がん治療中に食べられないとき、家族はどう支える?症状別の食事ポイントとレシピ

がん治療中の患者さんは、心理的な要因や薬の副作用などによって食事量が減ってしまうことがあります。やせていく姿を見て「少しでも食べてほしい」と願うご家族と、体調から思うように食べられない患者さん。その間で、すれ違いが生じてしまうことも少なくありません。
ここでは、がん患者さんを支えるご家族が、食事を通してどのように寄り添えるかのヒントをご紹介します。

支える家族とがん患者さんの食事のすれ違いを防ぐ

支える家族とがん患者さんの食事のすれ違いを防ぐ

がん患者さんを支えるご家族は、「元気になってほしい」「少しでも力をつけてほしい」という思いから、体によいとされる食事を工夫したり、助言をしたりすることがあります。
一方、患者さんは感謝の気持ちはありながらも、体調の波や副作用で食べられず、食事の時間がストレスになることもあります。そのような状態が続くと「一口でも食べたら?」というなにげない一言から衝突してしまったりと、お互いを思うからこそのすれ違いが起きてしまう場合もあるようです。

また、がん治療中に起こりやすい味覚障害の症状は、見た目からは分かりづらく、体調などによっても日々変化します。ご家族が患者さんのために健康を考えて作ったのに、患者さんの味覚が低下している場合などは、しょうゆやソースをドバドバとかけられて、やるせない気持ちになってしまったという声も聞きます。

がん患者さんのご家族の方も、患者さんの容態の心配や食事など身の回りのサポートなどが重なり、精神的にも身体的にも負担は大きく、多くの方に体重減少が見られるという報告もあります1)。ひとりで抱え込まず、他の家族や友人に相談したり、病院など医療機関のがん相談支援センターに頼るなど、患者さんだけでなく、ご家族ご自身の心身のケアも大切です。

食べられない気持ちに寄り添い、やさしい食事作りを

がんと向き合うときに、治療前、治療中を通して体重を維持することは、治療の継続、予後をよくするうえで大切です。しかし、がん治療中は、心理的要因や味覚障害をはじめとした抗がん剤の副作用による食欲低下などによって、およそ30~80%の患者さんで体重減少が見られます2)。副作用の症状は、同じがんの部位や治療でも患者さんによって異なり、体調や治療を継続している中でも変化がみられるのが難しいところです。
体重を維持することは治療の継続や予後の改善につながる3)一方で、「食べられない」ことに焦点をあてるのではなく、患者さんの状態に寄り添う姿勢が大切です。
ご家族は過干渉になりすぎず、気を張りすぎずに、患者さんの“今の体調”を尊重しましょう。

副作用にあわせた食べやすい料理と食事の工夫

がん治療にともなう症状別の食事のポイントについてご紹介します。

  • 悪心・嘔吐

    さっぱりとした味わいのもの。冷やすとにおいを抑えられます。少しずつ無理なく食べられる、消化のよい、おむすびなどミニサイズの料理が向いています。

  • 食欲不振

    香味野菜やスパイスの香りを生かした、さっぱりした料理が食べやすいです。さっぱりとしながら、エネルギーやたんぱく質がとれるヨーグルトなどを間食に取り入れるのもおすすめです。

  • 口内炎

    酸味などの刺激が少なく、なめらかでのどごしのよい茶碗蒸しなどがおすすめです。熱すぎず冷たすぎない、やさしい温かさの食事が食べやすいです。

  • 味覚障害

    だしのうま味やスパイスの香りで味がわかりやすく、複雑な味付けをしなくてもおいしく感じられる料理にします。味を感じにくいときはケチャップやソースなどのはっきりとした味がおすすめです。

  • 嚥下機能の低下

    粉っぽいものや口の中でばらけるような形状のものは避けて、豆腐やプリンなどなめらかでやさしい味付けのものがおすすめです。マヨネーズやあんかけなどとろみのあるソースをかけると、飲み込みをサポートしてくれます。

  • 消化器症状(下痢など)

    胃腸への負担を少なくするために、鶏むね肉などの低脂質のたんぱく質や、大根やほうれん草の葉先など繊維の少ない野菜を中心とした食事にします。下痢で失われやすい水分やミネラルを補えるように意識するとよいです。

体の状態や症状によっても、食べられるものは、がん患者さんそれぞれ個人差が大きく、日によって異なることもあるため、少しずつ試してみることが大切です。

忙しい日も家族で楽しめる、簡単な食事準備のコツ

忙しい日も家族で楽しめる、簡単な食事準備のコツ

がん患者さんの通院や身の回りのサポートに加えて、ご自身の仕事やご家族のための家事など忙しい日々の中で、味覚障害などがあるがん患者さんの食事を別に用意するのは大きな負担になることもあります。また、食事はただ栄養をとるだけでなく、日々の楽しみやコミュニケーションの時間でもあります。味付けの仕方など少しの工夫でご家族で同じ料理を楽しめます。

