療をおこなう上で主となる主治医を中心に、複数の医師が連携して患者さんの体調を見守ります。

外来担当医
外来担当医

最初の受診から、治療方針決定の前後まで、外来であなたを主に診る医師です。正確な診断をおこなうために、あなたのからだの状態や、過去の病気、家族や血縁者がかかったことがある病気、あなたの生活習慣に関わることを詳しく聞きます。その後、より詳しい情報を得るための検査をして、これらの情報をもとにがんの診断をおこないます。
一般的に、治療方針が決定する前後で担当が主治医に引き継がれますが、最初の外来担当医がそのまま主治医となる場合もあります。

主治医
主治医

患者さんの治療にあたる複数人の医師のなかで中心になる医師。病院では医療チームの責任者として個々の患者さんに対する治療方針を立て、看護師や理学療法士など多職種を含む医療チームのメンバーとともに治療にあたります。原発巣(最初にがんが発生した病変)のがん治療を担当する医師が主治医になることが多いです。
リハビリや栄養指導、緩和ケアなどが必要と判断した場合は、主治医から他の専門医療スタッフへ、治療に介入するよう指示をおこないます。治療や体調について疑問や不安が生じたら、いつでも主治医に相談しましょう。

他科の医師
他科の医師

抗がん療法中に副作用がおこった場合などに、主治医の判断で他の診療科の医師の診察や治療を受けることがあります。

看護師

医師の診療の補助と患者さんの身のまわりのケアをおこないます。患者さんの心配ごとや不安の相談を受け、医師をはじめとした医療チームのメンバーに患者さんの状態を伝える架け橋的存在です。
「こんなこと、医師に相談していいのかな?でも気になるな」と悩んだときは、気軽に看護師に相談しましょう。病院によっては「看護師外来」が開設され、いつでも看護師に相談ができる体制が取られているところもあります。

病棟担当看護師
病棟担当看護師

入院治療中の食事や入浴、排せつの補助をはじめとした患者さんの身のまわりのお世話や、患者さんの体調の観察、記録をおこないます。患者さんにとって最も身近な存在として、体調の変化や精神的な不安などを把握し、医師をはじめ、他の治療チームのメンバーにあなたの状態を伝えます。

外来担当看護師
外来担当看護師

外来で医師の診療の補助をおこなう看護師です。食事や入浴、排せつといった日常生活の困りごとや、副作用による脱毛のケアやスキンケアの方法について相談できます。解決策を示してくれたり、医師をはじめ、他の医療チームのメンバーにあなたの状態を伝えます。

薬剤師
薬剤師

お薬の専門知識を持ち、患者さんが安全に薬物療法を続けられるようサポートします。患者さんにお薬の副作用や投与中の注意点について説明し、相談対応もおこないます(薬剤管理指導)。

栄養士
栄養士

患者さん一人ひとりの病状に応じた栄養管理と指導をおこないます。食事に関する相談にものってくれます。

リハビリスタッフ
リハビリスタッフ

理学療法士や作業療法士、言語聴覚士によって、がんのリハビリテーションがおこなわれます。がんのリハビリテーションは、治療に伴う合併症や後遺症を予防する目的で、がん治療開始時からはじめられることが特徴です。

がんのリハビリテーションについて詳しく知りたい方はこちら

緩和ケアチーム

病気や治療に伴って生じる症状や心の不安を和らげ、生活の質を高めるための対応をおこないます。ケアの内容は、がん治療で生じる副作用への対応、栄養管理、リハビリテーション、ターミナルケア、そして治療の全期間を通しての心のケアなど多岐にわたります。日本では、がん診療連携拠点病院において緩和ケアチームを設け、適切に緩和ケアを提供することが定められています。
緩和ケアチームはからだのつらさをケアする医師、心のつらさをケアする医師、看護師、薬剤師、公認心理師、栄養士、理学療法士など多職種で構成されています。

緩和ケアについて詳しく知りたい方はこちら

緩和ケアチーム

療養が中心となる場所

介護療養型医療施設

介護療養型医療施設

要介護の患者さんで、がんの病状は落ち着いたものの、専門的な治療が長期的に必要な方を対象にした長期療養施設です。

地域包括ケア病棟

地域包括ケア病棟

病院でおこなうがんの治療は終了しても、日常生活への復帰に不安がある患者さんのケアや、在宅復帰に向けたリハビリテーション、在宅医療を受ける準備が必要な患者さんのサポートをおこなう在宅復帰支援を目的とした病棟です。

