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こころの道しるべ

がんになったら……。
あなたはどのようにがんと向き合っていけばよいのでしょうか。
こころが動揺してしまうのはごく自然なことです。あなたががんと向き合い、上手につき合っていくための「道しるべ」になればと願い、この冊子を作成しました。

監修:
聖路加国際病院 精神腫瘍科部長 保坂 隆 氏

体験者の悩みや負担

2013 年にがんと向き合った方々を対象とした調査が行われ、悩みや負担の内容について尋ねたところ、再発・転移の不安、将来に対する漠然とした不安といった「不安などのこころの問題」の回答が、全体の約3分の1と最も多くの割合を占めていました。

……つまり、体験した多くの方が、こころの悩みを抱えていることが実態として明らかになったのです。

がん体験者の悩みや負担の割合(上位6件を抜粋)

体験者の悩みや負担

こころの動き

ここでは、がんによるこころの動きをお話しましょう。多くの患者さんが、多かれ少なかれ、以下のようなこころの過程を経てがんと向き合っているといわれており、不安を感じるのは特別なことではないようです。

初めてがんと知ったときには、「まさか」あるいは「やっぱり」というような複雑な気持ちになることが多いようです。急なことなので、衝撃的な段階ともいわれます。いろいろ予想して、こころの準備がある場合でも、または知識や情報がたくさんあったとしても、こころが動揺してしまうことでしょう。あとからこの時期のことを振り返って「頭の中が真っ白になった」と話される患者さんもいらっしゃいます。この状態は2〜3日続くこともありますが、1晩くらいで済んでしまう場合もあります。

衝撃的な段階を通り過ぎると、「検査が続いていてまだ結果が出ていない時期に戻れたらいいな」「1年前に戻りたいな」といった漠然とした思いが生まれたり、自覚症状がない場合は「夢なのかもしれない」と思うときもあります。これらは「否認」というこころの動きで、そう思うことで自分自身を守っているのです。
また、この時期には喪失感を味わうこともあるでしょう。「今までのペースでは仕事ができなくなる」「好きなように旅行に行けなくなってしまう」などと思って、家庭や職場における自分の役割やイメージが少しずつ変わっていく寂しさを感じてしまうこともあります。さらに「1年前に受診していれば、もっと早くみつかったのに」「あんなに無理して働いたからこんなことになったんだ」などと後悔の気持ちがわいてくる場合もあります。

このように、しみじみとしたり、怒りっぽくなったり、悔やんだり、さまざまな感情が1日のうちに何回もあらわれて、気持ちが不安定な状態が1〜2週間続く患者さんが多いようです。

しかし、このような不安定な状態は通常長くは続きません。担当医から今後の治療計画の相談があったり、入院の時期が近づいてくるなど、非常に現実的な課題が待っているため、「やはり、そうだったのか」という思いに少しずつ切り替わり、だんだん落ち着いてきます。

多くの方は治療開始までにこのようなこころの動きを経験されますが、なかには、治療が終わってしばらくして初めて、同様のこころの動きを経験される患者さんもいらっしゃいます。治療を受けている間は病気と闘うことに意識が集中していて、治療が終わってからさまざまな思いが押し寄せてくることもあるようです。

こころの状態はとても変わりやすいので、治療中も治療が終わってからも、急に気分が落ちこんでしまう時期があるでしょう。時期に応じて不安に思う内容は変化するようです。しかし、不安定な状態は通常一時的なもので、日常生活の現実的な問題に取り組んでいる間に落ち着いてくる場合がほとんどです。

このようなこころの悩みを抱えながら、がんと向き合おうとしている方々を応援するために、いくつかの言葉をお届けしたいと思います。

がんと上手に向き合うために

なぜ病気になったのか考えてしまうとき

自分や周囲を責めるのはやめましょう。

がんになったのは誰のせいでもありません。
がんになった原因を最後までつきとめることは、現在の科学では困難です。

自分や誰かのせいにすることなくお互いに支えあって、あなたも家族も友達もみんなで一緒にがんと向き合いましょう。
理由や原因を考えるよりも、がんを受け入れてこれからの生き方を考えることによって、今後の生活をより自分らしくしていくことができます。

