胃がんの体験談

悩みや不安を抱えたときにどのようにがんと向きあえばよいのか。
自分らしくがんと向きあう患者さんやご家族の体験談・メッセージなどをご紹介します。

みなさまの
体験談
患者
  • がんの治療を終了し、定期的な検査通院中

胃がん 60歳 男性 

病気が完治されたといわれる本年正月、丸5年をクリアーした時、思いつくまま書き記したものです。

皆様いかがお過ごしですか?

当方、スキルス胃癌の最初の手術から5年経ちました。念願の根治です。 胃を全摘、胆のう、十二指腸などを摘出しました。食道と小腸を直接つなげてあります。吻合部の狭窄で流動食も通らず、再手術を実施、バイパスを作ったりしてなんとか現在に至りました。一番心配した腹膜への癌細胞播種、幸い転移した状況が出ないので平穏です。原発箇所は噴門部から近く、胃の入り口裏で、様々な検査にも影に隠れて見えないところでした。その様な中で、良く見つけてもらったと、本当に、自覚症状も無いのに、たまたま他の臓器を確認する為の内視鏡検査で運良く見つけてもらったと感謝です。

皆様のおかげで、手術後、何回もあった様々な危機を乗り越えることも出来ました。 本当に皆様に深く感謝です。 肉体的にも・精神的にも次から次へと、本当に色々な事がおしかけてきます。呆れ返るほど多いです。 煩悩が次々現れてくれます。執着が強いのです。未だ心身共に未熟なのです。 生きている間はきっと、これからも、づーっと続くのでしょう。いつまでも続けたいです。 生きているって本当に良いですよ。 苦しいこと・悲しいこと・寂しいこと・・・、たっぷりあります。が、それに負けず、楽しいこと・嬉しいこと・・・、心をわくわくさせる盛り沢山な事がマイナスを穴埋め・カバーをしてくれます。

自分の足で歩け、自分の口で食事がとれ、自分の目で大自然を愛で、自分の耳でたのしく音が聴ける事・・・、これらの些細な・細かな事柄がいかに素晴らしいことか・・・。 身近にある、あたりまえにある総ての現象がいかに素晴らしいかを目覚めさせてくれたのは、この凄まじい病気のおかげです。

根治記念にと、自分の足で好きな所へ歩ける嬉しさいっぱいに、昨年の夏は日本アルプスを中心とした自然の中、十二分に楽しまさせてもらいました。 たっぷりと、のんびりと、ゆったりと3,000Mの素晴らしい空間にしっかり我が身をリラックスさせ、気持ち良く浸る事が出来ました。 可憐な高山植物・愛嬌ある動物達への顔出しも何とも言えない趣です。北アルプスでも、南アルプスでも衣笠草・駒草達や雷鳥さんをはじめ顔馴染み達が一緒に遊んでくれました。一面のお花畑の中、抑えつけるものがないと、気持ちを開放でき、時間を忘れます。

天空は、昼間は、紺碧の空気で包んでくれ、夜になると暗闇のカーテンのたくさんの節穴から光溢れて、こぼれるがごとき星達の盛大なご挨拶。「久し振りじゃないか! こっちの方にもおいでヨー!」とあちこちの峰達も声をかけてくれました。手術で体重が10kg以上減っているので足取り軽く歩けます。テント・寝袋も一緒に付き合ってくれ、日本で最高の国立公園を庭とする、そのド真ん中の一戸建てでの居ごこち、何とも言えない素晴らしい寝心地も味わえました。 山の頂でドリップさせたコーヒーは、気圧の為、沸点こそ低かったですが、その素晴らしく美味しい水・純な空気と相まって、下界では味わうことの出来無い最高の香りでした。

一緒にいただいたケーキの美味しいこと!胃袋もいてくれたらとろけるばかりに味わってくれたことでしょう。 生きている素晴らしさをつくづく堪能です。 勿論、天候に恵まれることはたまにしかありません。横殴りの雨風にあおられ、ガスに囲まれ、雷に追いかけまくられて本当にウンザリさせられる事の方が圧倒的に多いです。だからこそ、この病と同じ様に、当たり前の事が何よりも素敵に感ずる事が出来るのです。

自分自身の免疫力向上に自助努力をすることはとても大切です。 我が身から、不自然で無く、こんこんと湧き出てくるものが最高です。 なんと言っても楽しく笑える事、自分自身の中で、それぞれに活動する細胞達から気持ち良く挨拶を受けるのが一番です。 手術後、しばらくの間、手術箇所の痛みの為、腹筋運動は勿論、笑う事さえ出来ませんでしたから・・・。

がん細胞に効くと言われる物、一時は藁にもすがる思いで、巷に流布されている方法を色々と試してみました。茸・蜂・鮫関連の口に入るもの ― 原材料・加工方法・効能の確たるべき説明とその裏付けのあやふやな物が何と多いことか。プラシーボ効果でもあれば良しとしましょう。

が、自身としては日常的でない物は、サプリメントも含め、口に入る物は総て止めました。 「一物全価」・「身土不二」の環境を目標に、己の身体とのじっくりとした会話優先です。 未分化の異常細胞を発生させ・着床させた我が身体とのひたすら会話優先です。 我が身体との会話は、どの様な方法が良いか、日々、わくわくしての探索です。変に肩をはらず、変に頑張らず、ひたすら自然にある様々な事象をあるがままに見つめ直し、一生懸命吸収出来るまたと無いチャンスが巡ってきたのです。どの様にすれば我が身体とより良くコミュニケーション出来るか、いかにすれば自然の中へ深く浸透出来るかと、気持ち良く探せる楽しみの日々です。

これからは我ががん体験を通して、同病で悩む患者・家族の皆様の悩みを低減させる、わずかでも良いから・少しでも良いから気持を明るくさせるお手伝いが出来ればとの思いです。
日々の事柄を益々大切に、コツコツとリハビリを実施・継続致します。皆様と共に前進です。

更には、60歳過ぎた患者でもテントを背に日本アルプスの素敵なハイキングを楽しめる身体になれるのだと、活きた証拠としていつまでも希望いっぱいで生きたく、ズボラ患者は素敵な環境を楽しんでおります。 スキルスも治る病気なのだ、治せる病気なのだとの心意気です。
これからもどうぞ宜しく!

勇気づけられた言葉、場面