緩和ケア病棟

緩和ケア病棟

緩和ケアに関する研修を受けた医師のもと、体や心のつらさをやわらげる治療やケアを集中的に受けることができる病棟です。一般病棟と異なり、できる限り日常生活に近い暮らしができるように作られた病棟で、家族のための休憩室や共用のキッチンなどが設けられています。また、茶話会や季節のイベントなどが催されることが多く、家族などの親しい人とともにイベントを楽しむことができます。入院での緩和ケアにより体や心のつらさが和らいだら、退院し自宅に帰ることもできます。

ホスピス

ホスピス

がんによる苦痛緩和のための治療とケアをおこなう施設です。「緩和ケア病棟」も同じような意味で用いられますが、「ホスピス」のほうがよりターミナルケアを意識したことばとして使われることがあります。緩和ケア医、看護師など多職種のスタッフがチームを組んで患者さんをサポートします。

自宅(在宅医療)

自宅(在宅医療)

療養の場の選択肢のひとつで、さまざまな在宅医療・介護サービスを利用しながら自宅で療養生活を送ります。患者さんが慣れ親しんだ環境ですごせることがメリットですが、家族の協力が不可欠で、緊急時の体制を整えることも必要になります。

[ 自宅(在宅医療)で関わる人たち]

ケアマネジャー
ケアマネジャー

地域包括支援センターなどにいる介護保険の専門家です。患者さんごとに、給付費内で利用可能なプランを組み立てます(ケアプラン立案)。

在宅医
在宅医

患者さんの自宅を定期的に訪問して診療をおこなう医師です。訪問頻度は病状に応じて異なります。

訪問看護師
訪問看護師

自宅において、在宅医の指示を受け、療養上のサポートまたは診療の補助をおこなう看護師です。訪問看護ステーションから派遣されることもあります。

訪問薬剤師
訪問薬剤師

在宅医の指示に基づいて、自宅にお薬を届ける薬剤師です。自宅でのお薬の管理をサポートします。

リハビリスタッフ
リハビリスタッフ

必要に応じて、自宅において、リハビリの専門職がリハビリテーションをおこないます。

[ 自宅(在宅医療)で受けられるサービス]

訪問介護
訪問介護

ホームヘルパーが、食事・入浴・排せつの介助などの身体介護、掃除・洗濯・調理・買い物などの生活援助をおこないます。

訪問入浴介護
訪問入浴介護

患者さんの自宅に簡易浴槽を持ち込み、入浴の介助をおこないます。

福祉用具貸与
福祉用具貸与

介護用ベッド、杖、置き型の手すり、車いす、歩行器などの福祉用具をレンタルできます。

住宅改修
住宅改修

手すりの取り付け、段差の改修などの必要な費用の一部援助が受けられます。

心や生活のサポートを受けられる場所

がん相談支援センター

がん相談支援センター

国が指定するがん診療連携拠点病院に設置されている、がんに関する相談窓口です。別の病院にかかっているがん患者さんでも、ご家族のみでも無料で相談することができます(病院により名称が異なる場合があります)。また、病院や主治医がまだ決まっていない患者さんの相談も受け付けています。がんに関して知りたいこと、尋ねたいことがあれば、遠慮することなく、相談してみましょう。がん相談支援センターの窓口のある病院は、がん情報サービス「がん相談支援センターを探す」ganjohoで調べることができます。

ピアサポート

同じ病気を経験した患者さんが集まってお互いに経験を共有するなど、相互支援を目的としています。「自分と同じような立場の人に相談したい」、「ほかの人はこんなときどうしているんだろう」といった思いがあるときに、患者サロンや患者会に参加してみるとよいでしょう。治療のこと、生活のこと、気持ちのことを一緒に悩みながら、さまざまな形で継続的に互いに支え合い(ピアサポート)ます。また、医療者と患者さんの間のギャップを埋める役割も期待されています。患者会や患者サロンに関する基本的な情報(目的、設立年、代表者名、連絡先、対象となるがんの種類、主な活動内容、活動地域、会員数、年会費など)は、書籍や雑誌、インターネットで調べられます。また、お住まいの近くのがん診療連携拠点病院のがん相談支援センターに問い合わせると、地域の患者会の情報が得られることがあります。患者会がない地域に住んでいる人は、がん診療連携拠点病院のなかに患者や家族が集える場があるか、がん相談支援センターに問い合わせてみるとよいでしょう。

ピアサポート