死を思い浮かべてしまうなら

「がんイコール死」と思いこまないようにしましょう。

医療の進歩はめざましく、新しい治療法の開発や導入が進んだことにより治療成績も伸びて、治るがんも増えてきました。そのため「がんイコール死」という考えは、必ずしも正しいものではなくなってきたといえます。

確かに、がんは日本人の死亡原因の第1位ですから、がんと聞けば「死」を連想してしまう人が多いと思います。がんの生涯罹患(りかん)率(人が一生の間にある病気にかかる割合のこと)は約50%といわれており、いいかえれば、2人に1人が人生のどこかの時期にがんにかかるといわれています。しかし、新しい治療法や医療の進歩によって死を免れて、日常生活を過ごされている方々が増えてきています。

がんは長い間つき合っていく病気になってきたといえるでしょう。

病気のことがよくわからなくて不安なら

あなたのがんについての知識を集めて整理してみましょう。

自分のがんのことを正しく理解していますか?
難しいことはわからないとあきらめていませんか?
担当医から得た情報を理解していますか?
あなたがもっている情報をまとめることが大切です。

ここでいくつか整理してみましょう。
どこの場所にどのくらいの大きさのがんがあるのか?
それに対する治療法はどのようなものがあると担当医は話していましたか?
またそれぞれの治療や治療の組合せによってどの程度の効果が期待できるのか?

まずは、担当医から得た情報を十分に理解することから考えましょう。
病気についての情報は、本やインターネットから得ることもできます。
しかし、その情報は、がんのひとつの情報に過ぎず、必ずしもあなたの状況にあてはまるとは言えません。
担当医から得た情報と、あなたがもっている情報を自分なりにまとめ、疑問に感じたこと、もっと知りたいことは何か、整理しましょう。

治療や副作用のことが気になるなら

担当医とは納得できるまで話し合い、信頼関係を築きましょう。

あなたのがんの状態や治療方法とその効果および副作用について、担当医の説明をよく聞いてそれを理解するようにしましょう。
担当医はあなたの病気の状態を一番よく知っている頼もしいパートナーです。お互いが合意し納得することで、積極的に治療に取り組むことができます。

大切なことは、すべてを担当医にまかせる(これを「おまかせ医療」といいます)のではなく、担当医からの十分な説明を聞いて、あなた自身がそれを理解し納得したうえで、治療方針の決定に加わっていかなくてはならないということです。これをインフォームドコンセントといいます。

わからないことがあれば、あなた自身のことですから遠慮はせず、わかるまで何度でも繰り返し質問してください。また、担当医以外の看護師や薬剤師、他の医療者にも質問をすれば、いろいろなアドバイスを受けることができるでしょう。

また、担当医からすすめられた治療について、さらに確信のあるものにしたい場合などに、担当医以外の専門医の意見を聞くこともできます(セカンドオピニオンといいます)。セカンドオピニオンを受けた場合は、自分なりに考えを整理し、それを担当医と納得のいくまで話し合って最終的な治療方針を決定しましょう。

気持ちが落ちこんでしまったら

こころの中にあることを、周囲の親しい人にありのまま話してみましょう。

気持ちが落ちこんでしまったときには、ひとりで悩んだり、イライラしていないで、家族でも友達でも、あなたがこころを許せる人に、今のあなたのこころの中にあることを十分に話してください。

あなたは話しているうちに、次第に感情が高まったり、時には涙を流しながら話すことになるかもしれませんから、場所や時間などをあらかじめ決めてから話し始めるほうがよいでしょう。