〈がん患者さんとご家族が一緒に楽しめる食事のポイント〉

  • 料理自体は食材の味を生かして薄味にする。

    薄味にすることで、がん患者さんが味覚過敏のときや、塩味や甘味など特定の味を感じやすいときでも、たれやソースで味を調整でき、ご家族もお好みの味にできます。

  • たれやソースなど味付けを複数用意する。

    その日の体調や味覚の状態によってもおいしいと感じるものや食べられるものが変化するため、味付けできるものを複数用意するとお好みの味付けにできます。

  • 食べられる量を調整できるようにする。

    ミニサイズなど一つ一つの料理は小さめにして、体調に合わせて食べる量を調整できるようにすると、完食しなくてはいけないというストレスもなくなり、患者さんご自身で量を調整できます。

がん患者さんとご家族が一緒に楽しめるレシピ

しょうががほんのり香る
鶏肉と豆腐の水餃子

しょうががほんのり香る 鶏肉と豆腐の水餃子

栄養士コメント

香りの強いにんにくやニラを使わない、やさしい味わいの水餃子。匂いや味に敏感なときにもおすすめです。餃子なら食べる量を調整しやすいのもポイント。味を感じにくいときは薬味を使ったたれや、酸味を効かせたたれなど味覚の変化に合わせてたれを選んで。患者さんもご家族もお好みの味付けで一緒に楽しめます。

栄養価(1人分)

エネルギー 203 kcal
たんぱく質 16.3 g
脂質 4.8 g
炭水化物 24.8 g
食物繊維 1.2 g
食塩相当量 0.9 g

材料(1人分)

使用量

餃子の皮 12枚 (72 g)
絹ごし豆腐 小1/2パック (75 g)
鶏むねひき肉 100 g
片栗粉 小さじ2 (6 g)
しょうが(すりおろし) 小さじ2 (8 g)
0.5 g
〈青じそぽん酢たれ〉
ぽん酢しょうゆ 大さじ1 (18 g)
青じそ(粗みじん切り) 2枚 (1 g)
〈酢こしょうたれ〉
小さじ2 (10 g)
粗びき黒こしょう 少々
〈塩レモンたれ〉
レモン汁 小さじ2 (10 g)
オリーブ油 小さじ1 (4 g)
0.5 g
レモン(いちょう切り・あれば) 適量 (10 g)

手順

  1. たれは、それぞれボウルなどで混ぜ合わせておきます。
  2. ペーパータオルで絹ごし豆腐を包み、耐熱皿にのせて電子レンジ(600W)で30秒ほど加熱します。
  3. ポリ袋に、2、鶏むねひき肉、片栗粉、しょうが、塩を入れて揉み込んだら端によせ、空気を抜いて袋の口を絞ります。
  4. 餃子の皮をまな板に並べ、3のポリ袋の端を切って等分に絞ります。皮の周りに水をつけて半分に折りたたみ、左右の端を重ねて水で止めます。
  5. 鍋に湯を沸かし、4の餃子を入れて5分ほどゆでます。器に盛り、ゆで汁をかけます。お好みのたれにつけていただきます。
  • 加熱時間は2人分の目安です。
  • 青じそぽん酢たれで召し上がった場合で、栄養価を算出しています。

豚肉と野菜のせいろ蒸し

豚肉と野菜のせいろ蒸し

栄養士コメント

じっくりと蒸して、食材のうま味や甘味を引き出すせいろ蒸し。たんぱく質と野菜がとれる栄養バランスのよい一品です。味覚の症状にあわせて、そのまま食材のおいしさを楽しんだり、お好みのたれで、味や濃さも調整できます。量も調整できて、家族一緒に楽しめます。

栄養価(1人分)

エネルギー 336 kcal
たんぱく質 19.4 g
脂質 24.9 g
炭水化物 13.5 g
食物繊維 4.9 g
食塩相当量 0.3 g

材料(2人分)

豚ロース薄切り肉 160 g
キャベツ 2枚 (80 g)
かぼちゃ(冷凍でも) 60 g
カットしめじ 1/2パック (50 g)
かぶ 1個 (50 g)
ブロッコリー 1/3株 (60 g)
〈カレーマヨソース〉
マヨネーズ 大さじ2 (24 g)
カレー粉 小さじ1 (2 g)
〈ごまポン酢たれ〉
ぽん酢しょうゆ 大さじ1 (18 g)
すりごま 小さじ2 (5 g)
〈ハーブ塩〉
乾燥バジル(またはパセリなど) 少々
小さじ1/3 (2 g)

手順

  1. キャベツはざく切りに、かぼちゃは厚さ5mmの薄切りにします。かぶはくし形切りに、ブロッコリーは小房に分けます。
  2. 豚ロースは食べやすい大きさに切ります。
  3. せいろにクッキングシートを敷き、1、2、カットしめじを彩りよく並べ、蓋をします。
  4. 水をたっぷりと入れた鍋の上にのせて中火にかけます。湯気がでてきてから10分ほど蒸します。かぼちゃに竹串が通れば蒸し上がりです。
  5. 蒸している間にたれやソースは、それぞれボウルなどで混ぜ合わせます。蒸し上がったらお好みの味付けでいただきます。
  • 電子レンジで作る場合(2人分)は、耐熱皿に具材をなるべく重ならないように並べ、ふんわりとラップをして電子レンジ(600W)で6~7分を目安に加熱します。
  • カレーマヨソースで召し上がった場合で、栄養価を算出しています。