病気をきっかけに、頭に浮かぶいろいろなことに悩まされたりすると思います。考えることが多すぎて、何がなんだかわからなくなって、自分でもどうしたらいいのかわからなくなっていることがあるでしょう。そういうときには、自分の気持ちや考えていることを誰かに話すことによって、こころの整理がつくようになることがあります。また、解決しないことであっても、話すだけで気持ちが楽になることも多いようです。

落ちこみが長く続くとき

落ちこみが長く続く場合は、早めに専門的なこころのケアを受けましょう。

気分がふさぎこんで、食事や睡眠などの日常生活に支障がある状態が長く続く場合には、思いきって専門的なこころのケアを受けることが大切です。

不安定な状態が長引いて、あるいは短期間に何度も不安定な状態を繰り返すことによって、日常生活に支障がでてくる場合があります。日常生活の支障というのは、たとえば、悲しい気持ちが強すぎたり、気分の落ちこみが強すぎて食事が進まなかったり、おいしいと思えなかったり、よく眠れなかったり、眠りが浅くなったりして、どうしても普通の調子とは思えないといった状態のことです。それが長く続く場合や繰り返しあらわれたりする場合は、うつ病や適応障害*である可能性があり、専門的なこころのケアが必要になります。

このような状態になったら、思いきって専門的なこころのケアを受けることが大切です。がんだから、不眠や体調不良、食欲不振があるのはあたりまえ、落ちこむのはあたりまえと放っておくのはよくありません。うつ病や適応障害は治る病気ですから、担当医に相談して専門の先生の診察を受けるようにしましょう。

*適応障害とは、ある状況(この場合は、がんになったこと)にうまく適応できないで、日常生活に支障がある状態です。このような症状はがんのような病気に限らず、引越しや就職などの環境が大きく変化した場合にも現れることがあります。うつ病の程度の軽いものと思っていただいたらわかりやすいでしょう。

ひとりぼっちだと感じたら

あなたを支えてくれる人たちとのつながりを強くしましょう。

担当医や看護師だけでなく、あなたの周りにいる家族・友達・患者仲間・同僚たちとのつながりを大切にしましょう。
心理的な支え(話をすること、励まし合うことなど)や現実的な援助(病院への送迎、情報の収集など)によるつながりの強さが、あなたに力を与えてくれます。

あなたはひとりではありません。周りを見回してみてください。そこには、家族や友達といった親しい人たちが、あなたをじっと見守っていてくれます。悩み苦しんでいることに共感して、一緒に向き合ってくれる仲間です。

あまり気づかれていないことですが、家族や友達にとっても大切なあなたががんであると知ることは、大変ショックな出来事です。大切な人を失ってしまいそうだという思いや、「自分がそばにいながら病気にさせてしまった」という自責感が強い場合は、家族にも気持ちの混乱や気分の落ちこみが長引くことがあります。

がんになったのは誰のせいでもないのですから、お互い支え合ってみんなでがんという病気と向き合いましょう。

そのほかにも、とても頼りになる味方がいることを思い出してください。それは同じ病気に向き合っている患者仲間です。もちろん、家族や友達はとても助けになるものですが、同じ境遇の人でないとなかなか理解できないこともあります。

患者会*などのコミュニケーションや情報交換の場に参加してみるのもよいでしょう。患者仲間とお互いの体験談を話したり聞いたりすることで、悩みや思い、病気の治療や副作用対策に関する日常生活の工夫などを共有してより深く話し合うことができます。

こういった患者仲間同士のコミュニケーションは、精神的に大きな支えとなり、QOL(Quality Of Life;生活の質)の向上に有用であることが多くの研究で実証されています。

さらに社会的サポートも十分に活用してください。現実的な問題として、医療費や介助、保険や仕事と、心配の種はつきません。ソーシャルワーカーがいる病院では、治療費の補助、医療経済的なことや保険の相談、在宅で治療を続ける場合の医師やヘルパーの確保、復職のアドバイスやカウンセリングなどの窓口になってくれます。また、保健所や保健福祉事務所、市町村の保健センターなどに問い合わせれば、地域の支援プログラムやヘルパー派遣など福祉サービスの相談にものってくれるでしょう。地域のがん医療の整備のために指定を受けた、がん診療連携拠点病院では、患者さんや家族あるいは地域の住民の方々が、がんに関する相談を受ける相談窓口(相談支援センター**)が設置されています。

* 
患者会は、通院している病院でも知ることができる場合がありますし、インターネットで探すこともできます。
** 
相談支援センターは、国立がん研究センター がん対策情報センター
がん情報サービス(http://ganjoho.jp/)より確認できます。

リラックスするために

リラックスする方法を身につけましょう。

不安感や恐怖感が続くと、心身の緊張状態がいっそう高まることが多いようです。この緊張状態は心理的なものばかりでなく、身体のいろいろな症状にもあらわれてきます。
そのような時には、身体をリラックスさせる方法を身につけて、心身の緊張状態をやわらげましょう。リラックスすることは、身体にもこころにも大事なことです。

ここでは、誰にでもできる、心身の緊張状態をやわらげてリラックスする方法(腹式呼吸・簡易自律訓練・イメージ療法)をご紹介します。
まずは横になるか、ソファにゆったり座るなどリラックスできる状況を作ってください。

  • リラックスするために 1
  • リラックスするために 2

自分の言いたいことを我慢しているとき

イヤなことは「イヤ」と断る勇気をもちましょう。

我慢しなくてもいいのです。
自分の言いたいことを言わないで我慢することは、ストレスの原因になります。

周りの人に遠慮しすぎて、すべてを受け入れようとがんばるのはやめましょう。イヤだと思うことを断ることはわがままとは違います。病気になったことで周りに迷惑をかけていると感じている場合はとくに気をつけてください。自分でも気づかないうちに、我慢を重ねていることがあるでしょう。あなたのためを思ってしてくれていると感じると、断りにくいことも多いと思います。しかし、あなたのためを思ってしてくれている人は、あなたが本当にしてほしいことをしてあげたいと思っているはずです。

イヤなことは「イヤ」と断る勇気をもちましょう。意思表示をすることによって、周りの人とのコミュニケーションをよりよいものにすることもあるのです。

これからのことを考えるとき

自分らしさを大切にがんと向き合いましょう。

がんは、以前に比べて長くつき合っていく病気になってきました。
あなた自身のがんとの向き合い方をみつけてください。

これまでに経験した危機への対処方法やストレスの発散方法の中であなたが上手にできた方法を思い出してみてください。
それがよいヒントになるはずです。

生き方や困難な状況への対処方法は人それぞれであり、あなたにとっての向き合い方をみつけることが重要なのです。好きなもの、大切な人、居心地のよい場所のことを思い浮かべてみてください。
自分らしさがみえてくるでしょう。

あなたにとってのがんとの向き合い方をみつけて、自分らしさを大切にしてください。

10の道しるべ

〜がんと上手に向き合うために〜

  1. 自分や周囲を責めるのはやめましょう。
  2. 「がんイコール死」と思いこまないようにしましょう。
  3. あなたのがんについての知識を集めて整理してみましょう。
  4. 担当医とは納得できるまで話し合い、信頼関係を築きましょう。
  5. こころの中にあることを、周囲の親しい人にありのまま話してみましょう。
  6. 落ちこみが長く続く場合は、早めに専門的なこころのケアを受けましょう。
  7. あなたを支えてくれる人たちとのつながりを強くしましょう。
  8. リラックスする方法を身につけましょう。
  9. イヤなことは「イヤ」と断る勇気をもちましょう。
  10. 自分らしさを大切にがんと向き合いましょう。

皆さまの体験が誰かの生きる力になります

「自分らしくがんと向き合う皆さんの姿、想い」
「患者さんからご家族への想い」「ご家族から患者さんへの想い」

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